ファイナンス 2017年5月号 Vol.53 No.2
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け、どのような合意がなされるかに注目が集まっていたところ、会議において、「経済に対する貿易の貢献の強化に取り組んでいる」との認識が共有された。麻生大臣からは、自由で公正な貿易のルールに基づかなければならず、貿易にかかるコストを上げるべきではない旨、また、自由貿易が多くの国で経済の繁栄に寄与してきたことを認識すべきである旨の発言を行った。2アフリカとのコンパクト今回のG20では、民間投資の促進を目的とする「アフリカとのコンパクト」(CwA)というイニシアティブが立ち上げられた。このイニシアティブは、「需要主導であり、各国の状況や優先順位を尊重」し、「個別に策定される投資コンパクトの中で利用できる、グッド・プラクティス及び手段のモジュールを提供する」ものである。アフリカの5か国(コートジボワール、モロッコ、ルワンダ、セネガル、チュニジア)からコンパクト参加への関心の表明があり、今回の会議においては、これらの国々と「アフリカ開発銀行、IMF、世界銀行グループ及び関心のある二国間パートナーが投資コンパクトに取り組み、強固な投資環境を構築する意向であること」への歓迎が示された。3国際金融アーキテクチャ資本フローの監視及び資本フローに伴うリスクの管理に関する取組は、日本がG20等においてその強化の重要性を主張してきた。今回の会議においては、「資本フローの監視及び資本フローの過大な変動に起因するリスクの管理を引き続き強化する一方で、開かれた資本市場、及び国際資本フローを支えるシステムを改善していくことの重要性及び恩恵」が認識された。このため、「IMFや他の国際金融機関の、マクロプルーデンス政策を含む、この分野での更なる取り組みに期待」が示された。また、OECDにおいて現在行われている非加盟国による遵守も視野に入れた資本自由化コードの見直しをG20として歓迎した。その他、IMFを中心としたグローバル金融セーフティネットの強化に向け、IMFの新たな貸出手段の検討を支持するとともに、IMFと地域金融取極とのより効果的な連携に係る努力を継続するとした。4金融セクター改革金融セクター改革に関しては、「銀行セクターにおける資本賦課の全体水準を更に大きく引き上げることなく、バーゼルⅢの枠組みを最終化するためのバーゼル銀行監督委員会の作業に対する支持」が確認された。また、「重大で意図せざるいかなる結果にも対処すること等により、我々の全体的な目的との整合性を確保するため、改革の実施と影響に対する監視を引き続き向上させる」ことも共有された。5国際課税国際課税については、「税源浸食と利益移転(BEPS)パッケージの適時の、一貫した、広範な実施に引き続きコミット」することが示された。また、「BEPS包摂的枠組み」への参加の拡大を歓迎し、関係・関心のある全ての国・法域に参加が奨励された。BEPSプロジェクトにおいて、日本は、2013年の開始以来、主導的役割を果たしてきており、昨年6月には「包摂的枠組み」の第1回会合を京都で開催している。6テロ資金対策テロ資金対策に関しては、「テロ資金供与のすべての資金源、技術及びチャネルに対処していくというコミットメント並びに世界的規模でFATF基準を速やかかつ効果的に実施することの要請」が再確認された。参考2)コミュニケ(抜粋)1.我々の会合は、世界経済の回復が進捗する中で行われた。しかし、成長は依然として望ましいペースよりも弱く、世界経済の下方リスクが残存している。我々は、国際的な経済・金融協力へのコミットメントを再確認する。我々は、経済、金融の強靭性を高めつつ、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ包摂的な成長という我々の目標を達成するため、全ての政策手段-金融、財政及び構造政策-を個別にまた総合的に用いるという我々の決意を再確認する。金融政策は引き続き、中央銀行のマンデートと整合的に経済活動と物価の安定を支える。(略)我々ファイナンス 2017.527G20バーデン=バーデンの概要(2017年3月17日~18日開催、於:ドイツ・バーデン=バーデン)SPOT

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