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新  聞  発  表

平成14年6月27日


「都道府県の経済活性化における政府の役割」研究報告書の概要
−生産効率・雇用創出からの考察−


.問題意識と目的

 わが国では従来、地域経済において政府は大きな役割を演じてきた。社会資本を充実させることによって、政府は生産効率を高め、地域間格差を縮小しようとしてきた。あるいは景気後退期には、公共事業の拡大により、失業の増大を防止してきた。はたして、これらの役割は、都道府県別に見た場合、どのように違っていたのか。そしてそれはバブル崩壊後、どのように変化したのか。
 国および地方の財政が悪化する中、もはや財政支出に頼った地域活性化策には限界が生じている。すでに多くの都道府県において、政労使が一体となり、それぞれの地域に適した独自の雇用戦略を構築しようとする動きが強まっている。具体的、かつ有効な雇用創出策を講じるには、何よりもまず、地域経済の現状を把握し、そこにおける問題点を見出す必要がある。
 本報告書では、その第1歩として、それぞれの都道府県において、財政支出が地域の産業競争力や雇用創出に果たしてきた役割を検討する。社会資本の充実が生産効率の向上に果たしてきた効果は都道府県によりどのように異なるのか、さらに政府の直接雇用や公共事業、社会保険給付により創り出された雇用は都道府県によりどのように異なるのか。地域の雇用に対して政府が果たしてきた役割とその問題点について、計量経済学的アプローチにより検討を加えた。
 また、本報告書の特徴の1つは、都道府県別に行った大規模な推計作業にある。[1]産業別の全要素生産性(TFP)、[2]都道府県毎に産業区分を統一した産業連関表による雇用への波及効果などを、全て個別都道府県の視点から実施している。これらの内容について、都道府県間・日本全体との比較を可能とした点は、過去にない研究と位置付けられる。

 

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.都道府県別にみる全要素生産性(TFP)分析<供給面からの分析>

[1]硬直的な産業構造が、都道府県全体のTFP成長を阻害している(【図1,2】参照)


 個別産業の都道府県間TFP格差は、長期的に収斂する傾向にある1975年〜98年)。これは、個別企業の努力により新製品・新技術は生産効率の高い地域で開発され、それが生産効率の低い地域に伝播され広がることによる。一方で、産業合計で見た各都道府県のTFPは必ずしも収斂していない


【図1】

 産業合計のTFP格差が収斂しない1つの要因は、産業構造が硬直的なことである。すなわち個別産業、個別企業においては生産効率の改善が図られ、TFPの低い県でも高い県にキャッチアップしていく傾向にあるが、産業構造が硬直的であると、生産性の高い産業のウエイトが高まっていかない。TFPの低い県の生産効率を引き上げるためには、労働資源や資本資源がもっと柔軟に移動できるように諸制度を変え、産業構造の転換を図っていく必要がある


【図2】


[2]経済のサービス化が進展し、公共事業による地域格差是正は困難に(【図3】参照)

 社会資本の拡充が各都道府県の生産効率(TFP)向上に与えた影響は、都市圏が大きく、北海道、東北、四国といった地方圏で小さい。また長期時系列(1975年〜98年)にその推移を見ると、75年当時社会資本の充実は生産効率の向上に大きく寄与していたが、近年この効果は縮小し、98年には半減するまでになった。社会資本が未整備の時代であれば、わずかでも公共事業が追加されることにより、地域の生産効率は上昇したが、社会資本が整備されてくると、その効果は薄れてくる。
 また製造業中心の産業構造であれば、社会資本の充実は生産効率の向上をもたらすが、サービス産業化が進展してくると、その効果は薄れる可能性がある。需要のあるところで生産せざるを得ないサービス業では、消費者のニーズに適したサービスの提供こそが重要であり、社会資本の充実により、都道府県間の生産効率の格差を縮小するには限界がある


