ファイナンス 2017年6月号 Vol.53 No.3
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ニパン・オラニウェー(タイ)の作品。空き店舗に地域から集められた家具や日用品が並び、炬燵で人が寛ぐ、居間のような空間。室内のものは、物々交換ができ、それにより、人々の交流の場が生まれる。会期末も近かったので、一人3品までご自由にお持ち帰りくださいとのこと。大阪で日本語学習中の漫画好きの外交官のために本棚の「One Piece」を頂く。日常性に問いを投げかけ、コミュニティが生まれるきっかけ作りに取り組む、北澤潤というアーティストの作品、「リビングルーム鯨ヶ丘」。4水戸にて芸術祭巡りの起点、水戸についても少し。エリアが離れており、駅の観光案内所を除き、芸術祭の気配は感じないが、せっかくなら、芸術祭巡りの客人をついでに取り込むようなところがもっとあってもという気もする。ア 県庁大河ドラマ「女城主直虎」の柴崎コウと、織田裕二主演の映画「県庁の星」で、主人公織田裕二の勤める県庁のロケに使われた。抜群に眺めが良い、いかにもの県庁所在地で一番立派なビル。今もテレビのロケに良く使われるという。イ 水戸城跡水戸は偕楽園が有名だが、駅の近くを散歩するなら、水戸城跡にお城の雰囲気を残す三の丸小学校、水戸第二中学校や、知事以下県庁職員の多くが出身の名門水戸第一高校、第三高校のあるエリアも趣がある。水戸第二中学校前には水戸光圀公編纂の「大日本史」の展示。きっとここに小学校から高校まで通うとまじめに勉強せざるを得ない雰囲気が漂う。5終わりにこの芸術祭、昨年9月17日から11月20日まで、65日間開催された。都会の芸術祭、ヨコハマトリエンナーレ2014で21万人、あいちトリエンナーレ2016で60万人の来場者数というが、初めてのこの芸術祭、目標は30万人で、自分が訪れたときは既に60万人超え。最終的に来場者数77万6千人、経済波及効果は約35億円、広告料換算額は約42億円とのこと。登録されたボランティアのサポーターは1500人。都会の芸術祭と比べると、普段人がそれほど来ない地域でもあるからか、地元の人が嬉しそうに案内してくれたのが印象的。今回は初めてだったせいもあり、図録が間に合わなかったらしいが、それでも公式ガイドブックは一時アマゾンの売れ筋No1になったとのこと。寄附も地元企業などから想定以上に集まり、会期末には公式ホームページのアクセスが集中し、サーバーもダウンしたとのこと。継続開催するかどうかは、一回やってみて決めるとのことだったが、県北地域に光を当て、地域の素晴らしさを見直すきっかけともなり、住民の地域づくりへの機運を醸成するなど成果を上げたとして、先月、2019年秋の次回開催が決定されたとのこと。海に行って、温泉に行って、美術を見る、日本型アートの楽しみ方を満喫するこの芸術祭、次はどうなるか?この芸術祭、国内外から85組のアーティストが参加。作品制作などを通じて地域の人などとも交流。アジアのアーティストとの交流のため、国際交流基金も助成している。主な参考文献茨城県北芸術祭、公式ガイドブックKENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭公式カタログ茨城県北芸術祭のWebsite https://kenpoku-art.jp/住吉智恵、KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭レポート、美術手帖、2016.11読売新聞、2017年5月13日付茨城新聞、2017年3月3日付日本経済新聞電子版、2017年1月31付南條史生、「アートを生きる」〈注〉国際交流基金ウェブマガジン『をちこちMagazine』に、芸術祭についての関連記事を掲載しています。http://www.wochikochi.jp/topstory/2016/12/international-exhibitions.phphttp://www.wochikochi.jp/special/2016/12/architecture-en.php22ファイナンス 2017.6SPOT

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