財務総研TOP > 研究活動 >報告書等 > 「アジア各国の人口、食糧、エネルギー、環境」報告書について
| 平成9年8月6日 大 蔵 省 | 「アジア各国の人口、食糧、エネルギー、環境」 報告書について | I.経緯 近年アジア諸国は高い経済成長を続け、今後の世界の政治、経済におけるアジアの位置付けはますます重要なものになると予想される。また、世界の人口の6割を占めるアジアの経済発展の動向は、相互依存関係を深めている世界経済にも大きな影響を及ぼすと考えられる。このような状況にかんがみ、大蔵省財政金融研究所では、経済成長を続けるアジアの変化の方向性及び世界におけるその位置付けの検討を昨年度よりテーマとして取り上げ研究してきた。 以上の観点から、昨年度は、アジア各国の経済構造、政治・行政並びに教育及び人的ネットワークの視点から各国の現状を比較分析し、『アジア各国の経済・社会システムの現状比較』として発表した。 本年度は、アジアの今後の展開方向を規定する諸要因の中から、人口、食糧、エネルギー、環境を取り上げ、その現状と動向について検討することとした。このため、昨年10月より所内に研究グループを組織し、アジア5か国(中国、インド、インドネシア、タイ、韓国)を対象に、学識経験者の指導を仰ぎつつ研究を進めてきたが、今般、その研究成果を『アジア各国の人口、食糧、エネルギー、環境』と題する報告書を取りまとめた。 II.報告書の要旨 1.人口 世界の人口は20世紀後半から大幅な増加を続けているが、人口の規模と増加数の面でアジアが最も大きいことが特徴としてあげられる。アジアのなかでも従来は中国を中心とする東部アジアの人口の比重が大きかったが、インドを中心とする中央・南アジアの人口増加率が著しく、近々東部アジアの人口を上回るものとみられている。 出生率は、アジア5か国の中では韓国で1965‐75年頃に急速に低下し始め、続いて1970‐75年頃に中国及びタイで低下し始めた。この間、インド及びインドネシアでは出生率は、比較的緩やかに低下している。一方、平均寿命は、1950年代以降急速に伸びたため各国とも人口構造の高齢化が進み始めている。また、アジア全体の特徴として、かつて続いた高出生率の効果として巨大な労働力が形成されているが、その雇用は必ずしも十分であるとはいいがたい。 アジア5か国の都市化の特徴は、都市人口の増加率が先進諸国と比較して高いこと、中国及びインドでは巨大都市が複数存在すること、タイ及び韓国では首都圏への人口集中現象が進展していることが挙げられる。 2.食糧 世界の穀物生産における途上国の生産割合が上昇しているが、その背景には、中国やインドを含めたアジア諸国において、高収量品種の普及や灌漑率の向上など生産インフラの改善により、穀物生産量が伸びたことがある。 アジア5か国では、所得水準の上昇に伴い、摂取カロリーの上昇や需要構造の変化がみられるが、今後の変化の方向性については、食文化や政策的な要因など多方面からの分析が必要である。 アジア5か国の主な穀物生産をみると、米は5か国で生産されているが、小麦は主に中国及びインドで生産され、トウモロコシは韓国以外の4か国で生産されている。一方、穀物全体の自給率が100%を越えているのは5か国のなかではインドとタイだけである。 アジア5か国の産業別名目GDPの構成状況の推移をみると、いずれの国においても農業部門の名目GDPの構成比が低下し、工業部門及びサービス部門の構成比が上昇する傾向にある。 3.エネルギー 世界のエネルギー消費は経済成長とともに拡大してきており、将来的にも増大することが見込まれる。その中でアジア(日本を除く)の占める比重は年々高まりつつあり、2010年時点で北米(米国、カナダ)のエネルギー消費を上回り、世界最大のエネルギー消費地域となり、世界のエネルギー消費の4分の1程度を占めることが予想されている。 アジアにおける部門別最終エネルギー消費では他の地域と比較して産業部門の比率が大きいが、運輸部門、民生部門でも消費量は拡大しており、電力消費の伸びも顕著である。所得の向上に伴う電力化の進行と輸送用エネルギーの増大はアジアのエネルギー消費の特徴である。この消費面に対応する課題は、輸送用には石油の確保を図るとともに、国全体として石油への依存度を抑えつつ電力用のエネルギー源をいかに確保するかにある。 世界の1次エネルギー供給構成は、かつての石油中心から多様化してきているが、アジアでは石油依存度が硬直的に推移しており、石油消費量の増加に伴い、域外からの輸入が拡大している。アジア地域の供給源で特徴的なことは中東の比重が著しく高いことである。 エネルギー・インフラの整備の問題に加え、エネルギー問題の新しい方向性としては、環境面からの制約、市場メカニズムによるアプローチ、転換部門の効率向上などがあり、国際的、地域的協力も重要になってきている。 4.環境 都市への人口集中や工業化の進展は、自然環境のバランスを崩し数々の課題をもたらした。これらの課題は生活環境、公害問題、地球環境問題の3つに大別されるが、経済成長の著しいアジア各国ではこの3つの環境問題がより深刻な状態になっており、また、これらの問題は同時に存在することから、その総合的な解決を迫られている。 1人当たりの水資源量ではアジア地域は世界平均の約半分にとどまっているほか、安全な水も完全普及には至っていない。 アジアでは経済成長に伴い環境汚染も進行している。化石燃料の大量消費によりアジア地域は都市の大気汚染が最も深刻な地域であり、排水処理整備の遅れから河川も最も汚染されている地域である。固形廃棄物の量も増加しているが処分が追いつかず放置されていることも多い。 また、大都市の交通と環境問題、製造業からの負荷の軽減、鉱山鉱害問題、技術移転や政策選択の問題などアジア諸国に共通する環境上の問題も多い。また、いわゆる地域環境問題には先進国がすでに経験し克服してきた問題も多く、国際的、地域的な協力が期待される。地球環境問題については、1国だけの対応では解決に結び付きにくく、国際的な取り組みがより重要である。 III.まとめ |
[1] | 人口:アジアは既に世界人口の6割を占めているが、平均寿命の上昇と出生率の低下から人口構造の高齢化が進みつつある。このことは、今後、雇用問題に加えて、社会保障負担の増大等高齢化社会に伴う諸問題が顕在化する可能性を示唆している。 |
[2] | 食糧:アジア5か国では、人口増加に加え摂取カロリーの上昇や需要構造の変化により食糧需要は今後も増大すると予想される。他方、これらの国は、1人当たりの耕作地面積が欧米に比べてかなり小さいこと等から、生産面、特に農業技術やインフラ整備を含めた国際協力が重要である。 |
[3] | エネルギー:経済成長とともに世界のエネルギー消費に占めるアジアの比重も年々高まりつつある。アジアでは電力化と輸送用エネルギーの増大への対応が課題である。エネルギー問題が地球規模の問題であることを考えれば、資源開発、インフラ整備、省エネルギー等の国際的協調が重要である。 |
[4] | 環境:生活環境、公害、地球環境の問題が同時に存在するアジアでは、問題解決のための人材、技術などの資源が制約されているのが実情である。しかし、先進国がすでに経験し克服してきた問題も多く、国際的、地域的な協力が期待される。環境問題は、急速な経済成長を続けるアジア地域において特に顕著な問題となっているが、その解決は、同地域のみならず世界の持続的発展にとって不可欠の課題である。 |
| 経済成長を規定する要因として、以上の要因が重要であることを考えれば、これからのアジアを論ずるためにその動向を十分把握しておくことが肝要である。 (以上) |