ファイナンス 2017年6月号 Vol.53 No.3
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界は普遍的になっていく中で、自分たちの個性は失わないで、地方は地方の良さを、その独特の芸術や独特の思索、もうここしかないっていうようなことをやってもらいたいですね。アメリカのアスペンという町には、昔銀山があり、人口は5千人位しかいないにもかかわらず、3万人くらい収容できるホテルや施設があります。オリンピックをそこに誘致しようとした時に、「俺達嫌だ」と断った町なのだけど、それぐらいに絵描きと同じような個性をもった地方の都市づくりをして頂きたいと思います。▶神田 先生が私のメンターの一人で大変お世話になってきた武藤敏郎オリ・パラ委事務総長と対談された際、先生は「人間の創造とはレガシーの積み重ね、その中に花が咲く。命をつないでいきたいという強いエネルギーが美しい花を作る」と非常に含蓄のある話をされています。最後に、人類の歴史の連続と創造の関係についてご教示ください。▷絹谷 人類は、どんな昔でも、常に進取の気性をもって、新しいチャレンジ、イノベーションを、精力的にやってきました。その結果、中近東などではいろいろなことが起こっているものの、大勢の人があまり傷つかないで、人生を全うできるような世界に進歩してきていると思います。例えば、江戸時代に人口が爆発的に増えたのに、産業が追いつかなかったため、口減らしということが起こりました。姥捨て山もそうだと思います。人類はこういったことを克服してきたのです。そのためには、今、いいところに安住していないで、大木になるかどうかはわからないけれど、とにかく種を蒔くことですね。小さければ、多少リスクを負っても、あまり被害が甚大ではないので、また色々なことにチャレンジできるわけで、そういう小回り部隊にも、十分肥料を与えていただくと、どこかで、大木として育つ木もあると思います。絵についても同じで、小さな種を蒔いていただければ、思いもかけない発想とか、その時は「何だこれは、こんなのは絵じゃないよ」と言われていても、時代が動いていけば、時代がそっちの方についていくということもあるのです。この大きな歴史の流れの中で、東洋人は稲作民族なので、同じところを回っていても米ができるということもあって、少々怠惰になる危険があります。他方、狩猟民族はどこかへ行って、魚を捕らなければ、何かしなくては生きていけないということがあります。我々、東洋人の方が、進取の気性の大切さを意識して新しいことに挑戦していかなければいけないと思います。▶神田 本日は、大変、多岐にわたり、貴重なお話を拝聴させて頂き、誠に有難うございました。(この対談は2017年3月24日に収録された。)ファイナンス 2017.635超有識者場外ヒアリング63連 載|超有識者場外ヒアリング

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