財務総合政策研究所

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若年者の雇用の実態と効果的な対応策に関する研究会
第2回会合
2012年11月27日(火) 9:45〜12:00
於: 財務省4階 西456「第1会議室」

第2回会合

◆報告 「分厚い中間層の形成と若年者の雇用」
報告者 北村 行伸   一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センター教授/
                 財務省財務総合政策研究所特別研究官
報告資料[1.14mb,PDF]
     
◆報告 「学卒後不安定就業の社会的コストとセーフティ・ネット」
報告者 酒井 正   国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部第2室長
報告資料[1.33mb,PDF]
     

議事要旨

(1) 報告「分厚い中間層の形成と若年者の雇用」

北村 行伸 一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センター教授/

財務省財務総合政策研究所特別研究官

結婚や出産、住宅の購入というような人生における支出と収入に関わる人生の経路は、近年、多様化してきており、これまで標準とされてきた人生に当てはまらない人が増加してきている。また、分厚い中間層から富裕層と貧困層への二極化が進んでいるといわれるが、「家計調査」のデータからはそのような事実は確認できない。二極化とは、上位1%の高所得者と、これ以外の99%の所得者といった二極化であり、多数を占める後者では所得分布は変化していない。
所得の水準は、「Royモデル」で導出されているように、若年時に低水準で、40歳代頃に中間層となり、高年齢になると高水準となり、こうした年功序列的な所得額の趨勢を前提に税制や社会保障制度は設計されている。しかしながら、全ての人が平均的な人生経路を辿るわけではなく、生活や家族構成が多様化していることから、平均化した人生経路に基づく制度の構築には限界がある。特に、正規雇用者の所得は50歳代後半でピークに達する一方、非正規雇用者の所得は生涯を通じて変化せず低水準で推移し、非正規雇用を続ける者は貧困層にとどまり続ける可能性が高い。「逆正弦法則」にみられるように、学卒時の学業から就業への移行時に正規雇用が叶わずに貧困層に属した者が、その後貧困層から脱け出すことは困難であり、さらに学歴の差異が加われば、貧困層から脱け出すことは一層困難となる。
正規雇用者と非正規雇用者の生涯所得は4倍程度の差異が生じており、非正規雇用者の未婚率や親との同居割合が上昇している。
1990年代、企業は業況が悪化した際の解雇を柔軟化するべく、非正規雇用者の雇用に積極的であった。しかしながら、その結果として需要が創出されない事態を生み、また長期的な人生設計を構築できない者の増加を招いた。現在、複合的に様々な社会問題が惹起している。貧困層からの脱却と世代間で貧困が継続しないような制度設計が求められる。

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(2) 報告「学卒後不安定就業の社会的コストとセーフティ・ネット」

酒井正  国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部第2室長

日本では学卒時の学業から就業への移行時に初めて就く職業(初職)で正規雇用職に就けないと、その後少なくとも10年間程度は不安定就業を余議なくされることが種々の研究から示唆されている。初職時の不安定な就業の影響が長く続く所謂「履歴効果」を弱める施策と、学校から職場への円滑な移行のための施策とをバランスよく考えることが必要である。
不況期の大学卒業者の大学院進学率は若干上昇する傾向にある。これは不安定な初職がその後の人生に影響を与えることを回避するためにとられる行動であるといえる。
初期の就業状態が不安定なものであるとその後の家族形成(結婚・出産)が遅れるという研究もあるが、その影響の大きさを巡ってははっきりとした結論が出ていない。一方で晩婚化や非婚化が経済へもたらす影響については、晩婚化・非婚化によって女性の正規就業率が高められて来たという側面もあることに留意する必要がある。
若年者の不安定就業は、セーフティ・ネットがうまく機能していれば大きな問題とはならないが、現行の社会保障制度の下では非正規雇用者はセーフティ・ネットの対象から外れる場合が少なくない。
国民年金、国民健康保険はかつては被用者以外の者のための制度であったが、現在では4割近くが被用者であり、特に国民健康保険に加入する若年者はその大半が被用者である。保険料の未納の原因は、制度に対する不信等のいわゆる「逆選択」によるものというよりはむしろ、支払余力がないことであり、未納率の推移は失業率とほぼ同じ動きを示す。つまり、非正規雇用や無職である者が増えて来たことで、社会保険制度から外れる者が増えている可能性が垣間見える。
若年時に社会保障制度から漏れ落ちることで、そのことを通じて、その者の将来の経済状態が不利になるという側面がある。
雇用保険は被保険者という意味ではだいぶ非正規雇用者を捕捉していると言えるが、一方で失業者に占める受給者の割合はほぼ一貫して低下しており、特に若年の男性で低い傾向が観察される。この原因としては長期失業者の増加に加え、短期被用者等の受給要件を満たしていない失業者の増加が考えられる。

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(3) 自由討議

賃金を時間給で男女別にみると、女性では下位10、20%が相対的に押し上げられている一方、男性では下位10、20%が押し下げられており、男性は賃金の差異が拡大している。これは、年齢や学歴に因るものではなく、職種や職能が影響している。

「履歴効果」について、企業内の人事管理を考えると、同種労働を行う者の間では中途入社社員が新卒入社社員を賃金や待遇面で超えることは考え難い。「履歴効果」が完全に払拭されることは不可能ではないか。
⇒例えばアメリカのように移民が多い社会では、卒業した学校や人格等による差異は判別しにくいこともあり、採用は即戦力を基準として判断される。こうした社会においては例え失業のリスクを抱えても即戦力で勝負したいと考える者が増えることも考え得る。日本においても、外国人労働者の採用が増えれば「履歴効果」が翻る可能性はある。しかしながら、現状では、多くの日本人は「履歴効果」があることを前提に人生設計を立てている。
⇒一旦正規雇用者として採用されれば退職しない限り正規雇用を続けることができるが、日本では、一旦非正規雇用者として採用されると、その後、転職をしたとしても正規雇用への転換が叶う者は比較的少なく、日本における「履歴効果」は強いといえる。「履歴効果」をゼロにすることは考え難い。

「履歴効果」は理系・文系、技術職・事務職といった違いによって変わる。
⇒男性の就業者のうち一定程度の割合は、正規雇用だけで転職をしている。例えば、高い専門性をもった技術者等は、比較的容易に正規雇用としての転職が叶っているのかもしれない。

新卒入社社員を唯一追い越すことができる中途入社者はいわゆるベンチャービジネス等から転職してきた者が多い。 
若年者の労働力が余剰であるにも関わらず中小企業の採用がそれほど増えない理由は、若年者に職業観や仕事に対する熱意が欠けていること、また解雇規制が厳しいことが考えられる。 
足下、雇用が伸びている業種は、比較的低賃金である飲食業や介護産業などのサービス業である。こうした業種は、元来、低賃金であることから離職率が高く、良質な雇用機会とは言い難い。それにもかかわらず、雇用が伸びていることは構造的な問題である。 

(以上)

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