城島財務大臣、白川日本銀行総裁共同記者会見の概要(平成24年11月5日(月曜日))
| 【冒頭発言】 | |
| 大臣) | 私からはG20の全般的な成果・所感について申し上げたいというふうに思います。 今回のG20では、欧州債務問題や米国の財政問題、IMFクォータ改革など、世界経済が直面する重要課題について有意義な意見交換ができたのではないかと思っております。 その中で、日本経済につきましては、現在、経済対策を策定中であることや、特例公債法案の迅速な成立に向け全力を挙げていること、そして社会保障・税一体改革関連法案が先般成立したことなどを紹介することで、経済成長と財政健全化の両立に向けた我が国の取り組みを十分説明できたのではないかというふうに思っております。 また、今回のコミュニケでは、東京総会中のIMFCのコミュニケと同様、世界経済の課題の一つとして、日本における特例公債法の成立や中期的な財政健全化の更なる進展の必要性が指摘されておりますけれども、我が国としては、こうした指摘をしっかりと受け止めて、財政健全化に着実に取り組むとともに、国会での特例公債法案の速やかな成立を目指し全力で努力していきたいというふうに思っております。 また、為替については、昨日のセッションで、私より円高への強い懸念を表明するとともに、G20として、6月のロスカボス・サミットで合意をした「為替レートの過度の変動及び無秩序な動きは経済及び金融の安定に対して悪影響を与える」との認識を引き続き共有することが重要であると申し上げました。合意されたコミュニケでは、こうした我が国の考え方を反映し、「為替レートの無秩序な動きは経済及び金融の安定に対して悪影響を与える」ことが確認をされております。こうした認識がG20の間で共有されたことが、為替市場の安定につながることを期待しております。 また、昨日のセッションでは、欧州問題がアジア地域に負の波及効果を及ぼすことがないよう、我が国としては、チェンマイ・イニシアティブやABMI、アジア債券市場育成イニシアティブ等を通じ、地域の金融市場の安定化に取り組んでいくことを説明いたしました。合意されたコミュニケでは、こうした我が国の発言も反映して、ABMIのような現地通貨建て債券市場の発展を促進するための地域の取り組みを、歓迎する旨の記載が盛り込まれております。 この他、会議の合間を利用して、ドイツのショイブレ大臣、シンガポールのターマン大臣とバイ会談を実施し、欧州債務問題やIMFのクォータ見直しについて、有意義な意見交換ができたのではないかと思っております。バイ会談以外でも各国の財務大臣と、前回の東京総会でのお礼も含めて多くの財務大臣と立ち話ではございますが、挨拶および意見交換ができました。そういう中でとりわけ前回お会いできませんでしたけれども、中国人民銀行の周小川総裁とも立ち話でご挨拶ができました。また、ラガルドIMF専務理事やイギリスのオズボーン財務大臣、更には韓国の朴財務大臣等とも立ち話ではありますけれども、部分的な意見交換も含めて話すことができまして、ちょうど1か月になりますので、私としては東京総会、そして今回のG20ということで各国のメンバーとの人間関係も含めてですが作れたことは有意義だったというふうに思います。 |
| 総裁) | 私からは、日本経済について、海外経済の減速した状態が強まっているもとで、輸出や鉱工業生産は減少し、内需にもその影響が一部及び始めており、わが国の景気は弱含みとなっていることを説明しました。 こうした状況のもとで、日本銀行の金融政策運営については、金融緩和を一段と強力に推進するため、10月30日の決定会合において、@資産買入等の基金を91兆円程度へ11兆円程度増額するとともに、A金融機関の一段と積極的な行動と企業や家計の前向きな資金需要の増加を促す観点から、新たな措置として「貸出増加を支援するための資金供給」の枠組みを創設したこと、を説明しました。 また、政府と日本銀行が、デフレからの脱却と物価安定のもとでの持続的な成長経路へ早期に復帰するという課題の達成に向けて、これまでも共有していた認識を改めて明確に示すため、文書を公表し、それぞれが果たすべき役割について明確にしたこともあわせて説明しました。 