財務総合政策研究所

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グローバル化に対応した人材の育成・活用に関する研究会
―諸外国の事例及び我が国への示唆―
第1回会合
2011年10月6日(木) 13:10〜15:30
於: 財務省4階 西456「第1会議室」

議事要旨
◆発表 「グローバル人材の育成―製造業を中心とした基盤整備について―」
発表者 八幡成美   法政大学大学院経営学研究科キャリアデザイン学専攻教授
発表資料[239kb,PDF]
     
◆発表 「グローバル化に対応した人材育成の取り組みとその社会的背景―韓国」
発表者 有田伸   東京大学社会科学研究所准教授
発表資料[252kb,PDF]
     

議事要旨

(1) 発表 「グローバル人材の育成―製造業を中心とした基盤整備について―」

八幡成美 法政大学大学院経営学研究科キャリアデザイン学専攻教授

日本の強みは漸進的な技術革新と高度な生産技術を持つ製造業に見てとれる。基礎研究から新製品へとスムーズにつながる背景には、技術者に加えて、現場の作業者、監督者、営業担当者等の人材が開発の早期の段階から連携・協力していることがある。これは企業間においても十分な擦り合わせが行われるなど緊密な連携、協力関係が構築されている。
経営層、生産技術者、現場監督者、高度熟練技能者という分類で、グローバル人材としての育成・活用を考察すると、経営層については、英語力の他に交渉力・事業創造力というような能力が求められ、プロジェクトをマネージメントできる能力の醸成が必要である。生産技術者については、海外生産が拡大する中で、国際的な経験を積むことを通じ、現地の文化の理解と需要の把握ができるような職業倫理観を備えた技術者になることが重要である。現場監督者については、海外において工場を立ち上げる際、現地人材を如何に指導・育成できるかどうかが問題だが、この面ではうまく機能してきた。

高度熟練技能者は国際競争力の源泉であり、意識的に時間をかけて育成する必要がある。

諸外国の事例を見ると、米国では企業活動を国際的に行っている企業が多く、リスクへの対応という点で学ぶべき点が多い。また、米国では産官学の連携が進んでいる。企業の学会への参加や、州政府の主導により学会の場でも新規施策についての紹介等も頻繁に行われている。産業界と学会の関係の緊密化は双方にとり人材の育成に寄与している。
米国では「コミュニティ・カレッジ」を中心に2年制の職業教育訓練が実施されているが、非自発的失業者や若年失業者の縮減のための職業訓練も「コミュニティ・カレッジ」内のコースで実施されている。米国ジョージア州では労働者の能力評価のテスト(「レディネス・テスト」)が存在し、企業はこれを採用・選考時に活用している。また、州政府は、同州へ進出して来る企業に対し、税制面で優遇することに加え、実践的な技術の習得に重点を置く「テクニカル・カレッジ」での訓練(「オーダー・メイド訓練」)を提供し、企業による社員教育を支援している。非正規雇用者として採用され、1〜3年間働いた後で、正規社員に採用されることが一般的だが、就職後も更に「テクニカル・カレッジ」において短期コース等の職業教育を受け資格を取得する例が多い。こうした枠組みは、失業者や高齢者に対する職業教育訓練の基盤整備として示唆に富むものと思われる。

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(2) 発表 「グローバル化に対応した人材育成の取り組みとその社会的背景―韓国」

有田伸 東京大学社会科学研究所准教授

韓国では、1995年の「5.31教育改革方案」を基に教育改革が実施され、韓国における人材育成の指針となっている。当該方案では、学校教育において、情報化、グローバル化に対応した人材育成と教育の質の向上が図られている。例えば、初等教育において英語教育が1997年度から必修化され、大学教育においても英語による授業が拡充している。また、企業も、学生の採用選考の際、英語の他、学業成績、出身大学を判断基準の中核としている。日本での人柄重視の採用基準とは異なる。
韓国の学校教育における特徴として英才教育も挙げられる。1970年前後から過熱した受験競争の緩和と教育機会の均等を通じた不平等の解消を目的として、中学校及び高等学校の無試験による入学制度が設けられ、教育機会の平準化が目指された。しかし、産業構造の複雑化、技術の高度化に伴い、「技術立国」を主導する人材の育成の必要性が増大し、「平準化」のための枠組みは残しつつ、一部の優秀な人材に対し徹底したエリート教育を実施するようになった。
韓国がグローバル化に対応した人材育成に積極的に取り組む背景には、通貨危機や国内企業の外国資本への売却等による企業活動の国際市場への展開の必要性の増大から、外的に評価される知識・技能の習得が活発に行われるようになったことがある。

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(3) 自由討議

日本の強みである製造業の人材はどのように育成されたのか。また、米国ジョージア州における「オーダー・メイド訓練」は日本企業も活用しているか。

→  海外の現場で中核となる人材は、製造業に限らず、長期雇用を前提とするなどの日本型の慣行の枠組みの下、中長期的視点で育成される必要がある。こうした人材は、海外においても同様な慣行により育成されている。 

ジョージア州の「オーダー・メイド訓練」の制度では、企業が育成を望む人材の知識、技能を「テクニカル・カレッジ」が特別にコースを設定して専門的な職業教育訓練が行われている。日本企業も活用している事例があるが、中核となる人材はやはり日本型の慣行の枠組みの下で育成されているように見受けられる。

「テクニカル・カレッジ」における施策の日本に対する示唆とは、職場実習の重視と、企業のニーズに柔軟に対応する公共訓練を実施するという点にあるのか。

→  高等学校卒業後、就職する者に対し、職業教育訓練を充実させるという点にある。産業界と行政府との連携が進むことで、こうした措置が拡充していくと考える。

米国南部のジョージア州の例は米国全体としての生産現場における人材育成として一般化できるのか、南部と北部とを比較してどうか。

→  南部は相対的に大学間でのネットワークが伝統的に形成されており、産業界とのつながりが深いようであるが、これが米国全体の状態として一般化できるか否かの判断は容易にできない。

韓国は外国に留学する学生の数が非常に増加しているが、頭脳流出の問題、及び低学力者や外国へ留学しない学生との格差の拡大という問題はないのか。

→  韓国では、学位の海外での取得を選好する傾向が強い。これは、背景に就職において留学生に有利な場合があることが挙げられる。韓国から米国に留学した学生が米国で就職するケースは増えてきている。 

格差については、英語学習に係る環境整備は進められているものの深刻な問題となっている。

韓国では英才教育に今後も力を入れていくのか。また、通貨危機後に転職が活発化しているが、政府は外部労働市場を整備するために、積極的な政策措置を行っているのか。

→  国家的な経済力上昇のため、英才教育に注力すべきという社会意識を反映し、英才教育は拡充しつつある。

一方、通貨危機後、非自発的失業は増加している。通貨危機直後の時期を除き、雇用をさらに流動化させるための具体的政策措置は行われていないようである。

日本の採用慣行の主流である新卒一括というような採用が、グローバリゼーションが進む中でも韓国では行われているか。

→  新卒一括採用は依然行われている。但し、米国でよく見られるインターン制度や職種別採用も増えてきている。

(以上)

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