ファイナンス 2017年7月号 Vol.53 No.4
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巻頭言経営戦略としてのダイバーシティと働き方改革J-Winを設立して10年。企業の経営戦略としてのダイバーシティ・マネジメントを支援するため、女性リーダー育成活動を行ってきました。10年前と比較して、多様化推進や女性活用に積極的に取り組む企業が増えてはいますが、日本社会ではまだまだダイバーシティの浸透が進んでいない、その本質価値があまり理解されていない、と感じています。現在の急速に激しく変わる世の中に、企業が対応し生き残っていくためには、過去の成功体験を捨て去り、新しいビジネスモデルを創り出さなければいけません。イノベーションを起こすには、異なる背景や価値観をもつ、多様な人材が必要不可欠です。いかに新しい発想を生み出せるか、変革のための多様性であり、その第一歩が「女性活用」なのです。誤解されがちですが、女性が男性よりもイノベーションを起こす力を持っているというわけではありません。既存の価値観にとらわれた男性中心のモノカルチャーな組織に、異分子である女性たちが新たに入ることで、変化を促す一種の触媒の役割を果たすのです。ダイバーシティや女性活用は、決して「女性のため」ではなく、企業や組織が競争力を高めていくための戦略なのです。政府は今、働き方改革を進めていますが、私自身もずいぶん前から、働き方の見直しの必要性を感じていました。グローバルなビジネス環境や、市場の急変に適応していくには、柔軟な働き方が必須です。これまで、終身雇用制の中で多くの人が阿吽の呼吸で動く日本企業では、何となくチームで「やるべきこと」が共有されており、各々の責任範囲が曖昧なまま仕事を進めていました。まず、個人の職務内容と範囲の規定を明確にし、費やした時間ではなく、各自に設定された目標値に対する成果や、組織への貢献度などを基準とした公平な評価を行うことが、柔軟な働き方を可能にし、生産性向上につながります。あわせて、業務プロセスを明確化することが重要です。徹底的に現在のワークフローを「見える化」し、どこで誰がチェックするかという承認権限がはっきりすると、改善すべき無駄や問題点があぶり出されてきます。そうして明らかになった事実が基になってはじめて、仕事の効率化をどのように図るかを考えられることになるのです。また、組織の外からは仕事の本当に大事な部分は見えないものです。現場で長く働いている人こそ、様々な問題点を認識しています。トップが、現場に、改革を実行するチャンスをどんどん与えていくと、すばらしい結果につながるのではないでしょうか。私は、自分の人生は、最終的に「世の中に対しこんな貢献ができたな」と感じられるよう、いわゆる自己実現をしたいと考えています。人それぞれ価値観は異なりますが、私は、キャリアアップして、組織という仕組みを使い大きな仕事をしたい、と思ってきました。財務省でも、上の職位にいけば、国を良くしたり、財政を良くしたり、きわめて影響力の大きなことを実現でき、得られる達成感も大きくなることでしょう。一度きりの人生で、仕事を通じて世の中に対しそのような貢献をできるというのは、とてもすばらしいことだと思います。NPO法人 J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク) 理事長内永 ゆか子ファイナンス 2017.71財務省広報誌「ファイナンス」はこちらからご覧いただけます。

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