ファイナンス 2017年4月号 Vol.53 No.1
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1.はじめに一般会計歳出に計上される地方交付税交付金は、地方交付税法において、国税収入額の一定割合(29年度は所得税及び法人税の収入額の33.1%、酒税の収入額の50%、消費税の収入額の22.3%)とされている。しかし、実際に地方団体に交付される地方交付税の総額は、これにとどまらず、① 過去の地方財政対策時の国と地方の貸し借りなどに起因して地方交付税法附則等によって後年度に加算することが定められている額の加算(法定加算)及び過年度の精算② 地方財政全体の収支見通しにおいて、地方歳出の総額と、地方税、地方交付税の法定率分及び法定加算等、地方債、国庫支出金などの地方歳入の合計額との間に生じた乖離(地方の財源不足)を国・地方が折半して補填するための加算(特例加算)を行った上で決定されている*1。近年は、国税収入が決算または補正において増額したことに起因し、交付税法定率分も増加したところ、当該増加分を繰り越し、翌年度の予算編成において地方の財源不足解消に活用してきた(平成28年度活用額:約1.3兆円)。しかしながら、平成29年度編成においては、平成27年度決算税収の下振れ等により、前年度繰越金が剥落したことから、総務省からの概算要求は対前年度約7,300億円増の巨額のものとなっていた。一方、近年の国・地方の財政状況を見ると、国は巨額の基礎的財政収支の赤字を抱え、債務残高がリーマンショック後の621兆円(平成21年度末)から8年間で約280兆円(平成29年度末見込み)増加し898兆円まで累増すると見込まれているのに対し、地方は平成17年度以降基礎的財政収支の黒字を維持していることに加え、債務残高も約200兆円で安定している。このような中、平成29年度地方財政対策においては、後述する「経済・財政再生計画」の二年目として、上記の繰越金約1.3兆円の剥落に対処しつつ、どのように国・地方を通じた財政健全化への道筋を維持するかが課題であった。2.平成29年度地方財政対策について(1) 通常収支分について①「経済・財政再生計画」及び「予算編成の基本方針」について「経済・財政再生計画」(平成27年6月30日閣議決定)における財政健全化目標については、「「経済・財政一体改革」を推進することにより、経済再生を進めるとともに、2020年度(平成32年度)の財政健全化目標*2を堅持する。具体的平成29年度地方財政対策について主計局主計官 泉 恒有*1 地方交付税とは別に、地方特例交付金(特定の地方歳出に係る地方負担や地方税の特例的な減税措置による地方財政の減収分を補填するための特別措置)がある。毎年度の一般会計歳出に計上される地方交付税交付金等の額は、地方交付税及び地方特例交付金の交付のために必要とされる一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計への繰入金の額の合計額である。20ファイナンス 2017.4特集

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