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国際的な資金フローに関する研究会
第6回会合
2012年1月26日(木) 14:00〜16:15
於: 財務省4階 西456「第1会議室」
第6回
| ◆テーマ | : | 「国際金融の諸問題 中央銀行の視点」 |
| 発表者 | : | 渡邉 賢一郎 日本銀行国際局審議役 |
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| ◆テーマ | : | 「今後のマクロ・プルーデンス政策のあり方について」 |
| 発表者 | : | 祝迫 得夫 一橋大学経済研究所教授 |
| | 発表資料[284kb,PDF] |
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議事要旨
(1) 発表 「国際金融の諸問題 中央銀行の視点」
渡邉 賢一郎 日本銀行国際局審議役
| 【国際金融危機を巡る構図と中央銀行の役割】 |
| ○ | 国際金融危機への対応のなかで中央銀行への依存が高まっており、主要中央銀行のバランスシートは一貫して拡大している。その背後には、金融危機とそれに伴うデレバレッジの過程で伝統的な金融政策の有効性が低下したという共通の問題がある。 |
| ○ | 中央銀行への依存の高まりに関し、国内的側面としては、金融危機がもたらす強いデフレ効果がゼロ金利制約につながっている状況の下で各国中央銀行がどこまで非伝統的な金融政策に踏み込んでいくべきかという論点、国際的側面としては、各国中央銀行が協調して国際的流動性(とりわけドル)の安定供給をどのように図るかという論点が重要である。 |
| 【欧州ソブリン問題とECBの対応】 |
| ○ | 拡大するユーロ域内の不均衡(インバランス)のファイナンスにおいて欧州中央銀行(ECB)は重要な役割を果たしている。ECBが無制限オペによりギリシャなどの周縁国に資金供給を行っている結果、ユーロ決済システムを通じて、黒字国であるドイツのブンデスバンクにはユーロシステムに対する債権が、赤字国であるギリシャなどの中央銀行にはユーロシステムに対する債務が積み上がっている。 |
| ○ | 一部の識者は、ユーロシステムを通じた資金移転が低い政策金利で行われていることを捉えて実質的な財政移転であると批判しているが、周縁国の金融機関の資金調達能力が回復してこないとECBへのオペ依存を減らすことは難しい。 |
| ○ | ECBは、12月8日に、@政策金利引下げ、A3年物オペの導入、B担保要件の緩和、C預金準備率の引下げを決め、中央銀行として最大限のことを実施した。3年物オペはセーフティ・クッションの機能を果たしているが、ECBの資産サイドのマチュリティは大幅に伸び、ECBは流動性管理において前例のないチャレンジに直面している。 |
| 【国際流動性危機回避に向けた対応】 |
| ○ | 世界的に米ドル調達市場が不安定になったため、主要国の中央銀行は協調して米ドル資金の供給オペレーションを実施する体制を整えている。 |
| ○ | 米ドル資金供給オペに関しては、欧州では、経営状態が悪いと見られることを恐れて(stigma)、以前は応札がほとんどなかったが、中央銀行の協調によりオペ金利が引き下げられたこともあり調達額は増加している。なお、欧州においては、このオペを通じたドル資金の調達コストは市中でスワップを通じて調達するコストより低く、裁定取引によってリスクなく利益を上げることができる状態にある。 |
| ○ | 欧州の銀行のクロスボーダー貸出のシェアは高く、デレバレッジの動きがアジア新興国に与える影響には注意が必要である。ただ、欧州の銀行にとってのアジアの戦略的重要性に加え、他地域の銀行による与信の肩代わりなどもあり、アジア企業の資金調達制約は目下のところ限定的であると見られる。 |
| 【世界的な安全資産の超過需要】 |
| ○ | 数次にわたる国際金融危機を経て、流動性が高く、容易に換金可能な安全資産の保有需要が増加する傾向にある。一方、安全資産の供給は、欧州危機により広範囲の国債がリスク資産化してしまったため減少している。 |
| ○ | 安全資産への超過需要は、安全資産の価格を過剰に押し上げている可能性があり、、金融機関のリスク管理上注意を要する問題である。 |
| ○ | 一般的に、市場参加者のリスク回避志向が強まると、有担保取引を指向する動きが強まるが、一方で優良担保の供給も減っているため有担保取引市場自体も縮小する傾向にある。担保資産の量が減少し、その回転数(受け入れた担保をさらに別の取引の担保に利用する回数)も低下すれば銀行の信用仲介機能にも影響が生じる。こうしたなか、特に、クロスボーダーの金融取引については、有担保取引にかかるインフラ整備を一段と進めていく余地がある。 |
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(2) 質疑応答・自由討議
| ○ | ECBの損失はユーロ圏各国の出資割合に応じて負担することになる。したがって、ECBがどこまでバランスシートを拡大できるかは、各国の財政当局の損失負担限度が一つの制約となる。ECBの損失が各国の財政負担になることが意識されるような状況になれば、ECBがどこまでリスクを許容できるかという議論も出てこよう。 |
| ○ | 安全資産への超過需要が増加して中央銀行の超過準備に対する需要が強まれば、金融緩和をしても資金が超過準備という形で退蔵され実態経済に回らなくなる。安全資産の超過需要が増えれば増えるほど金融政策のトランスミッション・チャネルが弱まりデフレ対策が難しくなる。 |
| ○ | ECBが実施している担保としての貸出債権の受入れは、中央銀行では例外的な措置だが、貸出債権の格付けシステムが整備され、流動性も大きくなれば一般的になる可能性はある。 |
| ○ | 国際的なマクロ・プルーデンス政策は未だ確立されたものではないが、バーゼルVの所要自己資本のうちプロ・シクリカリティ(景気循環増幅効果)を緩和させるバッファーの導入や流動性規制の充実などはその範疇に入る措置である。 |
