ファイナンス 2017年5月号 Vol.53 No.2
14/62

1.公共事業関係費・国土交通省予算の概要(1)基本的考え方平成29年度予算の編成に当たり、財政制度等審議会の建議(平成28年11月17日財政制度等審議会財政制度分科会)において「公共事業については、「量」で評価する時代は終わり、選択と集中の下、より少ない費用で最大限の効果が発揮されているかという「質」の面での評価が重要な時代になっている(「量」から「質」へ)。更に、人口減少社会の本格的な到来も踏まえれば、予算の総額を増やすということではなく、引き続き総額の抑制に取り組む中で、日本の成長力を高める事業と防災・減災・老朽化対策への重点化・効率化を進めていく必要がある」とされた。これを受けて、公共事業関係費については、総額の大幅な増額を行うのではなく、安定的な確保を行う中で、豪雨・台風災害等を踏まえた防災・減災対策、民間投資を誘発し、日本の成長力を高める事業などへの重点化を推進することを基本とし、「質」の改善に向け、既存社会資本ストックの最大限の活用、民間活用等を重点的に推進したところである。あわせて、建設現場の労働生産性の向上に資するよう、財政面からも最大限の取組をする観点から、適正な工期を確保するための2か年国債(国庫債務負担行為)やゼロ国債を活用すること等により、公共工事の施工時期を平準化することとした。また、公共事業以外の国土交通省予算では、「海上保安体制強化に関する方針」(平成28年12月21日関係閣僚会議)を踏まえ、尖閣領海警備など海上保安体制の強化を着実に進めるため、28 年度補正予算に続き、海上保安庁の当初予算を大幅に増額し、尖閣対応の大型巡視船を中心に緊急的に整備することとしたことが、平成29年度予算の特徴である。(2)一般会計予算の水準こうした基本的考え方の下で編成を行った結果、平成29年度の公共事業関係費の一般会計予算は前年度比+26億円(+0.0%)の微増の5兆9,763億円と、前年度と同水準で決着した。また、平成29年度の国土交通省関係の一般会計予算は5兆7,946億円と、平成28年度当初予算比+179億円の増加となっている。これは、戦略的海上保安体制の構築(+229億円)によるところが大きい。(参考)東日本大震災復興特別会計における公共事業関係費の計上額は6,774億円(復旧2,509億円、復興4,265億円)であり、災害復旧の進捗等により、平成28年度当初予算比▲2,254億円(▲25.0%)の減少となっている。平成29年度国土交通・公共事業関係予算について主計局主計官 中山 光輝10ファイナンス 2017.5特集

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る