ファイナンス 2017年6月号 Vol.53 No.3
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▶神田参事官(以下、神田) 本日はご多忙のところ、ご自宅にお邪魔申し上げ、誠に恐縮に存じます。また、先日も栄えある第9回絹谷幸二賞贈呈式にお招き頂き、大変有難うございました。西村さんの初々しさは素敵でしたし、女性で外国人の受賞も初めてで、素晴らしい快挙です。先生には以前より、貴重なお話を拝聴させて頂いてまいりましたが、今日は、美術から世界観まで幅広く読者に御高見を共有頂ければ幸いです。独自の世界の創造▶神田 先生の『きらきら渋谷』は地下鉄渋谷駅の13a出口なので、自分の家路の導線ではないのですが、眺めていると元気が出るため、時々、宴会のあと、寄り道してタダ(すみません)で拝観させて頂いています。ここに“SHIBUYA”だけでなく、「忠犬」も書きこまれています。忠犬の文字を見る度、何もわざわざ書かなくてもと思いつつ、悪戯っぽくて楽しくなります。さて、『チェスキー二氏の肖像』の“Yes or No”、『自家像・夢』の「色即是空」、『アンジェラと蒼い空Ⅱ』の“Avanti popolo”など、先生の聖書や経文、歌の挿入は極めて特徴的です。『アンセルモ氏の肖像』のような言葉にならない叫びによる内面の崩壊の示唆はともかく、直截に有意な言葉を書き込まれることは、概念も絵で表現すべきという伝統に反しかねない一方、寧ろ、絵巻物のように絵と文字は元来、一体であったという考えもあります。実際、マルティーニの『受胎告知』にも聖ガブリエルの「恵まれし女よ、おめでとう。主があなたとともにおられます」なる告知が刻まれているところ、先生は、この絵画と文字の関係、そして自らの実践について、どう考えておられますか。▷絹谷先生(以下、絹谷) 絵の機能としては、まず、見て楽しむことで、幸せ感を充実させるというのが一つです。これに加え、もう一方の柱と絹谷 幸二先生(写真左)東京芸術大学名誉教授、日本芸術院会員(文化功労者)KINUTANI Koji1943年奈良県生まれ。東京芸術大学美術学部卒、卒業制作で大橋賞受賞。ヴェネツィア・アカデミアに留学、アフレスコ古典技法の現代的表現を修得。安井賞、日本芸術大賞、毎日芸術賞、日本芸術院賞等を受賞、2001年に芸術院会員となる。東京芸術大学教授、大阪芸術大学教授として後進の指導に当たるとともに、「絹谷幸二賞」を設立して若手芸術家を支援。文化庁主催の「子供 夢・アート・アカデミー」にも携わる。2014年に文化功労者顕彰、2015年日本放送協会放送文化賞受賞。2016年12月「絹谷幸二 天空美術館」が開設。神田 眞人 Kanda Masato 金融庁参事官東京大学法学部卒業、オックスフォード大学経済学修士(M.Phil)。世界銀行審議役、財務省主計局主査(運輸、郵政担当を歴任)、国際局為替市場課補佐、大臣官房秘書課企画官、世界銀行理事代理、主計局給与共済課長、主計官(文部科学、経済産業、環境、司法・警察、財務担当を歴任)、国際局開発政策課長、同総務課長等を経て現職。OECDコーポレートガバナンス委員会議長等を兼務。主著に「国際金融のフロンティア」、「超有識者達の洞察と視座」、「強い文教、強い科学技術に向けて」、「世界銀行超活用法序説」等。ファイナンス 2017.623超有識者場外ヒアリング63超有識者 場外ヒアリング文化芸術編63連 載|超有識者場外ヒアリング

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