ファイナンス 2017年5月号 Vol.53 No.2
47/62

価されず4位だったのが、2位に繰り上がったことがありましたが、採点というのは、主観性、裁量の余地がかなりある不安定なものなのでしょうか。▷内村: ロンドンのときは、問題は難度を認めるか認めないかというところだったんですよ。僕の最後の鞍馬の技でした。角度が何度以上であれば難度が認定されるという技があって、ちゃんとルールに表記されていたのです。ビデオで見たら確実にそこまで上がっていたので難度が認定されるはずなのに、難度認定されていないから、「その難度認定がされれば、その分が得点にプラスされて日本が二位になるでしょう」という説明をそこでやったら、それが通ったのです。別に採点の間違いでもなんでもないんですね。それは体操を知らない人には全くわからないものだと思いますが、体操をやっている側からしたら「説明すれば絶対大丈夫でしょう」という感じのものでした。▶神田: 水泳やスキー、スケートでルールが日本選手に不利に変えられたと批判が出ることが時々あります。『オリンピックのアスリートたち 内村航平』では、内村さんは昔、採点規則を熟読、暗記する努力をされていたそうですが、ルール変更についてどう考えますか。▷内村: ルールは四年に一度変わるのですが、最近で一番大きく変わったのは、10点満点が廃止になって満点がなくなったというところです。そこから細かい部分は変更されていますけど、基本的には大きくは変わっていません。今のところは、ルールが変わっても、「実施がいい演技にはしっかりいい評価をしますよ」っていう基本的な部分があり、そこさえ守られていれば、日本にとっては間違いなくずっと有利な採点方法になると思うので、どんなルールがきても僕は大丈夫じゃないかなと思っています。▶神田: 日本協会は3Dデータを活用した採点支援システムの共同研究を推進しつつありますが、難度判定をシステムに委ねることは可能なのでしょうか。▷内村: そうなるとより正確に技を行わないと認定されない場合もありますが、日本は正確にやっているので、機械に採点されても特に問題はないとは思います。でも、やっぱり今まで0.1とか0.2とか、人間の目で見て行っていた部分で多少影響が出ていた部分もあると思うんです。そこがもうごまかしが効かなくなくなると思うので、いいところもあれば悪いところもあるんじゃないか、僕はフィフティ・フィフティじゃないかなという感じがします。▶神田: 障害者体操がパラリンピックで採用されていないことが残念です。なぜなのでしょうか。また、パラリンピックに導入できないのでしょうか。▷内村: それが実現すれば望ましいと思うのですが、実際は難しいと思います。障害のレベルにもよると思いますけど。パラリンピックを見ていると、これは体操だとちょっと厳しいなというのをすごく感じるので、体操が採用されていないのは自然じゃないかという気もします。僕達体操選手は、やはり全身を使いますし、目もそれなりに「見て確認する」という動作があるので、かなり難しいんじゃないかなと。それができれば本当に超人だと思いますよ。僕らよりずっとすごいと思います。日常生活、ありのままの内村航平▶神田: 驚いたのが、内村さんは筋トレとかはほとんどしていないと聞いたことです。ほとんどの場合、基礎体力、筋力、精神力構築のために、筋トレ、とりわけ科学的トレーニングが導入されていますが、本当にそうなのですか。▷内村: 「筋トレ」という言い方が多分違うと思うんですよね。それなりに筋力を上げるためにトレーニングはしていますが、「筋力トレーニンファイナンス 2017.543超有識者場外ヒアリング62連 載|超有識者場外ヒアリング

元のページ  ../index.html#47

このブックを見る