ファイナンス 2017年5月号 Vol.53 No.2
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ったからよかったなっていうのはあります。▶神田: しかも、ずっとこのことを秘してこられましたが、それはなぜですか。▷内村: 別に秘密にしていたわけではなかったのですけど(笑)。最後の種目でぎっくり腰になったので、その途中だったら気づかれるようなこともあったと思いますが。でも、実は、結構テレビには映っていましたけどね、腰が痛そうな感じは。▶神田: 疲れておられたのかなと思って、怪我だとは気づかなかったですね。▷内村: 表彰式のときも本当に立っているのがやっとという状況でした。歩くのも結構痛くて。▶神田: 我々はオレグ・ベルヤエフと0.901差でずっとハラハラして応援していたのですが、当の内村さん自身は、「床が始まってから一度も点数を見ていない」、それ以上に、「いつも試合で点数は見ていない」とも仰っています。大昔から点数を見ない姿勢だったのですか。▷内村: 点数を見てしまうとやっぱりいい点が出たとき、悪い点がでたときで結構気持ちに変化が起きるので、基本的には見ないでやってきました。点数を見ないで自分の演技だけに集中してやるっていうスタイルでずっとやってきたので、オリンピックは特にそうしてやっている感じはありましたね。▶神田: 意識してなくても聞こえたり、チームのベンチで得点の話題になったりはしないのでしょうか。▷内村: 皆、外国人なので(笑)、何もわからないです。言葉がまず。▶神田: 日本チームのベンチで団体戦のときなどはいかがですか。▷内村: 団体戦のときは何点出たとか確認しますけど、個人総合のときは自分だけなので、特に気にはしていないですね。▶神田: 最初の大舞台は北京オリンピックですが、楽しさの方が強くて緊張しなかったと仰っていました。今回のリオでも個人にとりわけ過剰な期待がかかってしまっていたのは内村選手と吉田沙保里選手だったと思います。リオでも全くプレッシャーがなかったのですか。▷内村: ロンドンのときに結構プレッシャーに負けそうなときがあったのですが、その経験もあって、また、オリンピックが3回目ということもあって、プレッシャーは凄く感じていましたけど、特にそれを辛いだとかは思わなかったですね。プレッシャーがかかってはいるけれども、「それをはねのけられたらまたさらに上に行けるな」っていうわくわく感のほうが大きかったというか、その状況を楽しんでやっていたんじゃないかなというのがありますね。▶神田: 小さい頃は緊張しやすいタイプで、「演技中で頭が真っ白になって演技構成を忘れてそのまま走ったこともある」と以前、仰っていました。いつどうやってこの緊張癖を克服したのですか。▷内村: 僕の場合は経験で全てをカバーしてきたっていうのがあるんですけど。やっぱり経験がないとプレッシャーがかかった緊張する場面で対処法が見つからないと思うので、常に自分にプレッシャーをかけて緊張感を持った状態で何事も行うっていうことによって、そういう状況になったときでも冷静になれるんじゃないかなということかもしれません。2020東京オリ・パラに向けて▶神田: 東京オリンピックでは、日本オリンピファイナンス 2017.539超有識者場外ヒアリング62連 載|超有識者場外ヒアリング

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