財務総合政策研究所

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フィナンシャル・レビュー
平成27年(2015年)第2号(通巻第122号)

平成27年3月発行

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<特集>統計の整合性と家計行動の把握

宇南山 卓 財務省財務総合政策研究所研究部総括主任研究官

 責任編集

序文(PDF:180KB)PDF

宇南山 卓

(財務省財務総合政策研究所研究部総括主任研究官)

 世帯調査の方法と調査世帯の性質
―世帯構成,年収,学歴に関する比較―

要約(日本語) 要約(英語) 本文(PDF:839KB)PDF

  1. はじめに
  2. 家計に対する調査の概要
  3. 各統計の世帯属性の比較
  4. 学歴の比較
  5. おわりに

佐野 晋平

(千葉大学法政経学部准教授)

多田 隼士

(財務省財務総合政策研究所研究部研究員)

山本  学

(財務省財務総合政策研究所研究部研究員)

家計収入の把握

要約(日本語) 要約(英語) 本文(PDF:502KB)PDF

  1. はじめに
  2. 国民生活基礎調査・全国消費実態調査・家計調査での収入の調査方法について
  3. 年収票に記入された収入の検証
  4. 家計簿に記入された収入の検証
  5. 対策
  6. まとめ

多田 隼士

(財務省財務総合政策研究所研究部研究員)

三好 向洋

(愛知学院大学経済学部講師/財務省財務総合政策研究所上席客員研究員)

家計の税・社会保険料の比較

要約(日本語) 要約(英語) 本文(PDF:688KB)PDF

  1. はじめに
  2. 記入値の統計的特性
  3. マイクロシミュレーションと記入値
  4. 理論値と記入値の乖離の発生要因
  5. 結論

大野 太郎

(尾道市立大学経済情報学部准教授/財務省財務総合政策研究所上席客員研究員)

中澤 正彦

(京都大学経済研究所先端政策分析研究センター教授)

菊田 和晃

(財務省財務総合政策研究所研究部研究員)

山本  学

(財務省財務総合政策研究所研究部研究員)

消費関連統計の比較

要約(日本語) 要約(英語) 本文(PDF:763KB)PDF

  1. はじめに
  2. 消費関連統計の概要
  3. 家計調査と家計消費状況調査の乖離の原因
  4. 結論

宇南山 卓

(財務省財務総合政策研究所研究部総括主任研究官)

家計の金融資産・負債について

要約(日本語) 要約(英語) 本文(PDF:1351KB)PDF

  1. 家計の保有する資産・負債の調査
  2. 各統計調査の内容,及び資産・負債の調査項目
  3. 各調査における金融資産・負債額
  4. 差をもたらす要因
  5. 調査統計とマクロ統計との比較
  6. まとめ

前田佐恵子

(内閣府経済社会総合研究所総務部総務課課長補佐)

労働時間統計の整合性と世帯の労働時間の分析

要約(日本語) 要約(英語) 本文(PDF:1064KB)PDF

  1. はじめに
  2. 統計による労働時間の違い
  3. 世帯の労働時間の構造と推移
  4. 世帯属性と夫婦の労働時間
  5. おわりに

長町理恵子

(日本経済研究センター主任研究員)

勇上 和史

(神戸大学大学院経済学研究科准教授)


 

世帯調査の方法と調査世帯の性質
―世帯構成,年収,学歴に関する比較―

佐野 晋平(千葉大学法政経学部准教授)
多田 隼士(財務省財務総合政策研究所研究部研究員)
山本  学(財務省財務総合政策研究所研究部研究員)

(要約)

 本稿は,調査方法の異なる家計関連統計を比較し,各統計の特徴と利用上の注意点を明らかにした。二人以上世帯については,調査された世帯属性の平均には大きな違いはなかった。ただし,世帯属性の分布には調査方法の違いにより差が見られ,国民生活基礎調査は全国消費実態調査,家計調査より平均的ではない家計を多く捉えている可能性がある。一方で,単身世帯については,国民生活基礎調査で割合が低くなった。代替世帯を取らず比推定も用いない国民生活基礎調査では,単身世帯が過小に把握されていると考えられる。

 学歴に関しては,統計間で概ね近い分布を示すものの,国民生活基礎調査と国勢調査に含まれる「学歴不詳」者が比較を困難にしている。国勢調査のコホート情報と労働力調査の学歴分布を用いた推計によると,学歴不詳者は小中高卒グループで多く発生していることが明らかとなった。学歴不詳者を集計から除くことはバイアスを生む可能性が高いと考えられる。