| ○ | 欧州の危機は、金融市場を安定化させるために財政資金を投入すると財政がさらに悪化し、それがさらに金融危機につながるというこれまでにない構図となっている。ユーロ圏におけるソブリン危機が収まらない限り金融市場が安定しない状況において、中央銀行がどこまで関わっていくかについては、今までと違う次元の議論が必要である。 |
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(3) 発表 「今後のマクロ・プルーデンス政策のあり方について」
祝迫 得夫 一橋大学経済研究所教授
| 【マクロ・プルーデンス規制:一般論】 |
| ○ | 景気変動などに応じて銀行システムによる信用創造は循環的に動き、その循環的な動きが過剰になるとバブルの生成や崩壊が起こる。リスク・アピタイトも循環的に動き、循環的な動きを増幅することから、銀行部門におけるリスク・テイキングの循環的な変動を抑制する必要があるとの議論が出てくる。原理的には簡単なようだが、それを実際の政策運営に持っていくのは容易ではない。 |
| ○ | 反循環的(counter cyclical)な政策については、それを金融政策でやるのか、規制でやるのかという問題がある。また、何に対して反循環的な政策を行うのか、どうやって景気循環を測るのかという問題もある。景気や金融市場が過熱しているのかの判断は容易ではない。Fedは、リーマン・ショック前、そうした判断は不可能であり、危機が発生したら対処するという新自由主義的な考え方を取っていた。 |
| ○ | 中央銀行は、リーマン・ショック前には、インフレと景気のトレードオフをどう考えるかが重要であったが、リーマン・ショック後には、インフレ、景気、バブルのトリレンマの問題に直面することとなった。保守的な金融政策の採用は一つの解答だが、一番の問題は金融緩和とバブル発生の因果関係が明らかでないということである。また、バブルとインフレの関係も経済学的には必ずしも明らかではない。 |
| ○ | マクロ・プルーデンス政策については、誰が遂行するのか、どのように責任を持つのかという問題があり、政治経済学的な困難が大きい。中央銀行がマクロ・プルーデンス政策を行うこととする場合、必然的にアカウンタビリティや結果責任が問われることになり、マクロ・プルーデンス政策に責任を持つことで金融政策の独立性が維持できなくなる可能性がある。 |
| 【マクロ・プルーデンス規制:より現実的な議論】 |
| ○ | 日本の国債を巡っては、経常収支が黒字であり、家計及び企業の貯蓄で財政赤字が補える限り、価格暴落などの目に見える危機は生じないだろう。経常収支は暫らく黒字が続くと見られるが、いずれ高齢化などにより海外に国債の資金調達を依存せざるを得ない状況となり、財政危機が生じる恐れはある。 |
| ○ | 国内における国債の最大の保有者は金融機関だが、メガバンクや比較的大手の地方銀行などは相対的に国債の保有割合を下げており、金利上昇リスクは高くない。これに対し、中小金融機関などは国債の保有割合を上げており、金利上昇リスクに対して脆弱になっている可能性がある。 |
| ○ | 多くの国債を保有する中小金融機関などは金利上昇リスクを認識しつつも十分な対策を講じていないと見られる。その背景としては、横並び構造や投資すべき資産がないことのほか、意思決定の先送りなどが指摘できる。国債については5年程度先までに問題は起こりそうにないが、20年先までには問題が生じているだろう。ただ、どの時点で問題が発生するか分からないため国債市場には切迫感がない。 |
| ○ | マクロ金融・財政政策でできることは限られているが、国債の金利上昇がもたらすシステミック・リスクに関して、量的分析・予測を徹底的に突き詰め、関係当局の共通認識を深めておく必要がある。 |
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(4) 質疑応答・自由討議
| ○ | 金融市場の安定や金融システムの安定といったプルーデンス上の目的と物価安定という2つの目的を金利政策という1つの政策手段で達成できる状況にあれば問題は生じないが、常にそうであるとは限らない。これが、中央銀行がマクロプルーデンス政策を担う場合の大きな論点となる。 |
| ○ | 日本や米国におけるバブルの経験を踏まえれば、理論的に適切なマクロ・プルーデンスのルールを作ったとしても、国民の意識やそれを背景とした政治によって適切にコントロールされなければ機能しない。 |
| ○ | リーマン・ショックを頂点とする第1段階の危機に続くギリシャ危機に始まる第2段階の危機で問題になるのはミクロ・プルーデンスであって、これからはどの銀行が危ないかなどを見きわめることが重要であり、マクロ・プルーデンスの議論は下火になっていくのではないか。 |
| ○ | ミクロ・プルーデンスを既存の金融規制を適切に執行できるかという意味で定義するならミクロ・プルーデンスも役に立たない。既存の金融規制ではなく、そもそもバブルを起さないようなもの、起しても小さなバブルで済むようなものに規制を変えていかなければならない。 |
| ○ | 日本の国債を巡る問題は、借り手が集中しているためリスク分散ができておらず、単一の借り手の問題が経済全体に波及する恐れがあることである。いかに資金の需要サイドを分散化させるかは、どのように経済成長ができるような構造をつくるかにかかっている。分散された民間の資金需要が強まっていくシナリオを考える以外に問題解決の方法はない。 |
| ○ | 日本の国債は今安定しているから将来も安全だと言うことは理論的にはあり得ない。国内の貯蓄が増えることはないが、国債は増えることしか期待できず、パニックが起こらなくてもバランスの崩れが進行していることには留意すべきである。 |
(以上)
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