ファイナンス 2017年6月号 Vol.53 No.3
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1茨城県北って?茨城県の方には大変失礼かと思うが、茨城県北といっても、イメージが湧かない人が多いかもしれない。秋葉原直通のつくばエクスプレスも県南部のつくばまで。最近なら、ゴールデンウィークに外国人も殺到した、広大な丘が青いネモフィラで染まる国営ひたち海浜公園に行った人、かつてつくば万博に行った人や偕楽園まで行った人も、その先は何があるのかも知らない人が多いかもしれない。この東京23区の2.6倍の広さの県北6市町(日立市、高萩市、北茨城市、常陸太田市、常陸大宮市、大子町)人口37万人弱のこの地域に昨年秋、80万人近い人々が訪れた。何でそんなに人が来たのか。そこで初めて茨城県北芸術祭が開催されたからだ。なぜ、そこでやったのか。きっと皆がよく知らないところだからだ。この地域の振興のために、県は26年度に県北振興課を設置。地域振興のために何ができるかを議論し、その中で出てきたのがこの芸術祭だった。六本木の森美術館の南條史生館長に総合ディレクターを依頼し、実行委員会会長 橋本昌茨城県知事の下、県の主導で6市町とともにこの芸術祭が開催された。2コンセプト県北地域は海側と山側からなる。鉄道も水戸を起点に海側の常磐線と山側の水郡線で分かれる。海側は五浦(いづら)など美しい海岸線、山側は美しい山々や温泉などに恵まれた地域。とにかく広く、公共交通機関で回るのはちとやっかいなので、車で回れば、成り行き上、地域の自然も楽しめるという仕組み。この地域、意外と芸術に縁がある。まず、五浦海岸は東京美術学校(現東京藝術大学)の校長を追われた岡倉天心や日本画の大家、横山大観らが創作活動の拠点としたところ。東日本大震災の津波で流された六角堂は天心の瞑想の場。また、建築界のノーベル賞、プリツカー賞も受賞しているSANAAという建築チームの妹島和世は日立出身。今、フランスで一番人気のある日本人建築家はSANAAだそうだ。日立駅舎は妹島の作品。1月号にも書いたSANAA設計の直島の船着場と似た雰囲気のガラスとメタリックのフラットなつくり。この芸術祭は、特定の美術館に展示しているのではなく、広い地域に分散しているアートを一つ一つ巡り巡っていくという仕組み。南條ディレクターが、アートの設置場所を大まかに選び、アーティストが具体的な場所を決める。何を作るかも場所を見て決めることが多かったという。このため、直前まで決まらず、オフィシャルガイドブックに作品の写真を載せられないものも多く、市町村もやきもきしたという。今回の芸術祭の開催テーマは「海か、山か、芸術か?」。「海か、山か、」までは分かるが、そこになぜか、「芸術か?」が入っているところがひっかかり、現代アートっぽい。3いざ芸術祭へ水戸から車で一日で海と山を回るという強行軍だが、何しろ広い。とても全部回りきれるものではない。~はじめての茨城県北芸術祭にて茨城県北部に80万人来訪!国際交流基金  吾郷 俊樹Spot02ファイナンス 2017.619SPOT

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