ファイナンス 2017年8月号 Vol.53 No.5
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不確実性について政策立案に関係する立場から得られる教訓とはラウンドテーブル・ディスカッションでは、Sanjeev Gupta IMF財政局次長の司会のもと、各参加者に「昨日から討論している不確実性について政策立案に関係する立場からどのような教訓が得られるか」発言が求められた。Donald Marron氏は、原則として経済の不確実性があり、将来の不確実性についてシステム自体の反発弾性が必要と指摘。現在長寿を享受できる層とできない層の差が拡大し米国で大きな問題になっていると説明。高齢者向け医療保険は、資金財源枯渇が予測され、医療費支出の管理にどのコストを連邦政府が負担できるか、どのレベルのサービスまでカバーすべきか、対象とするのか切り分ける必要がある、とした。また、政策立案者が不確実性、政策をより心地よく話せるような状況を歓迎したいとした。大恐慌時代にルーズベルト大統領は、国民に素晴らしい語りかけをし、オバマ前大統領もややそうだった。しかし、現在のアメリカの政治システムはそうではないと指摘。信頼ある超党派の客観的な所から国民へ課題や機会について定期的に財政政策情報を提供することに価値があるとした。Bibek Debroy氏は、インドは豊かになる前に高齢化する国と説明。インドの視点としては、国として十分な社会保障や年金制度がある所と市場や民間に依存している所のふたつがあると指摘した。Mohamad Ikhsan氏は、教訓として準備をすることが重要だと指摘。また、インドネシアの経験として、1998年に財政危機に陥った再、IMFが来てくれたが、IMFは何をすべきか分からなかった。しかし、2008年の世界危機時はこれまでの経験で準備をしていたお蔭で上手く危機を乗り切ることができた、と説明した。根本洋一は、日本の教訓は、慎重なシステム設計だと説明。設計後の大きな社会経済的変化を踏まえ、賢明に設計することが重要。1951年に国民皆保険と年金が導入された時、日本人男性の平均寿命は51歳で出生率も2.0だった。社会的にも大きな変化があり1961年の名目GDP成長は21%、昨年は1,2%となった。よって変化を見極めた上で制度設計することが重要。そして給付決定後に撤回すると国民からの強い抵抗があり、既得権に乗るグループからの反対もあり、非常に困難なため、賢く制度設計を行う点が日本からの教訓になると指摘した。さらに、平均余命の拡張や社会的安全ネットの設置自体は素晴らしいが時に大きな費用となる、とした。ラウンドテーブル・ディスカッションの概要■司会Sanjeev GuptaIMF財政局次長■参加者Bibek DebroyMohamad IkhsanDonald Marron根本洋一インドAayog国立研究所委員インドネシア大学教授/副大統領上級顧問アーバン・インスティテュート経済政策局長財務省財務総合政策研究所長8ファイナンス 2017.8

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