キーワード:世帯調査,非標本誤差

JEL Classification: C80, C83

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家計収入の把握

多田 隼士(財務省財務総合政策研究所研究部研究員)
三好 向洋(愛知学院大学経済学部講師/
       財務省財務総合政策研究所上席客員研究員)

(要約)

 本稿では,国民生活基礎調査,全国消費実態調査,家計調査で調査されている収入の妥当性を検証した。家計を対象とした上記の3 つのミクロ統計を相互に比較することに加えて,企業を調査対象とする賃金構造基本統計調査と比較することで,各統計の正確さを検討している。

 家計側3統計では,プリコードの調査票に前年の収入を記入する方式で年間収入が調査されている。さらに,全国消費実態調査・家計調査では,月々の収入を家計簿に記入させることで調査している。家計側3統計全てで調査対象となっている世帯合計の年間収入に加え,国民生活基礎調査・全国消費実態調査では世帯員毎の年間収入も調査している。企業側の統計である賃金構造基本統計調査では,労働者個人の収入を調査しており,年齢・性別・雇用形態別に各年6月の給与と前年の年間賞与を調査している。

 ここでは,まず国民生活基礎調査・全国消費実態調査の年収票で調査された個人ベースの雇用者収入と,賃金構造基本統計調査から計算される年間賃金総額を比較した。その結果,個人ベースの年間雇用者収入はおおむね同水準で推移していた。また,世帯ベースの合計年間収入は,家計側3統計でほぼ整合的であった。すなわち,世帯側の統計は相互に整合的であり,しかも企業側の統計とも整合的である。このことから,年間収入については,どの統計もほぼ正確に把握できていると考える。

 一方,家計調査の家計簿に記録された月々の収入を積み上げて計算される年間の雇用者収入は,家計調査の年収票や賃金構造基本統計調査で計算される水準よりも低い。すなわち,家計簿に記録される収入は過小である可能性が高い。その原因は,賞与および定期収入の記入漏れ,額面を記入すべきところに手取り額を記入したなどの可能性が考えられる。

キーワード:家計,収入,国民生活基礎調査,家計調査,全国消費実態調査

JEL Classification: D13,C81,C83

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家計の税・社会保険料の比較

大野 太郎(尾道市立大学経済情報学部准教授/
         財務省財務総合政策研究所上席客員研究員)
中澤 正彦(京都大学経済研究所先端政策分析研究センター教授)
菊田 和晃(財務省財務総合政策研究所研究部研究員)
山本  学(財務省財務総合政策研究所研究部研究員)

(要約)

 本稿の目的は(1)各種の税・社会保険料を対象に記入値を統計間で比較することを通じて各統計の特性を考察すること,(2)家計の税負担(所得税・住民税)を対象に記入値と理論値を比較することを通じて理論値の妥当性を検証することである。

 まず,記入値の統計間比較を通じて,『全国消費実態調査』『家計調査』は税・社会保険料の記入値が過小評価されていることが示された。また,記入値と理論値の比較や,双方の乖離に関する分布を考察することを通じて,所得税・住民税における記入値と理論値の乖離は平均がゼロ,散らばりが対所得比3 % 程度であることが示された。このほか,乖離の発生要因として税額の記入ミスによる影響が頻度として高いことや,調査票の記入ミスとして「事業所得などに関する誤記入」や「税額の桁間違いによる誤記入」が乖離率に影響を与えていることが確認された。

 考察からの示唆として,マイクロ・シミュレーション分析などにおける理論値は,集計したマクロの値についてはバイアスがほとんどなく,誤差もほとんどない推計値をもたらす。その意味で政策評価にも十分に利用することができる精度である。

キーワード:税,保険料,記入値,理論値,マイクロ・シミュレーション分析

JEL Classification: C15, H24

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消費関連統計の比較

宇南山 卓(財務省財務総合政策研究所研究部総括主任研究官)

(要約)

 本論文では,日本の消費関連の主要な官庁統計である家計調査・全国消費実態調査・国民生活基礎調査・家計消費状況調査について,その概要を整理し,調査結果を比較した。それぞれの調査の目的・頻度・規模・方法は異なっており,統計間の相互比較を通じて各統計の性質を明らかにすることができる。

 最も注目される消費データである家計調査の消費支出総額は,国民生活基礎調査や全国消費実態調査で記録される消費支出の水準とおおむね整合的な動きをしているが,家計消費状況調査と比べると水準が明らかに低い。そこで,家計調査と家計消費状況調査の差に注目し,乖離の原因を検討した。2つの統計の差は,家計消費状況調査の調査対象品目による部分とそれ以外の品目による部分に分解することができるので,それぞれに分けて検討した。

