ファイナンス 2017年7月号 Vol.53 No.4
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2017年5月12日~13日にかけて、イタリアを議長国として、イタリア・バーリにて、G7財務大臣・中央銀行総裁会議(以下「G7」)が開催された。日本からは麻生副総理兼財務大臣と黒田日本銀行総裁が出席し、2日間にわたり、世界経済、格差と成長、テロ資金対策・サイバーセキュリティ、国際課税等に関して、多岐にわたり議論が行われた。本稿では、主な議論の概要を紹介したい。参考1)G7仙台への参加国・国際機関(ア)G7(日本、カナダ、仏、独、伊、英、米、)(イ)国際機関:ユーログループ、欧州委員会(EC)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、世界銀行(WB)1世界経済世界経済に関しては、回復は勢いを増しているが、成長は依然として、緩やかであり、リスクのバランスは下方に傾いているとの認識が共有され、その上で、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ、包摂的な成長という目標を達成するために、全ての政策手段-金融、財政及び構造-を個別にまた総合的に用いることへの決意が引き続き表明された。また、金融政策に関しては、これまでも国内目的を達成することに向けられてきており、今後も引き続き、中央銀行のマンデートと整合的に、経済活動と物価の安定を支えるべきであること、為替レートに関しては、過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることが再確認された。貿易に関しては、「我々は、我々の経済に対する貿易の貢献の強化に取り組んでいる」との認識が共有された。麻生大臣からは、脆弱性の解消、潜在成長率の引上げ、更に自由貿易の推進を通じて、世界経済の成長をより確かなものにする必要があること、日本も、 「働き方改革」など構造改革等を通じて、女性・高齢者の雇用促進に精力的に取り組んでいること等を説明した。また、中国が近年導入した資本規制のために、外国企業の本国送金等に支障が出ているとの懸念があり、IMFに対して中国の資本規制をよくモニターするよう要請した。2格差と成長近年、国際経済をめぐる議論において、包摂的な成長、格差拡大への対応の重要性に注目が集まっている。この背景には、経済のグローバル化や技術革新が、世界経済全体の成長や、先進国と途上国との間の経済格差の縮小に大いに寄与する一方で、国内における経済格差はむしろ拡大しており、このことが、グローバル化や技術革新から取り残された人々の不満の拡大や、国内政治におけるポピュリズム、あるいは保護貿易的な動きにつながっている、という見方がある。こうした中、本年のG7議長国を務めるイタリアは、「格差と成長」を本年のG7の主要テーマとして取り上げ、議論を主導してきた(注)*1。G7バーリの概要について(2017年5月12日~13日開催、於イタリア・バーリ)国際機構課長 三好 敏之国際機構課課長補佐 徳岡 喜一国際機構課企画係長 田中 豪Spot01*1)この点、歴史的にも南北の地域格差という問題を抱えたイタリアが、バーリという、裕福とは言えない南部の地方都市で今回のG7財務大臣・中央銀行総裁会議を開催したことは、ある意味で象徴的であった。集合写真12ファイナンス 2017.7SPOT

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