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所長挨拶

財務総合政策研究所は、昭和60年5月に財政金融研究所としてスタートし、平成12年に現在の名称に変更しました。財務省のシンクタンクとして、財政経済に関する調査・研究のほか、海外の研究機関との研究交流、開発途上国に対する知的支援、法人企業統計等の統計調査、財政史の編纂、財務省職員の研修等を行っています。

わが国は現在、国内外に課題・難局を抱えていると言えます。国内においては、急速に進行する少子化とその背景にある若年層の将来不安への対応、雇用形態や年齢、性別等を問わず生涯を通じて自らの働き方を選択でき、格差が固定化されない誰もが暮らしやすい包摂社会の実現、新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえた持続可能な経済社会の構築など、世界に目を向けますと、インフレ圧力と欧米各国の金融引締めによる世界経済の下振れリスクへの対応、世界規模での気候変動や災害問題の克服、エネルギー・食料問題を含む経済安全保障に対応したサプライチェーンの再構築などです。こうした内外の構造的な課題の克服に向け、国民生活の安定と持続的な経済発展を支えつつ財政の健全化を進めるとともに、グローバルな情勢も踏まえた政策課題に的確に応える財政・経済政策を企画・立案していく必要があります。このためには、内外経済情勢や政策手段に対する幅広い視点からの調査・研究が不可欠です。

 
(調査・研究)

当研究所では、こうした現状に基づく政策部局の問題意識を踏まえ、中長期的財政・経済、金融・資本市場、国際経済・各国経済等の研究を行っており、その成果を「 フィナンシャル・レビュー 」、「研究会の報告書」、「ディスカッション・ペーパー」など各種論文等として刊行するとともにホームページにおいても公表しています。これに加え、行政データの利活用の一環として、税関が保有する輸出入申告データを活用した研究にも取り組んでおります。

 
(研究交流・知的支援)

また、開発途上国に対する知的支援や海外の研究機関等との研究交流にも力を入れています。

知的支援については、ウズベキスタンやカンボジアを始めとするアジア新興国からの求めに応じ、人材育成支援を中心とした技術協力を行っています。その他、アジア諸国等を対象に、日本の財政・経済に関する知識・経験の提供を行う受入型セミナー等も実施しています。

研究交流については、中国やインド、ASEAN各国の研究機関や国際機関との間でワークショップ等を開催しているほか、開発途上国の政府職員や研究者等を研究員として受け入れる等の活動を行っています。

 
(統計調査)

当研究所では、二つの統計調査を実施しています。「 法人企業統計調査 」は、約32,000社を対象として法人の活動実態を把握し、「 法人企業景気予測調査 」は、約14,500社を対象として企業の景況感を調査します。いずれも報道関係者や市場関係者、有識者等が注目する政府統計となっており、公表時においては研究所のホームページに多くのアクセスが寄せられます。

(財政史の編纂)

当研究所は、財務省の行政事績を史録として編纂した「 財政史 」を刊行し、財務行政の企画・立案と学術研究等の用に供しています。これまでに『明治財政史』から『平成財政史−平成元〜12年度』まで7シリーズ全117巻を刊行しました。令和2年度からは、新たに平成13年度以降の平成時代後半を対象とする財政史の編纂に取り組んでいます。

 
(研修)

こうした研究等の成果を活かし、財務省職員に専門的な知識や技能を習得させるため、当研究所は、財務本省及び財務局職員に対する総合的な研修を行っています。昨年度は、399コースの研修を実施し、延べ13,509名が参加しました。研修運営においては、行政を取り巻く環境の変化に応じて、内容の充実・強化を図るとともに、研修受講機会拡大の観点から、オンラインやオンデマンドを活用した研修の実施に努めています。

 

当研究所では、行政官だけではなく専門的な知識を有する公募による研究者など、多様なスタッフを揃えています。更に大学や民間研究機関等の研究者とも相互に連携した研究を実施しています。これらを基礎とした知的な蓄積を基に、当研究所は今後とも、調査・研究、国際的な研究交流活動や能力構築・人材育成に、各部局と連携して積極的に取り組んでいきたいと考えています。皆様方の御理解と暖かい御支援を引き続きよろしくお願い申し上げます。

 

令和5年7月    財務省財務総合政策研究所長    渡部 晶

 

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