 家計消費状況調査の対象品目以外で発生する乖離については,同一家計を継続的に調査するという調査設計が原因になっていると考えられる。家計調査には調査回数を重ねるにつれて記録される支出が減少するという「調査疲れバイアス」が存在し,家計消費状況調査には調査回数を重ねるにつれ調査に協力的な世帯にサンプルが偏る「サンプル脱落バイアス」が存在する。これらのバイアスの影響を除去すれば両統計の結果はほぼ一致する。

 一方,家計消費状況調査の調査対象品目で発生する乖離は,家計調査で耐久財などの高額消費の記入が過少になっている可能性で説明できる。支出額を,家計調査では家計簿による自由記入方式で調査しているのに対し,家計消費状況調査ではプリコードのアンケート形式で調査している。自由記入方式では,特に高額な支出を伴う消費の記入漏れが大きいと考えられる。

 両統計の差は調査方法に起因していることが明らかになった。しかし,調査手法の選択は,実務的にも学術的にも重要な役割があり変更することは容易ではなく,また必ずしも望ましくもない。その意味では,統計利用者が統計の性質を十分に理解し,適切な補正をして利用することが望まれる。

キーワード:消費,家計調査,家計消費状況調査,全国消費実態調査

JEL Classification: D12, C81, C83

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家計の金融資産・負債について

前田佐恵子(内閣府経済社会総合研究所総務部総務課課長補佐)

(要約)

 本稿では,家計資産・負債を計測する国内の複数の統計調査を比較し,各調査の特性及び利用上の留意すべき点を考察した。個別の統計調査の結果として得られる金融資産・負債の分布には違いがあり,平均値等でみてもある程度の差が確認できる。

 こうした差を生じさせる原因としては,標本抽出される世帯の特徴の違いとともに設問形式の違いがあげられる。今回取り上げた調査の中で,特に国民生活基礎調査の金融資産額が小さいことについては,世帯主年齢等のサンプルの違い以外に,その設問で金融資産の項目を分けずに合計額を尋ねる形式であることが,過小な回答を引き起こしている可能性が考えられる。一方,金融広報中央委員会の調査については,金融資産を保有していないと回答している世帯の比率が近年,他の調査と比べて著しく大きいことが特徴的である。

 さらに,統計調査の値をマクロ統計と比較すると,金融資産でも負債でも統計調査の数値がマクロ統計から推定される係数より小さくなっている。この乖離のうち,統計の概念や定義によって明示的に説明が可能と考えられるのは,資産では25%,負債では40%程度にとどまった。

 統計調査から得られるデータを用いて,資産や負債を分析する際には,こうした調査ごとの特徴やマクロ統計との定義の差等,各調査のとらえる範囲の違いに留意が必要である。

キーワード:家計,金融資産,負債

JEL Classification: D14, D31, E21

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労働時間統計の整合性と世帯の労働時間の分析

長町理恵子(日本経済研究センター主任研究員)
勇上 和史(神戸大学大学院経済学研究科准教授)

(要約)

 本稿では,労働時間に関する政府統計の整合性を検証した後,世帯単位の労働供給の視点から,1980年代半ば以降の労働時間の推移と構造を明らかにした。主な結果は次のとおりである。

 第1に,労働時間統計を比較した結果,世帯側,事業所側の各統計内では整合性が見られたが,両統計間には,とくに男性について一定の乖離が存在する。第2に,世帯調査である『労働力調査』の個票データの分析の結果,1986年以降,有配偶世帯の夫婦それぞれの平均週労働時間は変化がない一方,妻の労働供給の構造に大きな変化がみられた。有配偶女性の就業率は全般的に上昇し,専業主婦世帯が減少したが,短時間就業の妻の増加が妻の労働時間上昇を抑制した。第3に,妻の就業選択では,夫の所得との負の相関を意味するダグラス=有沢の法則が頑健に存在すること,近年ほど,育児期の世帯で夫の労働時間が妻の労働供給の制約となっている傾向がみられた。

 男性の働き方は,個人のワーク・ライフバランスにとどまらず,世帯の行動選択に大きな影響を持つため,世帯調査において,主な勤務時間帯や賃金が支払われる労働時間などの働き方の内実に迫る調査項目の追加も検討すべきであろう。

キーワード:労働時間,世帯の労働時間,子ども,労働力調査

JEL Classification: J22, D13

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