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特集 Future TALK 〇〇さんと日本の未来とイマを考える


長谷川ミラさん(モデル・タレント)編

はじめに


阪井広報室長 この企画は、財務省や財政・税の役割、その現状について、読者の皆さまにわかりやすくお伝えすることができるよう、様々な分野でご活躍されている方をお招きして、日本の未来とイマについて語っていただく企画です。11回目となる今回は、モデルでもあり、テレビやラジオ、雑誌でもご活躍されている長谷川ミラさんにお越しいただきました。
今までのお仕事を通して、気になっている財政や税制について、今回ぜひお話しいただければと思います。それでは、よろしくお願いします。

長谷川ミラさん よろしくお願いします。本日は世間で言われている疑問など素直にお聞きできればと思って来ました!
写真1: 右から二人目が長谷川ミラさん

国民の声について


長谷川ミラさん 今、国民から様々な問題に関して、財務省に対して声が上げられていると思うのですが、国民の声は実際どれくらい皆さんに届いているのでしょうか。

島貫署長 本郷税務署の島貫です。直前は、主税局という税制を作る部署に2年間いました。今年の7月からは本郷税務署長として勤務しており、そこでは地元の方とお話しするなど、国民の皆さまの声を聞く機会が多くあります。

亀遊係長 財務省主税局の亀遊です。入省5年目ですが、今年の7月から初めて主税局に勤務しており、様々な税目を横断的にみながら、より中長期的に税について考える仕事をしています。
国民の声が届いているかという点ですが、率直に言えば、すごく届いていますし、影響を受けていると感じています。税制は国民生活や企業行動と密接に関係しているので、様々な方々と議論をしながら作られていくのですが、テレビ等でのコメンテータの方の発言や世論調査の結果、SNSで話題となった内容なども、国会議員やメディアの皆さんなどからよく疑問や意見をいただくので、我々もそれをよく注視して、どう応えていくかということを常に考えています。

長谷川ミラさん なるほど。そうすると、国民の声をよく聞いているのに、財務省にここまで様々な意見が寄せられているなど、国民に理解を得られていないのはなぜなのでしょうか。例えば、「迅速な対応が必要」と言いつつ、今困っているのにできていないのは何でなんだろうと思ってしまいます。

島貫署長 実は財務省内では幹部まで話を通すのはすごく早いです。「これやるぞ」となったらものすごいスピードで検討していきます。ただ、税制などは法律で決められているため、国会に提出して承認を得る必要があり、また、法律を提出できる期間が決まっていることもあり、すぐに実現させるのはなかなか難しいところがあります。

長谷川ミラさん 税金関係でいうと、税と社会保険料の負担が高いと言われていたり、2023年の「今年の漢字」が「税」になったりしていて、私は正直「やっぱりな」と思っていますが、それに対して皆さんはどう感じていますか。

島貫署長 国民の皆さんが「税」という言葉のどこに引っかかって、「今年の漢字」に選ばれたのかなと気になって考えていました。
税金や社会保険料の存在に加え、物価の高騰もあって負担感が増えていたことに対して、「政府はどう思っているんだ」という声が「税」に集結したものなのではないかと感じました。そうした課題に対して、本当に有効な政策が何かを考え、迅速に実行していくことは、私達にとって常に課題です。

亀遊係長 税金を払う側として、なるべく負担は少ない方が良いというのは普通の感覚で、私自身も減税されるのだったら正直嬉しいです(笑)。一方で、税は社会を支えていくために必要なツールで、日々利用している医療や子育て、インフラなど、その恩恵を受けている部分もたくさんあります。社会のニーズの変化とともに、そうした使い道や、それを支える税制についても議論が必要で、両者をセットで考えていただけたらと思っています。

長谷川ミラさん 全く税金をとられたくないと思っている人は誰もいないと思います。ただ、これはメディアの報道の仕方にも問題がありますが、国民としては隠すようにいつの間にか増税をされているような気がしていて、それは言葉を選ばずに言うと手段が汚いなという感想を持っています。そこにも国民が理解しづらい要因があるのではないでしょうか。
写真2: 長谷川ミラさん

税の現状について


長谷川ミラさん 税や保険料の負担が増しているという部分について、どうやっても税金の負担を増やしていかないといけないのでしょうか。例えば、国会議員の給料は世界的に比べて高いと言われていたり、選挙を行うのにものすごく費用がかかったり、そうした支出を削減してもどうにかならないのでしょうか。

亀遊係長 前提として、国民負担を考える際に、まず支出を削りましょうという努力はあって、前面に押し出してはいます。

長谷川ミラさん 全然足りてないですよ(笑)!もっと押し出した方がいいです。

亀遊係長 また、足元の税制改正では、家計支援のための所得減税や、企業の賃上げを促進するための税制など、経済により良い循環を生み出すための税負担の軽減にも取り組んでいます。
確かに、将来にわたって安定した税収を確保することは重要ですが、ただどんどん増やせば良いというマインドで働いている職員はいないと思います。