金融規制改革については、3点指摘しました。第1に、G20やFSB(金融安定理事会)に対する信認を維持していく上でも、バーゼルV等の金融規制改革を適時適切に実施していく必要があること、第2に、いわゆる「シャドーバンキング」に対する規制の導入に関しては、新しい分野でもあるので、定量的影響度調査等を通じて、市場機能に与える影響を慎重に把握しながら検討していく必要があること、第3に、新しい規制の導入に当たっては、自国だけでなく、他国の金融システムの安定に対しても、思わぬ形で影響を及ぼす可能性があるため、前広に各国当局間で対話をしていく必要があること、を説明しました。 |
| 【質疑応答】 | |
| 問) | 大臣にお伺いします。円高についての文言が盛り込まれたことで、もう少し感想というか、ご所見というか、詳しく教えていただければと思います。 |
| 大臣) | これは私が就任のときに内部で挨拶したことですけれども、相場についてというより私の体験がございます。1985年のプラザ合意以降数年間の240円から、忘れもしませんが160円、140円という急激な円高になったときに私は民間のサラリーマンでありました。この数年間の円高の中で、私のところは製造業でしたから、職場がなくなっていく、海外に移転をしていくと。そして移転していく職場も当然海外にその職場を移転していく場合に1年くらい前から例えば中国で、あるいは例えばタイで、というような計画を1年くらい前から立てるんです。急に生産を中止するわけにはいきませんから。無くなる職場を無くなる日まで、現場の人たちは今日で生産が終わりっていう日にもコストダウンをやるんですよ。最後の最後まで。そして生産を終了していくということを、私はいくつかの職場で体験しました。それは本当に現場の人たちの努力のすごさと、同時に働き方に対して製造業の場合ですけれども、懸命な努力というのが円高になる、為替が少し動くだけであっという間に水泡に帰すということも嫌というほど体験しました。これはもちろん輸入する産業はまったく逆のことですけれども、いずれにしても為替っていうのがこういった世の中になった場合に働き方にものすごく大きく影響を与えるということ、雇用も含めてということを、あの1985年のとき以来ずっと実感してきましたから、そういう意味で私はこの為替の動向については極めて敏感なんです。そういう面で今回、そういったことも含めた思いを込めて、先ほど言ったとおり強い懸念を表明させていただいたと申しましたが、私の思いの中にそういう部分がありました。そういうことで今回その文言が盛り込まれたということは、私としては大変良かったなと思っておりますし、為替について、円について、是非安定をしてほしいなと。そして復興から何とか経済成長へと原発も含めて抱えている日本の最大の課題のひとつは、震災からの復興ということがあります。同時にベースとしてデフレからの脱却があります。そういうところに対して、この円高という基調が足を引っ張ることがないようにしたいという思いがあります。そういう点からも、この文言が盛り込まれたことは私としては非常に良かったという実感を持っているということです。 |
| 問) | 大臣と総裁に1問ずつお伺いします。まず大臣になんですけれども、今回アメリカの大統領選と中国の共産党大会の直前ということで、要人が相次いで欠席しましたけれども、その辺議論を進める上で影響を感じましたでしょうかということを大臣にお伺いします。総裁になんですけれども、金融緩和の施策を説明したということですが、日銀もしくは先進国の金融緩和について、新興国側から意見または質問はあったのでしょうか。 |
| 大臣) | 昨日の経済部分のセッションでもそうでありますけれども、論議そのものということについては、出席がなかったということの影響は私はなかったのではないかと思います。相当活発なそして率直な意見が出され、意見交換がされたので、そういう影響は、比較はなかなか難しいんですけれども、そのことによる何か会議での低調になるとか、論議が希薄になるということは率直に言って受けませんでした。そこはなかったのではないかというふうに思っております。 |
