ファイナンス 2017年8月号 Vol.53 No.5
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あるが、官民が連携して取り組むことにより、関係者の問題意識が深まり、また、隠れていたニーズが掘り起こされるなど、実現に向けた議論が活性化していくことを期待している。(なお、文中意見にわたる部分は財務省等の公的見解ではなく、筆者の私見にすぎない。)プロフィール津野 大紀(つの・たいき)2009年4月みずほ証券株式会社入社。2016年8月より現職。図表3 日本における証券決済ほふり日本銀行証券の売り手証券の買い手約定証券振替資金振替DVP円貨建て債券の場合A行口座B行口座FRBA行口座B行口座ほふり市中銀行証券の売り手証券の買い手約定証券振替資金振替非DVP外貨(ドル)建て債券の場合日本米国図表4 本稿の全体像日本企業のアジア進出の拡大日本企業・金融機関の競争力向上、アジアの通貨金融ハブとしての東京市場の発展背景現在取り組み中の課題中長期的な課題円の利便性向上のメリット(例)アジア通貨の利便性向上のメリット(例)日本企業邦銀東京市場円とアジア通貨の利便性向上策の検討円利用の伸び悩み・制約アジア通貨の利用拡大の動き東京市場の活性化に向けた議論◯対外直接投資残高は急増。(2010年末:68兆円→2016年末:154兆円)◯貿易取引における円の利用割合は横ばい。(日本の輸出入において、円建て比率は輸出4割弱、輸入2割強で推移)◯円のアジア送金において、当日中に入金されないなどの制約。◯現地通貨の使用義務化などドル脱却の動き。◯現地通貨決済促進の動き(タイ・インドネシア・マレーシア)。◯東南アジアの現地通貨建て債券市場は拡大。(債券残高、2002年末:2,700億ドル→2016年末:1兆970億ドル)アジアにおいて円の利便性を向上させるとともに、中長期的視点に立って日本において、また日本企業にとってアジア通貨を使いやすくするインフラ整備を行っていく必要。①円決済のグローバル化・円為替取引の効率化a.日銀ネットの高度化b.直接交換市場(円ー人民元)c.国際ロー・バリュー送金②セーフティネットの充実a.ASEANに対するスワップ取極の拡充(ドルのみならず円も供給可)③アジア現地通貨建て取引、資金調達の促進a.現地通貨スワップb.中央銀行による日本国債のクロスボーダー担保活用(CBCA)c.ASEAN+3のクロスボーダーDVPリンク(CSD-RTGSリンク)ⅰ.アジアにおける円の更なる浸透(国内・国外のシームレスな円の決済環境の整備等)ⅱ.円・アジア通貨の直接交換市場の拡大(規制緩和の慫慂)ⅲ.東京市場の多通貨決済化の検討◯世界で最も早く開く主要市場。◯日本企業の外貨建て資金調達ニーズは増大。(海外債券発行額、2010年:2.4兆円→2016年:7.6兆円)◯家計の金融資産1,800兆円。日本の機関投資家の外貨建て投資需要も大きい。迅速な円決済による財務の効率性向上、為替取引コストの削減アジア現地通貨の円滑な調達、効率的な資金管理アジア企業の資金調達に係るビジネスチャンスアジアの通貨・金融ハブとしての発展の可能性海外での円建て融資の拡大、海外での円決済ビジネスチャンスグローバルな円利用の拡大による東京市場の活性化ファイナンス 2017.817円とアジア通貨の更なる利便性向上策の検討 ―第36回外国為替等分科会での事務局報告について―SPOT

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