ファイナンス 2017年4月号 Vol.53 No.1
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見ると、平成29年度予算では、一般会計からエネルギー需給勘定に5,726億円〔▲241億円〕、電源開発促進勘定に3,065億円〔+152億円〕、原子力損害賠償支援勘定に400億円〔皆増〕を繰り入れている。各勘定の歳出については、こうした一般会計からの繰入れのほか、各勘定における前年度剰余金や資金からの受入れ等を財源として、エネルギー需給勘定において7,745億円〔▲317億円〕、電源開発促進勘定において3,453億円〔▲2億円〕、原子力損害賠償支援勘定において469億円〔+335億円〕を計上している。(1)エネルギー需給勘定(石油石炭税財源)エネルギー需給勘定の歳出は、再生可能エネルギーや省エネルギー関連の施策を実施する「エネルギー需給構造高度化対策」と、石油製品の流通や資源開発、石油備蓄などを行う「燃料安定供給対策」とで構成されており、平成29年度の経済産業省予算では、それぞれ3,431億円〔▲246億円〕、2,779億円〔▲41億円〕を計上している(図1)。①エネルギー需給構造高度化対策〈省エネルギー関連予算〉エネルギーミックスを実現するためには、オイルショック後並の大幅なエネルギー効率の改善が必要とされているが、これは予算のみで成し遂げられるものではない。幅広い事業者や消費者に対して省エネに向けた取組を促す必要があり、規制的手法を中心に取り組んでいくべきである。このため、財政制度等審議会「平成29年度予算の編成等に関する建議」(平成28年11月17日)でも指摘されたように、分野や対象に応じて、規制的手法を含む政策体系を構築した上で、それに基づき予算を重点化していくことが必要である。こうした考え方の下、省エネルギー予算においては、規制との連携や、補助金を通じて事業者に価格低減を促すスキームの導入など、費用対効果を高めるための工夫を進めている。具体的には、例えば、省エネルギー投資促進に向けた支援補助金673億円〔+158億円〕のうち、①省エネルギー設備への入替支援については、「事業者クラス分け制度」においてS評価を受けた事業者に対して採択審査の際に加点を行う、②ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の導入支援については、ZEH化に要する掛かり増し費用に上限を設けること等により、ハウスメーカー等にZEH化の価格低減を促す仕組みを導入することとしている。クリーンエネルギー自動車(CEV)導入支援事業費補助金123億円〔▲14億円〕については、これまで電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド(PHV)の蓄電池容量に応じて補助額が設定されてきたが、車体重量や設計により蓄電池容量当たりの航続距離が異なることや、我が国では一般に短距離走行が多いという実態を踏まえ、補助額が実際の環境負荷低減効果に即したものとなるよう、スキームの見直しを行うこととしている。また、トラックの隊列走行等の高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業26億円〔+7億円〕や、ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト33億円〔新規〕をはじめ、将来の省エネに資する研究開発・実証事業等に必要な予算を計上している。〈再生可能エネルギー関連予算〉再生可能エネルギー分野に対する支援は総花的になりがちだが、優先順位付けを明確化し、政策効果の高い事業への重点化を進めるとともに、出口戦略の設定を徹底する必要がある。こうした点を踏まえつつ、再エネ発電の系統接続の増加に伴う課題に対応するための技術開発・実証事業や、国民負担抑制と再エネ導入の両立に向けた研究開発・調査事業等に必要な予算を計上している。具体的には、電力系統の出力変動に対応するための技術研究開発事業73億円〔+8億円〕や、需要家側のエネルギーリソース(蓄電池・再エネ発電設備等)を活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金40億円〔+11億円〕など、必要な予算を計上している。また、地熱資源12ファイナンス 2017.4特集

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