| 総裁) | 先進国の金融緩和に対する新興国からの声ということですが、これは今回の会議に限らず、新興国に対して資本の流入をもたらし、それが当該国における景気の過熱あるいは自国通貨の為替高という問題を引き起こすという意味での問題意識の表明がありました。そうした議論に対しては、今回の会議に限りませんが、資本流入を規定する要因として、もちろん先進国との金利差もあるわけですが、基本的な経済の成長率の差が大きな要因として存在するという有力な反論もあります。いずれにしても、この問題を考えていく上では――別の席で申し上げましたが――、自らが行う政策が他国へどのように影響し、それがまた自国にどのように影響してくるのかを再度考えた上で政策をしていくという一般的な政策運営姿勢が、先進国についても新興国についても、ともに要ると思います。そういう意味で、G20のような場で、世界的な金融経済の相互依存関係を確認していくことは、大変に意義の大きいことだと思っています。 |
| 問) | 大臣と白川総裁に大きく3つお願いしたいんですけれども、ひとつは大臣に、周小川人民銀行総裁と今回お会いになったということなんですけれども、可能な範囲内でどのようなやり取りがあったのかということを教えていただけますでしょうか。白川総裁がお言葉交わされているのであれば、どのようなやり取りがあったのかを教えていただけますか。 2点目、白川総裁になんですが、先進国の金融緩和に対する新興国の声について、今おっしゃった議論は、コミュニケにもあるスピルオーバーに関係するところだと思いますが、今回のG20でこの議論ってどこまで深まったと言えるのかという点について、噛み砕いて教えていただけますか。 3番目は大臣にだと思うんですけれども、全体的に世界経済の不透明感が強まる中で迎えたG20なんですけれども、今回20か国としてそれに対してどのようなメッセージを出せたのかということを教えていただければと思います。 |
| 大臣) | 1点目は、立ち話でご挨拶というのが中心ですから、何か突っ込んだ意見交換をしたわけではありませんが、お互いに挨拶できたっていうところにひとつ意味があったのではないかと思います。中身については相手の立場もありますから申し上げにくいんですけれども、少なくとも協力できる範囲の中においては協力していこうという趣旨の挨拶を交わしたということは言えると思います。 それから世界経済は確かに非常に不安定な要素があるということについては、だいたい各国ともに認識は一致していると思います。そういう中であるがゆえにそれぞれの国の実情を報告し、説明をし、そして同時にいかに各国ともに、あるいは地域ごとにやるべきことをやりながら協調していくということがいかに大事な局面にきているかということをお互いに共有をしたと。いわゆる協調していくことの大切さを共有したということは、すごく大きかったのではないかというふうに思っております。 |
| 総裁) | 中国人民銀行の周総裁との意見交換は、二人だけの率直な意見交換ですので、その内容についてお話することは遠慮させて頂きます。いずれにせよ、率直な意見交換ができる関係を有するというのは、相互にとって非常に意味が大きいと感じました。 スピルオーバーについて、今回、どの程度議論が深まったのかについてですが、これはG20の場で何か具体的なものを決めていくということではありません。あくまでも、お互いの状況認識を深めていくということです。その点では、先程申し上げた通り、意義が大きかったとも思いますし、先進国・新興国が意見交換で自己の状況を説明するときに、相手がどのようにこの問題を考えているのかをお互いに意識しながら発言していく傾向が深まっているように感じられました。直ちに答えが出てくる問題ではありませんが、こうしたことの積み重ねの意味は大きいと思いました。 |
| 問) | 大臣にお伺いします。コミュニケの中で日本の特例公債法、その予算の財源の確保について、欧州の債務危機や米国のフィスカル・クリフと並ぶような形で、下方リスクとして指摘されているわけですけれども、あらためてこのことに対する受け止めと、それから日本に求められている中期的財政健全化のさらなる進展、この進展に向けて今後国内でどのような対応を進めていかれるおつもりなのかについてお聞かせください。 |
