| ◆報告 | : | 「若年雇用の変化が生活保護受給数に及ぼす影響」 |
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| 報告者 | : | 辻 明子 公益財団法人総合研究開発機構(NIRA)研究調査部主任研究員 |
| 報告資料[1.43mb,PDF] | ||
| ◆報告 | : | 「大学新卒者の就職実態と就職促進策」 |
| 報告者 | : | 伊藤 実 独立行政法人労働政策研究・研修機構特任研究員 |
| 報告資料[2.38mb,PDF] | ||
辻 明子 公益財団法人総合研究開発機構(NIRA)研究調査部主任研究員
| ・ | 若年層(25〜39歳)の男性の就労形態を見ると、1992年から2007年にかけて「正規の職員・従業者」の割合が低下し、「正規以外」の有業者と「無業者」なかでも家事や通学をしていない「その他無業者」の割合が上昇した。正規雇用者に比べ所得が低水準の場合が少なくない非正規雇用者は、社会保険料を負担が困難な場合が多く、社会保険制度によって保護されにくい。また、不安定な雇用者は、現在の社会保険制度の下では、所得に占める社会保険料の負担割合が正規雇用者に比べ高くなるという現象が生じる。その結果、年金についても、保険料を支払うことができずに公的年金の受給資格を持たないため老後に生活保護の被受給者となった場合、高齢期を通じての受給額は1人当たり約2000万円にのぼると試算される。非正規雇用者や無業者が増加し、国民年金の未納者が増加すると、老後の生活が困窮する者が増え、将来の社会の負担が増す可能性がある。 |
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| ・ | 生活保護の受給者数は、現在、212万人と人口の1.67%を占め、また、世帯数で見ると155万世帯と過去最高水準にあり、ケア・ワーカー1人当たりの負担が増している。受給理由は、2009年以降、失業に因るものが急増している。 |
| ・ | 厚生労働省の試算によると、勤労者世帯のうち、所得が生活保護水準以下であって生活保護を受給している世帯の割合は13.1%であり、この外は所得が生活保護水準以下であるものの生活保護を受給していない世帯である。生活保護は直接的な再分配であるといえ、これを現役世代が受給することに対しては世論の理解が困難で、生活保護制度を利用し難い現状がある。受給要件を満たしつつも申請を行っていない者が相当程度存在していることが示唆され、生活保護受給者の今後一層の増加の可能性を秘めているといえる。最低賃金の水準の引き上げや、職業教育・訓練の拡充による相応な雇用機会の確保、失業手当というような、現状に見合う再配分の仕組みの再構築が求められている。 |
| ・ | 日本では、最低賃金と公的年金、社会扶助による収入額の相互の調整が行われていない。OECD加盟国の多くにおいて、最低賃金の労働による収入、公的年金の受給による収入、社会扶助の受給による収入の順で金額が低くなるよう設計されている国(社会扶助がもっとも低い)が多い。日本の現行の枠組みは、生活保護の受給と就労とを同時に行う場合、収入額に応じ生活保護受給額が控除されるという仕組みである点や、生活保護の受給が停止になる額の収入を得る場合、社会保険料や税金の支払いにより、手取りの収入額が生活保護受給額を下回るという仕組みである点などで、就労意欲が喚起され難い構造である。これらを解消する仕組みの設定が必要である。 |
伊藤 実 独立行政法人労働政策研究・研修機構特任研究員
| ・ | 若年者の就職が深刻化してきた背景には、若年者の人口が減少する中で大学生数が減少せず、大学進学率が50%以上に上昇していることが挙げられる。さらに、私立大学の学生は、選抜方法の多様化により約半数が推薦入試やAO入試、附属高等学校からの進学といった、一般入試外の方法で入学しており、これが大学生の学力低下の一因と思われる。OECDも学力調査("PISA"(Program for International Student Assessment))の結果から日本の学生の学力低下を指摘している。 |
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| ・ | 大学生は就職先として大企業を志向する傾向が強い。賃金や退職金等福利厚生を考慮すると大企業への就職を望むことは当然といえるが、大学進学率が高まる中で、大学生にとって大企業への就職が狭き門であることが、学生に伝わっていない。 |
| ・ | 文部科学省の学校基本調査によると、大学卒業者の22.9%に当たる約13万人が正規雇用の職に就けていない。特に、人文系、教育系でその割合が高くなっている。また、正規雇用の職に就いた場合であっても、教育・学習支援業、宿泊業、飲食・サービス業といった早期離職率が高く賃金が比較的低水準の業種へ就職する割合が高い。 |
| ・ | 企業が採用に際し選考基準として大学での成績を重視しないことが、学生の大学での学習意欲を削ぐ一因にもなっている。大学での成績を企業が重視しない背景には、学業不振の学生も卒業させてしまうといった大学教育の無責体制があり、卒業生の品質保証を厳格に行うことが、悪循環を断ち切る前提条件である。また、企業が採用選考で重視する「コミュニケーション能力」や「求める人材像」の具体的内容を明確にして、学生に伝えることも必要である。新設大学の中には就職に成功している事例がある。そうした大学に共通していえることは、教育内容を社会や企業が求めているものに適応させるように改革している。また、学力不足の学生を卒業させないことで、学生の「質」の保証を徹底している。 |
| ・ | 学生の求職と中小企業の求人とがミスマッチであるといわれて久しいが、学生と中小企業の双方に互いの情報が不足していることが問題である。地域の商工会議所や経済団体と大学が、連携することが必要である。例えば、合同企業説明会というような規模の大きなものを開催することよりも、各大学において地域の企業の説明会を開催することが有効である。 |
| ・ | 生活保護受給者に対する支援として、支給だけでなく、職業教育・訓練等就労意欲を喚起する就労のための仕組みが必要である。 |
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| ・ | 学力不足の学生は落第させるということを多くの大学で実施されない理由にはどのようなことが考えられるか。 |
| ・ | 近年、生活保護の受給件数が増加していることの事由は、医療扶助のための受給である。医療扶助に係る受給は約半数にのぼり、このうち約半数は入院で、その多くが精神疾患である。生活保護者に対する就職のための支援を強化しても、こうした者を就労へ結び付けることは容易ではない。 |
| ・ | 幾つかの地域において、最低賃金の額が生活保護の支給額を下回るという課題がなかなか解消しない。 |
| ・ | 生活保護受給の捕捉率を低水準にとどめている地域も存在する。生活保護を受給する者は、「就労能力の低水準である者、或いはない者である」と見做されること、また、申請者に対し安易に受給を認定しない「水際作戦」を強化している地域であることが推察される。 |
| ・ | 他国に見られるように、失業期間が長期にわたる失業者に対しては、給付に対し例えばボランティアを行うことや職業教育・訓練を受けることを課すというような仕組みを導入することは有効か。 |
| ・ | 就職支援を一人ひとり個別に行う、1対1で支援するサービスを導入することは有効か。 |
(以上)