財務総合政策研究所

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新聞発表

 

 

平成12年10月20日
大   蔵   省

 

 

「わが国企業のファイナンスシステムとコーポレートガバナンスに関する
アンケート調査」集計結果と分析の中間報告

 


I.
調査目的

[1]

背景と問題意識

 回復傾向にあるわが国企業の業績が更に改善するためには、コーポレートガバナンス(企業統治)を十二分に機能させることが不可欠であるとの指摘がある。
 これまで、わが国企業のガバナンス機能は、メインバンクによって担われていた。メインバンクは、企業の資金ニーズに応えるばかりではなく、多様な形で経営に関与することでそのガバナンス機能を果たしてきたとされる。しかし、バブル崩壊後に大量不良債権が表面化してからは、企業のファイナンスは銀行を経由する相対型から市場型へシフトし始め、これに伴い、企業のガバナンスにおける銀行の影響力は急速に低下しているといわれる。
 今後のわが国経済の更なる発展には、企業の経営効率化が必要条件である。果たして、わが国企業は、メインバンクガバナンスに代わる新しいガバナンスの形を確立し、経営の効率化を実現できるのであろうか。

[2]

調査方法
 財務総合政策研究所では、昨年9月から、「わが国のコーポレートファイナンスとコーポレートガバナンスに関する研究会」において、大村敬一座長(早稲田大学商学部教授、当研究所特別研究官)の下で、わが国企業を再生させるには、どのようなガバナンス形態が望ましいのか、企業の新たなシステムやファイナンス方法と調和するガバナンスとはどのようなものであるのか等を議論してきた。昨年11月には、上場全企業、および一部の店頭登録企業を対象にアンケートによる実態調査を実施した。50%(送付2,486社中、1,219社が回答)にも達した回答率は、本邦企業のファイナンス、ガバナンスに対する問題意識の高さを反映している。今回の報告書は、このアンケート調査の集計結果、および、それに基づいた分析の中間報告である。
 本中間報告は、企業経営の現時点での実態はもとより、今後の方針など現状の統計では得られない情報を提供する本邦初の本格的資料である。

II.アンケート調査結果(概略)

 本アンケート調査では、わが国企業の現状や意識について、ファイナンスを中心として、会計基準、コーポレートシステム、経営方針、および、雇用関係に至るまで幅広い内容を盛り込み、急速な環境変化への対応状況等を調査している。
 アンケートの回答内容を分析した結果、各企業のファイナンスとガバナンスについて以下の傾向が見られた。


[1]

ファイナンスにおける銀行の優位性の継続

わが国企業のファイナンス方式は市場型へ急速にシフトするという見解が支配的であるが、本調査によれば、資本金100億円未満の中・小規模の企業では、メインバンクを含む金融機関との関係を維持もしくは強化する傾向が見られる。一方、市場型ファイナンスへ多様化している資本金100億円以上の大規模企業でも、従来からのメインバンクとの関係を維持する意向が表明されており、ファイナンスにおいて銀行等金融機関があいかわらず優位である実態が示された【図[1]参照】。ただし、銀行に期待する内容はラストリゾート(救済)機能のような暗黙の契約からコミットメントラインのような明示的な契約に変化しており、以前と比べ実質的なものとなっている。
 

 【図[1]】今後

における、メインバンクからのファイナンスの方向性
[1]強化する方針[2]現行通り[3]その他
[4]弱める方針(うち、[5]下記参照[6]代替として市場からのファイナンスを希望)

今後における、メインバンクからのファイナンスの方向性


[2]

積極的なガバナンスの意識と実態とのギャップ
[意識では] わが国企業は総じて、市場からの評価をベースとするガバナンスの形を望んでいる。とりわけ、M&A、機関投資家の経営への関与など市場による規律付けの導入に極めて積極的である【図[2]-I参照】ことが示された。しかし、
[実態では] 従来の日本的リレーションシップの代表的主体である銀行等金融機関、取引先企業、系列企業との関係を重視する傾向が見られた【図表[2]-II参照】。
つまり、わが国企業は総じてガバナンスに強い関心を有しており、特に市場からの評価を重視し、それに応えられるガバナンスの形を模索しているようであるが、その実態はまだ緒に付いた段階であり、積極的なガバナンスの意識と実態との間にギャップのあることが確認された
 

【図[2]-I】

戦略的・敵対的買収の経営
への効果<資本金別>

【図[2]-II】

今後、関係・接触を深める
主体<資本金別>
戦略的・敵対的買収の経営への効果<資本金別> 今後、関係・接触を深める主体<資本金別>

[3]

ガバナンスの取り組みに積極的な企業でなければ、経営パフォーマンスの飛躍的向上は見込めない
ガバナンスに対する取り組み姿勢は、ファイナンスタイプが市場型である企業のほうが積極的である。一方、環境変化に適応したガバナンスを積極的に採用している企業ほど、経営パフォーマンスが高くなる傾向がある。また、ガバナンスに対する取り組みに熱心でない企業は、飛躍的な経営パフォーマンスを実現できていない。つまり、少なくとも、ガバナンスの取り組みに積極的な企業でなければ、経営パフォーマンスの飛躍的向上は見込めない【図[3]参照】。
 

 【図[3]】ガバナンス度と経営パフォーマンスの関係を示す企業散布図

【図[3]】ガバナンス度と経営パフォーマンスの関係を示す企業散布図


◆     ◆     ◆


 本報告書の内容や意見は、執筆担当者個人に属し、大蔵省あるいは財務総合政策研究所のものではありません。
 

(参考)報告書の構成

.コーポレートガバナンスの経緯および概念
II .わが国企業のファイナンスシステムとコーポレートガバナンスに関するアンケート調査
III .返信企業の分布状況
IV .関連項目間の相関状況
.プロフィール項目間のクロス分析
VI .プロフィール項目とその他項目間のクロス分析
VII .経営パフォーマンスとコーポレートファイナンス、コーポレートガバナンス
 



【参考】
『わが国のコーポレートファイナンスとコーポレートガバナンスに関する研究会』メンバー等名簿
(敬称略・50音順、肩書きは平成12年10月20日現在)

【座長】

大村敬一

早稲田大学商学部教授
大蔵省財務総合政策研究所特別研究官

【メンバー】

蟻川靖浩

山形大学人文学部専任講師
池尾和人 慶應義塾大学経済学部教授
鈴木 誠 大和総研(米国)主任研究員
首藤 恵 中央大学経済学部教授
広田真一 早稲田大学商学部助教授
深尾光洋 慶應義塾大学商学部教授
松浦克己 横浜市立大学商学部教授
宮島英昭 早稲田大学商学部教授
米澤康博 横浜国立大学経営学部教授
若杉敬明 東京大学大学院経済学研究科教授

【オブザーバー】

楠美将彦

法政大学非常勤講師

【報告書執筆者】

大村敬一

早稲田大学商学部教授
大蔵省財務総合政策研究所特別研究官
増子 信 大蔵省財務総合政策研究所研究部研究員