財務総合政策研究所

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若年者の雇用の実態と効果的な対応策に関する研究会
第5回会合
2013年2月5日(火) 14:00〜15:30
於: 財務省4階 南434「国際会議室」

第5回会合

◆報告 「若年者雇用政策の議論のために」
報告者 神林 龍   一橋大学経済研究所准教授
報告資料[448kb,PDF]
     

議事要旨

(1) 報告「若年者雇用政策の議論のために」

神林 龍 一橋大学経済研究所准教授

非正規労働者の割合は近年上昇してきている。厚生労働省「労働力調査」に基づき、年齢階級別に非正規労働者の割合を見ると、1990年代後半以降、15〜24歳の非正規労働者の割合は、25〜34歳や全年齢階級層の上昇幅を上回って上昇している。当該年齢層の割合は、足下50%弱と、半数近い数が非正規労働者である。
また、同省「就業構造基本調査」に基づき、20〜29歳の就労形態を見ると、1982年から2007年に、「常用正社員」(労働契約期間1年超または無期限の正社員)及び「臨時正社員」(同1年未満の正社員)の割合は低下したが、「常用非社員」(同1年超または無期限の非正社員)及び「臨時非正社員」(同1年未満の非正社員)のそれは上昇した。「常用正社員」は56%から47%に低下した一方、「常用非社員」は1%から11%に上昇している。労働契約期間の期限の定めのある者ばかりが増加している訳ではなく、労働契約期間が1年を超える者や期限の定めのない者も増加していることが確認できる。但し、非正規労働者には仕事を従とし通学や家事を主とする者も含まれる。この者も1982年から2007年に6%から9%に上昇しており、「非正規労働者の増加」を考察する際は、こうした者を分別して議論する必要がある。
若年者の失業について、15〜24歳の失業率と25〜59歳のそれとの関係を日本、アメリカ、OECD加盟国平均とで比較すると、日本のそれはアメリカ、OECD加盟国平均に比べ高水準な訳ではない。日本の15〜24歳の失業率は男女とも高度成長期及び所謂バブル期に上昇したが、その後低下に転じ、低下基調は現在も続いている。近年の失業は主に壮年層において生じている事象であると考えられる。
若年者の所得について、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」に基づき、年収(現金給与総額×12か月+賞与)を1999年と2010年とで年齢階級別に見ると、男女とも20歳代の減少幅に比べ50歳代の減少幅が大きい。また、20〜29歳の年収は、他の年齢階級層が1999年に比べ2010年に減少にしているのに対し、殆ど減少が見られない。これは、初任給があまり変動していないこと、即ち、下落はしていないが上昇もしていないことと矛盾しない。
したがって、若年者の非正規雇用の増加は、中高年齢者の解雇規制が誘因となっている可能性は拭えないがその根拠もはっきりしない。若年層の非正規雇用経験がその後の正規雇用就業への妨げとなるかに関する実証研究結果は賛否両論が併存している。加えて、中高年層の賃金調整が大きく、相対的に若年正規雇用の賃金が高止まりしていることも考慮するべきだからである。また、定年の延長による労働期間の長期化により、若年時期の非正規労働者として就労を重大視する必要はないとの議論が存在することも否定できない。
若年者を職へ繋ぐための教育について、日本の教育制度は職業教育を教授する仕組みにはなっていない。商業系や工業系の大学は元来専門的な「職業人」を養成することを目的に設立されたものの、偏差値の水準に拠り総合大学と序列化されることでそうした目的が生かされなくなっている。高等学校においても、商業科や工業科が普通科に吸収されることで専門性を喪失しつつある。
若年者の雇用に係る課題は、学校から職業への移動、所謂「School to Work」の過程の機能不全である。即ち、@生徒・学生の求職と企業の求人との不適合(ミスマッチ)と、A学卒時の職への移行期の所得保障であるが、@については、クロスセクションの情報のミスマッチと時系列的な技能のミスマッチが挙げられる。前者への対応は、現在、各教育機関に委ねられているが、これを担う機関は教育機関に限る必要はないと考える。後者については、生徒・学生の有する技能と採用する側である企業等組織が要請する技能とのミスマッチの解消のためには、技能の分析とそのための教育機関の準備が必要である。日本には技能を伽間的に分析するデータがそろっていない点は強調したい。Aについては、OECD諸国で重視されている点だが、日本においては看過される傾向のある論点である。実態解明を含め、もし問題があるならこれを是正する取り組みが重要である。

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(2) 総括としての自由討議

OECDによると、欧州や米国は、学卒後一旦就労した後に再度学業に就く割合が高い。欧米は、就職後いつでも学校に戻り、やり直したり転換したりすることが可能な社会である。
⇒米国では、卒業後就労により学費を貯蓄し、その後大学院で学ぶことが多いが、日本では学部や大学院に学びつつ就労も可能であるために大学に継続して在学する傾向がある。欧州では各国間で差異があり、ドイツは教育機関へ還流する割合が高水準であるが、フランスは低水準である。

企業が新卒者に求める資質の一つに「白地性」が挙げられるが、これは企業が長期雇用を前提とした雇用慣行を維持するため、特定分野の専門家よりも配置の柔軟性を可能とする変化対応能力の高い人材を求めているためと思われる。但し、こうした企業の方針も、大きな環境変化に適応できなかった人材に関しては、グループ企業への出向・転籍、さらには解雇となる場合もある。
日本には、幾度の非正規労働後の正規労働への転換に係るパネル調査が存在しない。政策対応や各大学が取り組むべき方策を一層現状に沿うものとするためにも、こうした全数調査の環境を整備し、傾向を十分に把握することが必要である。
職業教育において獲得した技能は、産業構造の変化や技術の進歩というような経済・社会の変容に伴い、陳腐化する可能性がある。また、人材の育成を企業や社会が重視せず教育機関のみに依存する社会では、企業が求める人材の形成・蓄積がなされず、若年者の雇用機会の縮小を招く。教育機関、企業ともに経済・社会の変容に適応する教育課程、人材育成策を設定して、人材の育成に注力することが重要である。

(以上)

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