【図3】

.都道府県別にみる政府の雇用創出効果<需要面からの分析>

[1]地方圏で高い雇用の政府依存度、90年代に格差がさらに拡大(【図4,5】参照)

 政府の直接雇用にあたる公務員数の変遷と、公共事業による建設雇用や年金給付・失業保険給付による消費需要の拡大がもたらす雇用への波及効果の推移について、都道府県別の産業連関表を用いて県内総就業者数に占める比率(政府活動による雇用者比率)を分析した。


【図4】

 その結果をまとめると、90年代前半には公共事業費が増額され、これによる雇用創出効果は全国的に拡大したが、95年以降では、全体の公共事業費は抑制されたのに対して、地方では依然として高水準の公共事業費が継続し、雇用面でも地方の政府依存度が上昇し、地域間格差が拡大していることが確認された。


【図5】


[2]地元経済への雇用創出効果は、公共事業などの政府支出関連が大きい(【図6】参照)

 地元への雇用創出効果は、公共投資(公共事業)が他県に漏出する雇用が少ない分、政府消費(公務員採用)と並んで大きい。民間消費や民間投資の雇用創出効果は、公共事業に比べ、日本全体でみるとほとんど差がないが、他県に漏出する雇用が多く、地元の雇用創出効果は小さい。従って、地元経済にとっては公共事業費の拡大を希望する声が強まることになる。


【図6】

.今後の課題(まとめ)

 供給面では、90年代に入り社会資本の各都道府県における生産効率向上の効果が薄れてきていることが見出された。さらに需要面では、90年代後半になると、都市圏の公共事業費は削減されている一方、地方圏では依然として高水準にあり、地方圏の雇用の政府依存度は90年当時に比べ、大きく拡大していることが指摘された。このことは、公共事業の目的が、従来の経済全体の生産効率向上目的から、地方の雇用創出目的に重点を移したということができる。公共事業費の拡大による生産効率の向上は、社会資本ストックの増大を通じ、その後も地域経済の活性化に寄与する持続的な効果と期待できるが、雇用の拡大効果は公共事業費が削減された途端に、その効力を失う一過性のものであり、公共事業費を一定水準で維持しつづけないかぎり、地域雇用は維持できない。
 国および地方の財政が悪化する中、もはや財政支出に頼った地域活性化策は期待できない。個別産業について各都道府県間のTFP格差は縮小しているにもかかわらず、産業構造が硬直的であるために、都道府県全体(産業合計)の格差は縮小していない。今後、地域経済が生産効率を高め、雇用を維持拡大していくためには、各企業の経営効率の向上とともに、産業構造の転換を促進し、生産性の高い産業のウェイトを高め、各地域で眠っている生活密着型の潜在的サービス需要を掘り起こすなど、住民と企業、そして自治体が一体となった雇用戦略が求められると言えよう。

 

 

連絡先

財務省 財務総合政策研究所 研究部

TEL 03-3581-4111

上席研究員  中 東  (内線)5404

 

 

 本報告書の内容や意見は全て執筆者個人に属し、財務省あるいは
財務総合政策研究所の公式見解を示すものではありません。



研究体制及び執筆担当者 (敬称略、肩書きは2002年6月1日現在)


【主査】

 樋口美雄

 財務省財務総合政策研究所特別研究官
 慶應義塾大学商学部教授 (はしがき、第2章、第3章)

【メンバー】

 中島隆信

 慶應義塾大学商学部教授 (第1章)
 中東雅樹  財務省財務総合政策研究所研究部上席研究員 (第1章)
 日野  健  財務省財務総合政策研究所研究部研究員 (第1章、第2章)

 


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<参考資料>【図1】
<参考資料>【図1】


<参考資料>【図3】 【図4】 【図6】 データ
<参考資料>【図3】 【図4】 【図6】 データ


<参考資料>【図5】 データ-1
<参考資料>【図5】 データ-1


<参考資料>【図5】 データ-2
<参考資料>【図5】 データ-2


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