ファイナンス 2017年4月号 Vol.53 No.1
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生み出すものであり、国内活動にとどまらず、海外も含まれる。これらの有形固定資産以外の投資(広義の投資)の伸びは、年々上昇傾向にあることを踏まえると(図表1)、企業の投資姿勢に対する評価は違ったものとなる。現状の企業の現金・預金残高は2015年度末で約200兆円に達しており、国内での投資的支出をさらに伸ばせる余地が十分ある。日本は増加する高齢者ニーズや多様な働き方から生まれるニーズがあり、AIといった新しい技術により新たなサービスが創出され、生産性も飛躍的に向上していく状況に面していることから、投資が広がるための循環を取り戻すことが期待される。3人工知能(AI)搭載の「眼のある機械」の社会実装に向けて人材投資を加速させることが必要〔松尾豊委員〕日本が抱える社会課題を解決するとともに、経済成長をもたらす可能性があるとして最も注目されるのがAIである。技術の進展で深層学習(ディープラーニング)が可能になったことで、機械やロボットが「眼をもつ」機械となり、これまでできなかったような多くの仕事がこなせるようになる(図表2、図表3)。イメージセンサ(網膜)と画像認識の計算処理(視覚野の処理)を使った「眼のある機械」は、日本が強い機械やロボットの技術を活用できるため、ものづくりに強みをもつ日本にとって大きなチャンスである。眼をもった機械を農業・建設等、様々な分野に導入すれば、付加価値の高い製品を作ることができる。また、機械のソフトウェア部分を随時アップデートし課金することで、もの売りからサービス売りに転換できる。さらに、機械が動作する「場」全体を含めて、産業ごとにプラットフォーム化して、それをグローバルに展開する戦略が描ける。「眼のある機械」への投資で最も重要なのは、ものづくりの部分ではなく、人工知能部分に対する投資であり、深層学習の技術に精通した若い技術者・研究者を時には高給で処遇するといった投資がある。また、諸外国の企業と戦うためには、最終製図表1 「広義の投資」の長期推移(イメージ)01020304050609697989900010203040506070809101112131415海外設備投資M&A(IN-OUT)M&A(IN-IN)国内研究開発費国内無形固定資産(兆円)国内有形固定資産国内有形固定資産以外(年度)(注)1.国内の有形及び無形固定資産は、各資産残高の前年差に減価償却費を加えて算出、各資産の減価償却費は前期の有形・無形固定資産残高の比率で按分して算出。2.2015年度の海外設備投資は予測値。3.M&AのIN-INは日本企業同士のM&A、IN-OUTは日本企業による海外企業へのM&A。(出所)財務省「法人企業統計年報」、総務省「科学技術研究調査」、経済産業省「海外事業活動基本調査」、(株)レコフ「M&Aデータベース」により田中委員作成。54ファイナンス 2017.4SPOT

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