ファイナンス 2017年7月号 Vol.53 No.4
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2IDAの仕組みの概要IDA増資交渉について説明する前に、IDAの仕組みを概観したい。世界銀行グループの中で国際復興開発銀行(IBRD:International Bank for Reconstruction and Development)が、主として国際資本市場での債券(世銀債)発行による調達資金を原資として、中所得国に準商業ベースでの貸付を行っているのに対し、IDAは、先進ドナー国からの出資金を主たる原資として、特に所得水準の低い開発途上国に非商業ベースでの貸付を行っている(なお、後述するように、今回の増資ではドナー国からの出資金に加え、債券発行による市場からの資金調達を導入することとなった)。貸付原資が主に先進ドナー国からの出資金によって賄われていることから、3年に一度、資金拠出の規模や使途等についての増資交渉が行われ、3年単位で資金計画が立てられている。例えば、第18次増資交渉の対象となる期間は、2017年7月から2020年6月までの3年間であり、第18次増資期間(IDA18)と呼ばれる。IDA18の事業規模は750億ドルであり、その財源は、ドナー国からの出資や融資による貢献、過去のIDA融資の返済金などの内部資金、そして今回新たに導入された市場からの資金調達等となっている。こうして集められたIDA資金は、77か国の低所得国の開発支援に活用される。原則として、政策・制度環境の良好度(パフォーマンス)に応じて人口1人当たりの資金が手厚く配分されるよう仕組まれるPBA(Performance-Based Allocation)方程式に基づき各国に割り当てられる。PBA制度において、資金配分を決定する主な要素は、各国の経済成長・貧困削減促進政策の履行実績等となっている。資金の大半は、超長期(満期38年、うち据置6年)・無利子(手数料0.75%のみ)の融資で拠出される。ただし、債務持続可能性の分析で赤信号(貸付不可)と判定された国に対しては全額贈与(グラント)で拠出、黄信号と判定された国に対しては50%を贈与、50%を通常融資で拠出さ資料1 世界銀行グループの概要1.世界銀行グループとは途上国の貧困削減と持続的な経済成長の実現を使命として、金融支援、技術支援等を提供している。主に右の4機関で構成。世銀(IBRD)は1945年に設立され、現在の加盟国は189ヶ国。2.組織所在地:ワシントンD.C.総 裁:ジム・ヨン・キム(米)(2012年7月-)3.日本と世銀の関係日本は1952年に世銀(IBRD)に加盟。かつては最大の借入国の一つであった。世銀からの融資は、東海道新幹線や東名高速道路、黒部第四水力発電等のインフラ整備や電力や製鉄等の基幹産業を中心に活用。現在日本は、いずれの機関においても、米国に次ぐ第2位の出資国。国際復興開発銀行(IBRD)○中所得国及び信用力のある低所得国を対象◯市場から調達した資金で長期融資を供与国際開発協会(IDA(アイダ))◯低所得国を対象◯加盟国からの出資金を主な原資として、超長期・低利子で融資及び贈与を供与◯3年に一度増資(資金補充)を実施。国際金融公社(IFC)◯途上国の民間部門を対象◯市場から調達した資金で途上国の民間部門に対して投融資等を供与多数国間投資保証機関(MIGA(ミガ))◯途上国向けの民間投融資に、戦争等に対する保険を供与◯長官は日本人の本田桂子氏ファイナンス 2017.719国際開発協会(IDA)第18次増資について SPOT

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