| 大臣) | コミュニケの中の4点目にそれがありますよね、確かにね。この場合は完全に特例公債法案、超短期的な問題ということで位置付けられていると思います。そういう点では、問題の本質からするとあえてアメリカのいわゆる財政の崖というのとは質的にちょっと違うという意味であえて分けてここに書かれたんだというふうに思います。それでもやはり日本経済というのが世界に与える影響が大きいですから、こういう政治リスクで日本の経済がシュリンクしていくようなこと、あるいは下振れしていくことについて、世界も気にしているという意味が込められていると思いますから、それはそのとおりだと思っております。あとはまさしく1日も早く成立させなければならない最大のこの国会でのテーマだと思っておりまして、私も担当大臣として最大の課題だと思っておりますし、とりわけ今までの流れで言うと、民自公3党間での協議っていうのが建設的に進むことを期待しているということであります。 |
| 問) | 白川総裁に質問があります。今回週末にBISの会合があり、そちらで、日米英中銀の外貨融通協定について、何か方向性が出されたという報道を拝見したのですが、その事実関係について、そういう方向なのかどうかも含め、教えてください。 |
| 総裁) | ご指摘の報道ですが、そうした事実はありません。昨年11月に公表した「国際短期金融市場の緊張への中央銀行の協調対応策」において、カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度、スイス国民銀行の6中央銀行が、不測の事態への対応措置として締結した為替スワップの取極は、来年2月1日を期限としています。現時点において、この為替スワップ取極の期限を延長する方針を決定したという事実はありません。いずれにせよ、日本銀行としては、今後とも、各国中央銀行と緊密に協力しつつ、金融市場の安定確保に努めていく方針です。 |
| 問) | 現在の金融情勢を見た場合、為替スワップ取極の延長について――まだ早いと思いますが――、総裁はその必要性について、どのようにお考えなのか、お聞かせください。 |
| 総裁) | この措置は、リーマンショック後に導入され、一旦この制度を止めた後、欧州債務危機が深刻化しそうな中で再稼働したわけです。これは、あくまでも一時的、時限的な措置として行ったわけですが、国際的な短期資金市場がどの程度緊張状態にあるのかをみて、いざという場合の安全装置(バックストップ)として、設けているわけです。従って、この制度の背後にある国際的な短期資金市場の安定性に関する評価がポイントになるということです。いずれにせよ、この短期資金市場の状況については、日本銀行も含め、6つの中央銀行で注意深くみていくということです。 |
| 問) | 大臣、総裁にそれぞれお聞きしたいんですけれども、財政健全化と経済成長の両立ということを、この数回のG20で言ってきて、今回の声明では、トロント・サミットでの合意はあるが、経済成長への目配りも必要だということが一層強調されているようにもみえます。やはり現下の世界経済をみるに、財政再建よりも、特に経済の立て直しに力点を置くべきではないか、という議論がやや優勢になっているのではないかと思うのですが、この点について、どのような印象をお持ちになったかをお聞きします。 |
| 大臣) | 私の印象は、財政健全化というのはベースとしてあると思います。その中でそれぞれ各国にいろいろな事情がありますよね。それを加味した中でまさにバランスを取っていくというようなことが論議をされたのではないかと思います。したがって、当然財政健全化とある面でいうと経済成長というのでしょうか、それはまさに車の両輪ですから、二者択一の話しではないというふうに思います。 |
| 総裁) | 私の回答も、大臣の回答と基本的に同じです。財政の健全化は、物価の安定と金融システム安定の基礎となるものです。そういう意味で、財政の健全化に向けた努力は非常に大事です。その上で、各国の置かれた状況、経済の状況に即して、財政健全化のスピードを考えていくというアプローチ自体は、基本的に変わっていないと思います。 |
| (以上) | |
