| ◆報告 | : | 「企業の新卒採用志向の現況と背景にあるメカニズム」 |
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| 報告者 | : | 近藤 絢子 法政大学経済学部准教授 |
| 報告資料[475kb,PDF] | ||
| ◆報告 | : | 「在学中・学卒後のインターンシップ体験で期待すべき効果と望ましい枠組みのあり方 〜「気づき」から「エンプロイヤビリティ」の醸成に向けて」 |
| 報告者 | : | 田中 宣秀 日本インターンシップ学会常任理事/電気通信大学特任講師 |
| 報告資料[465kb,PDF] | ||
近藤 絢子 法政大学経済学部准教授
| ・ | 大学生・大学院生の求人倍率を企業規模別(従業員数別)にみると、従業員数が相対的に小規模な企業ほど求人倍率が高い傾向がある。こうした企業規模による求人倍率の差異は平成22年3月時点以降縮小しつつあるものの、新規学卒者が依然として求職先として大企業を選好する傾向は続いている。大企業における勤労条件や福利厚生といった労働環境が、中小企業のそれに比し充実していることが事実であれば、学生が、より恵まれた労働環境で働きたいと考え、こうした労働環境を有していると見做すことのできる大企業に求職が集中することは当然であろう。また、学卒後に初めて就く職業(初職)がその後のキャリア形成に大きな影響を与える、所謂「履歴効果」が昨今広範に認知されるようになり、「新卒時の失敗が挽回できない」といった「思い込み」が、学生の、学卒時の職の獲得を強く望む傾向を後押ししていることも起因していると考えられる。 |
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| ・ | 大企業の採用は依然として新卒者に限定されていることが多く、「雇用動向調査」によると、新卒者に占める大企業への就職割合は上昇傾向にある。一方、転職をみると、勤務元よりも企業規模の大きな企業へ転職する割合は低下傾向にあり、小規模な企業へ転職する割合は上昇傾向にある。大規模企業への転職は容易ではないことが窺える。 |
| ・ | 大企業が新卒者の採用を重視する要因として考えられることは、新卒採用が中途採用に比し不確実性が少なく、優秀な人材の確保が容易であると企業が考えていることが挙げられる。例えば、特定の大学から毎年一定数の学生が応募する企業においては、これまでの選考の経験から、当該大学の学生の能力の把握(「スクリーニング」)のための費用を抑制することが可能であろう。また、こうした企業の「スクリーニング」は、選考実績の蓄積から高い精度を持っていると推察される。一方、採用を毎年実施しないような相対的に小規模な企業にはこうした実績の蓄積がなく、新卒採用を実施することで恩恵を受けるとは限らないといえる。こうしたメカニズムが働いているのであれば、大企業にとり、新卒者の採用を重視することは合理的であるといえる。以上を加味すると、既卒者の採用を企業に慫慂する対応策もその効果は限定的であるといえ、既卒者の採用を拡充するためには、既卒者から生産性の高い者を「スクリーニング」する費用を抑制するような対応策が有効である。 |
| ・ | 相対的に小規模な企業は採用者を募る費用負担が比較的大きく、他方、既卒者は卒業した大学の就職支援のための部署(「キャリア・センター」等)の利用が少ない。既卒者への採用に比較的積極的な地域の中小企業と既卒者は情報が不足している可能性もある。情報入手の手段の拡充により、募集と応募を結びつける「ミスマッチ」を解消することが必要である。 |
田中宣秀 日本インターンシップ学会常任理事/電気通信大学特任講師
| ・ | 現下、インターンシップは約7割の大学で導入されているものの、これを経験する学生の数は8%にとどまっている。また、インターンシップを受け入れる企業は理系の学生を歓迎する傾向にあることから、インターンシップ経験は文系の学生にとって「狭き門」となっている。 |
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| ・ | また、「高い職業意識」、「実践的な人材」への育成といったインターンシップの目的が、インターンシップ後も学生に十分に醸成されていない場合が少なくない。教育課程にインターンシップを組み込む大学は増加基調にあるものの、学部・学科の理念と整合的かどうかは疑わしく、こうした目的よりもインターンシップの経験、それ自体に満足している大学も多く、企業の有能な人材の確保という意識と大学の意識には乖離が存在する。 |
| ・ | インターンシップの効果はこれまで学生に「気づいてもらうこと」が中心であったが、今後は、学生の働く意欲を喚起することで具体的な職業の選択を可能とさせるよう、学生と職とを現実に結び付けることが必要である。インターンシップ前後での指導の一層の充実も含め、長期のインターンシップの枠組みを構築することが必要であると考える。即ち、「社会や職業を知る」というような学生の「気づき」のためのインターンシップ課程は大学1年・2年で修了し、大学3年・4年の段階では、職の獲得のための「雇用可能性(エンプロイヤビリティ)」を高めるインターンシップ課程の実施が望ましい。 |
| ・ | 更に、既卒の若年無業者・若年失業者に対する就職支援としては、こうした者に地域の支援体制(地域の「サポート・センター」、NPO法人等)の一層の活用を促す取り組みと、彼らに働くことの意義や自覚、意欲を醸成させる具体的な教育課程の枠組みの策定が不可欠である。 |
| ・ | 政府が目指す「学卒後3年以内の新卒扱いの標準化」の実現と、就職後3年以内に離職した若年者も新たな職を獲得できるよう、新卒時に就職の叶わなかった者への理解や離職事由の吟味といった企業意識の一層の変容も望まれる。 |
| ・ | 近年、例えば、大企業への就職を希望していた学生が、大学の最終年次に大企業への就職に失敗すると、中小企業への就職の可能性を残したまま留年し、翌年、再度、新卒者として就職活動をするという傾向が増えてきている。これは諸外国と比較しても珍しい事象である。これは、大企業の新卒採用志向を背景として、就職活動が学卒前の、求職者が学生である時期に行われることに起因している。 |
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| ・ | 概して、企業は、留年については余り悪い印象を持たないが、学卒後に定職に就かずにいた期間、所謂「空白期間」がある者や、短期間で前職を辞した者に対しては好印象を持たず、こうした者を採用しない傾向にある。こうした意識を変えることは容易ではない。 |
| ・ | 景気循環が既卒者の採用を創出する面もある。即ち、景気軟調期に新卒者の採用を減じた企業がその2、3年後に人材の不足分を補うために採用を増加させる場合がある。こうした所謂「第二新卒」の採用には既卒者が多く含まれる。景気循環が企業の中途採用意欲を喚起させ、既卒者の採用市場を創出する場合がある。 |
| ・ | アメリカでは学生が給料を貰いながら働くこと(「サマー・インターンシップ」等)が普及している。一方、日本ではインターンシップが8%の学生しか経験していない。要因は何か。 |
| ・ | 既卒者の就職のためには景気変動があることの方が景気の安定よりも好ましいのか。 |
| ・ | インターンシップは、学生の「気づき」や就業力の醸成といった目的の他、学生の求職と中小企業の採用との適合を促す、就労の試行(「トライアル雇用」)の機会を創造するものであるといえる。この機会の一層の充実が必要である。 |
(以上)