ファイナンス 2017年4月号 Vol.53 No.1
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授業の中では、お金持ちの人、よく食べる人、お年寄りなどが集まった食事会の会費を誰が支払うか、という例を題材にして税についての理解を深めていきました。児童からは、「たくさん食べた人が払えばよい」という消費税の考え方や「たくさんお金を持っている人が払えばよい」という所得税の考え方が出されました。いろいろな方法で、税を集めることによって公平性を保っていることを理解していきました。以下に、税の役割や公平性を意識した児童の反応を紹介します。・自分たちの身近なところに税金があることが分かりました。税金のおかげで国が支えられている部分があることが分かりました。・税のことがすごく分かりました。(中略)税の意味は、前までよく分からなかったけど、税は日本を平和にしているのだなと思いました。・この授業で、税金のとりかたを勉強しました。食事会の例では、所得税は、お金を多く持っている人が多く払うことと同じだということが分かりました。3時間目は、個人ワークで「どんな日本にしたいか、そのために予算をどうするか」について、考えたことをもとに、グループで予算を作りました。予算ボードで「医療」「年金」「介護・少子化対策など」「地方交付金」「公共事業」「防衛」「教育」「その他」の8項目についてお金の配分を考えていきました。お金が足りない時は、特別なお金を使うこともできるし、お金を余るようにすることもできるというルールです。ここでポイントとなるのは、予算を作る時のジレンマから、多面的な見方の必要性を感じることであったと考えます。授業の中では、様々な意見を調整して予算を作ることの難しさを感じた児童がいました。・予算を作るとき、予算を動かすことが難しかったです。理由は、私は、こっちが大切と思っても、友達が違う意見だったからです。また、多額の借金を減らしたいという意識によってジレンマが生じていたことが、以下の児童の意識から分かります。・借金を返すと税率が上がる。でも、税率を上げると国民が納得できなくなるので、政治はとっても難しいと思いました。・予算編成が難しかったです。なぜなら、借金を返済しないといけないと思い、いろいろとけずったからです。写真2 アドバイスを参考に予算を作る児童児童には、800兆円を超える借金を返さないといけない。借金は、返さないと大変なことになるという意識が働いていたのだと考えます。未来の社会を自分事として考えているからこそ、漠然とした不安が生じたのではないでしょうか。しかし、児童の中には、予算を削って借金を返すという発想ではなく、国を成長させて借金を返していくという考えもありました。・科学を進歩させて、もっと便利で経済的な機械を作り、それを日本の様々なところに役立てて少しずつでよいから借金返済に取り組みたいです。・教育資金を増やして人材を育成し、開発資金を増やして様々な研究の成果を出して世界へ売り込み、日本のお金の問題を解決することが大事だと思った。60ファイナンス 2017.4SPOT

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