島貫署長 国の財政は歳出と歳入の両面のバランスで決まりますから、もちろん、例えば支出をカットすることで対応できるのであれば、増税はしたくないというのが私達にとっても共通認識だと思います。

長谷川ミラさん じゃあ実際にこの負担が今後下がるという可能性は今の日本であり得るんでしょうか?もしそういう未来があるんだったら可能性として示してもらった方がいいんじゃないかと思います。

島貫署長 消費税と社会保険料に関しては、歳出側の社会保障との関係性があります。高齢化も進んでいくことが見込まれる中、現行の制度の延長線上では、簡単な話ではないのではないかなと思います。

長谷川ミラさん 最近、周りの人から「税金って何に使われているかわからないよね」と聞かれることがある中で、逆に「何に使われているかがわかって、ちゃんと自分に還元されていれば文句ないんだな」と思うことがあります。
こうしたエピソードも含め、日本の教育では、あまり税金の話をしないじゃないですか。その点についてはどういう風に考えているのでしょうか。

島貫署長 教育は近年まさに力を入れているところで、学校に訪問して、税金の大切さや使い道の話をしています。ただ、すべての学校でできているわけではなくて、そういう機会がない子供たちの方が多いので、これからもっと増やしていかないといけないと思っています。

亀遊係長 例えば、私が高校生の時に授業で税について学んでいたのは、「社会を支えるために必要不可欠で、税を納めなければ、私たちが安心して暮らせる基盤が機能しなくなる」というもので、税の役割、意義に着目するものが中心だったように思います。
個人的な意見ですが、これからは、「例えば自分がサラリーマンになったら、実際にどのような税金を、どれくらい支払うことになるのか。どういった個々の事情への配慮があるのか。」など、より現実に即した形で、自分事として捉えられるように伝えていくことで、正しい理解が得られ、積極的に関心を持っていただけるのではないかと考えています。

長谷川ミラさん 因数分解より教えてほしかった(笑)。税金について学ぶ機会も、もう少し増えてほしいなとは思いますね。

亀遊係長 長谷川さんは、日本人は「税金がどういう風に使われているのか興味がない」と感じていると仰っていましたが、海外の方は税金の使い道をクリアに理解しているのでしょうか。また理解して育つ文化があるのですか。

長谷川ミラさん そうですね。少なくとも欧州では、教育の中で税の仕組みや意義が教えられていると思います。
また、彼らは声をあげて国を変えてきた歴史があるからアクションを起こせるし、社会問題を活発に語るという感覚がすごくあるのだと思います。その感覚が違うのかもしれないですね。
写真3: 東京国税局本郷税務署 署長 島貫 まどか

なぜ国民負担は上がっているのか


長谷川ミラさん 先ほど少し聞きましたが、そもそもなぜこんなに税金が足りないという状況になっているのでしょうか。普通の会社だったら予算がなかったら、まずは支出を削減していくけど、なぜそれができないのでしょうか。

亀遊係長 一番大きな要因として、少子高齢化が挙げられます。30年前と比べても、社会保障以外に充てている予算はそれほど増えていないのですが、医療や介護、年金に係る費用である社会保障費はどんどん増加しています。

長谷川ミラさん 少子高齢化が課題ということであれば、なぜもっと少子化対策に費用をかけてこなかったのでしょうか。

亀遊係長 少子化対策は今まさに改革の途上にある分野だと思います。消費税率を5%から段階的に10%に引上げた際には、その税収を子育て分野にも充てられるようになり、年々予算は増加してきました。また、今後も児童手当の拡充など、子育てや教育に関する経済的な負担を軽減するための政策もさらに充実させようとしています。

長谷川ミラさん そうは言っても、私たち若い世代は、制度を利用する機会が少ないにも関わらず、負担が大きいように感じてしまいます。

阪井広報室長 まさに、社会保障費の大きなところは年金と医療費で、高齢者が増える中で増大しています。一方で、高齢者の方の中にも資産や所得のある方などもう少し負担を頂ける方もいると考えていて、今見直しを検討している部分ではありますが、実際に2022年10月からは、医療費について、一部の高齢者の方の窓口負担は、1割から2割になっています。

島貫署長 このような中で若い世代が、子供を産みたくないなと思っている一番の要因ってどこにあると感じていますか。

長谷川ミラさん すごくシンプルに言うと、世の中が今ハッピーではないからなのではないかなと思います。
税金が高いからとかそういう理由だけではなくて、「産んでも幸せじゃない、だって私が幸せじゃないし」という感じで、こんな世の中に産んだら子供がかわいそうという意見も私の周りにはいますね。
もちろん金銭面の話もあって、自分が食べていくだけでも精一杯なのに子供を産もうという思考にならないというのもあると思います。まず、自分を満足させて心の豊かさを得ないとそういう発想にもならないと思います。ただ、豊かさといっても贅沢がしたいとかではなく、カフェで少し大きいサイズのものを買うとか日常の中で小さな幸せを感じられる余裕みたいな…。
ですが私は全部が国のせいだとは思っていません。日本人は文句が行政に行きがちですが、給料上げたいのだったら、まず自分の勤めている会社に声をあげるべきじゃないですか。あまりにも国に言いすぎている気もしています。

亀遊係長 政策の効果が十分に届いて、社会がより良い方向に変わっていくことで、必要な負担への納得感も生まれてくる。お話を伺う中で、こうしたサイクルを構築していく必要があると感じました。
また、今後も人口減少や少子高齢化が進む中で、受益と負担のバランスをどのように図っていくか、社会全体で考えていくことが重要です。

長谷川ミラさん 社会保障についていえば、日本は今後、高福祉高負担の社会に向かっていくのか、あるいは税負担は低いが福祉にはある程度の自己負担を求めていくのか、皆さんはどちらがいいと思いますか。

島貫署長 自分で色々できる人にとっては税負担が少ない方が自由がきくと思いますけど、今の制度ならば自分が病気になったときなどにしっかりサポートがあるということもあって、悩ましいなと思いますよね。様々な声が上がる中で、国民の皆さんはどちらがいいと思っているのか気になります。
写真4: 主税局調査課 係長 亀遊 竹虎

情報発信について


亀遊係長 長谷川さんはコメンテータをされる中で、視聴者の皆さんが思っていることを代弁することもあれば、自分の感じていることを強く発信していくことの双方必要な場面があるかと思いますが、普段はどういった方からお話を聞いているのでしょうか。

長谷川ミラさん 自分とは違う業界で働いている友人たちや海外にいる妹の友達たちなどですね。あとは、SNSのコメント欄は見るようにしていて、色々な意見を聞きながら、なるべく偏らないようにやっているつもりです。

島貫署長 Z世代の方たちの声って政治に届いていると思いますか。

長谷川ミラさん 様々な政策をみていても全く届いていないように感じますし、そもそも今の日本に期待もしていないと思います。私たちより少し上の30代の方で、特に出産や育児をしている方は、社会について自分事化できていると思いますけど、私たち若い世代の多くの人は結婚願望もなく、先日「いざとなったら海外にいけばいいや」と日本について諦めている同世代の発言もありましたが、不満があってもどうせ変わらないからと変化を起こすことすらせず、諦めムードがすごい。「もっと変えようよ!」という”熱い人”が少ないという点を私は危惧しています。

亀遊係長 私も「無関心」は恐れるべきものだと感じています。税制を考える際には、その背景に経済社会の変化があり、一人ひとりの負担感や生活の状況にきめ細やかに配慮した制度設計が行われています。情報発信の際に、各担当者もその点はすごく伝えるように努力しているのですが、多くの情報が飛び交う中で、もう一歩踏み込んで個々の制度の目的や中身を知っていただく必要があると思います。
本当は良い制度であったとしても、負担の側面が独り歩きをしてしまい、皆さんに正しく伝わらないという悪循環に陥ってはならないと感じています。

長谷川ミラさん ニュースのタイトルだけ見て判断している人は、世代に関係なくとても多いなと思っています。私自身はアクティビストでも活動家でもないですが、「もっとニュースを見よう」という考えが根底にはあって、知ることが大きな一歩だと思っています。
もっと知ってもらうことで反対の意見をもらうこともあるかもしれないけど、情報発信が一方通行になってしまっていて、これは国民の側の責任でもあると思います。
友人と話していて思うのですが、例えばどのような子育て支援制度があるかを知らない人も多くて、そういう意味では、もし実際は制度がきちんと整えられているのにそれが知られていないのであれば、それはメディアに出る人間が伝えていかなければいけないことだと思っています。

島貫署長 政府という組織での発言になるとどうしても固くなってしまう傾向があります。文章を作る際にも一言一句に魂を込めているときがあって、でもそれって伝える文章じゃなくて、正しくするための文章になっていたり…。正しさが優先されて「伝える」ところから外れているのかもしれません。

長谷川ミラさん 伝える力が弱いですね。先ほど「手段が汚い」と言いましたが、素直さが足りないのかもしれませんね(笑)。
例えば最近のSNSはもはや短い動画で伝えるツールになっていて、非常に影響力がありますが、技術が必要かもですね。あとは素直さという意味では、例えばギャルの力を借りるというのはどうですか?!(笑)
もちろん自分が協力できることもあると思うので呼んでください!私が大臣のスピーチ文章考えます(笑)。

おわりに

阪井広報室長 色々ご提案もいただきありがとうございます。話が尽きませんが、本日はここまでとさせていただきます。自由闊達なやり取りで、素直に現状へのご疑問をいただけたかと思います。また次回、違った切り口でお話を聞ければと思います。
写真5: 中央が長谷川ミラさん