財務総合政策研究所

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フィナンシャル・レビュー
平成26年(2014年)第3号(通巻第119号)

平成26年8月発行

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<特集>「中国―新指導部における経済政策を中心に―」

田中修財務総合政策研究所次長 責任編集

序文[318kb,PDF]

田中 修

(財務省財務総合政策研究所次長)

特別寄稿:
財務省財務総合政策研究所中国研究会20周年に寄せて[253kb,PDF]

国分 良成

(防衛大学校長)

習近平指導部の経済改革・経済政策

要約(日本語) 要約(英語) 本文[715kb,PDF]

  1. はじめに
  2. 改革の全面深化
  3. 新しいタイプの都市化の推進
  4. マクロ・コントロールの刷新
  5. むすび

田中 修

(財務省財務総合政策研究所次長)

習近平政権と中国の政治権力構造

要約(日本語) 要約(英語) 本文[636kb,PDF]

  1. はじめに
  2. 支配の正当性の維持・強化―「富強」への志向とナショナリズム
  3. 党の統治手法―党中央への権力集中に向けて
  4. 汚職対策限定の政治改革と自律的社会の抑圧
  5. 結語

小嶋 華津子

(慶應義塾大学法学部准教授)

中国の財政状況,政策および地方債務問題の現状と課題

要約(日本語) 要約(英語) 本文[2.3mb,PDF]

  1. はじめに(本稿の趣旨)
  2. 財政状況の検証
  3. 地方政府の債務
  4. 関連する改革
  5. むすび―財政を巡る課題

内藤 二郎

(大東文化大学副学長/経済学部教授)

中国の金融・資本市場改革:シャドーバンキング問題と不良債権問題

要約(日本語) 要約(英語) 本文[2.7mb,PDF]

  1. はじめに
  2. シャドーバンキングについての定義
  3. 個別のシャドーバンキングの実態と規制
  4. 中国政府の対応と課題
  5. おわりに

関根 栄一

(株式会社野村資本市場研究所北京代表処首席代表)

発展方式の転換と対外経済政策

要約(日本語) 要約(英語) 本文[1.5mb,PDF]

  1. はじめに
  2. 発展方式の転換
  3. 対外経済政策の推移
  4. 中国と国際経済システム
  5. おわりに

大橋 英夫

(専修大学経済学部教授)

「二つの罠」に挑む習近平体制−「政左経右」路線は持続可能か−

要約(日本語) 要約(英語) 本文[1.4mb,PDF]

  1. はじめに
  2. 「中所得の罠」と「体制移行の罠」に直面する中国
  3. 労働力不足で低下する潜在成長率
  4. 停滞する国有企業改革
  5. 市場経済化の深化を軸とする三中全会の改革案
  6. ポスト三中全会の国有企業改革
  7. 「政左経右」に特徴付けられる習近平路線

補論 二つのバブル:中国の現状と1980年代後半の日本との比較

関 志雄

(株式会社野村資本市場研究所シニアフェロー)

中国の社会保障制度と格差に関する考察

要約(日本語) 要約(英語) 本文[1.8mb,PDF]

  1. はじめに
  2. 中国の経済発展,戸籍管理制度と都市化の進展
  3. 中国の社会保障制度の変遷
  4. 中国の社会構造と戸籍管理制度
  5. 経済成長と社会保障制度
  6. 終わりに

柯   隆

(富士通総研経済研究所主席研究員)

中国経済の構造変化と日中経済関係

要約(日本語) 要約(英語) 本文[2.1mb,PDF]

  1. 最近の中国経済の構造変化
  2. 2012年以降のマクロ経済の安定
  3. 他の新興国とのコントラスト
  4. 不動産市場の問題
  5. 日中経済関係:安倍総理による靖国参拝の影響は軽微
  6. 中国が直面する経済改革の課題と中長期的リスク

瀬口 清之

(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

平成25年度の財務総合政策研究所の活動

 


 

習近平指導部の経済改革・経済政策

田中  修 (財務省財務総合政策研究所次長)

(要約)

習近平指導部の経済改革・経済政策は,3つの論点に整理することができる。

第1は,「改革の全面深化」であり,市場経済に決定的役割を与えつつ,政府の役割を限定し,2020年までに決定的成果を挙げようというものである。

第2は,「新しいタイプの都市化の推進」であり,都市化により成長を牽引しつつ,農村から都市に移転してきた農民に都市戸籍を与え,住宅保障・社会保障・子弟への義務教育といった都市公共サービスを賦与しようというものである。

第3は,「マクロ・コントロールの刷新」であり,経済運営の合理的区間を定め,インフレ率目標を上限,成長率・雇用目標を下限とし,経済がその中にあるときには短期的な景気刺激策を発動せず,経済体制改革・経済構造調整を優先するというものである。

中国経済がいわゆる「中所得の罠」を脱し,市場経済体制への移行を完成し,持続可能で健全な成長を実現するためには,この3つの政策を同時並行的に進める必要がある。しかし,改革を好まない既得権益勢力を抑え,経済体制改革・経済構造調整を大胆に進めるには,習近平党総書記の強い政治的リーダーシップが不可欠である。

キーワード:経済体制改革,都市化,マクロ・コントロール,経済構造調整

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習近平政権と中国の政治権力構造

小嶋 華津子 (慶應義塾大学法学部准教授)

(要約)

本稿では,中国共産党 の生命力を判断するための二つの観点―支配の正当性,党の統治手法―から,習近平政権の一年半を評価する。習政権は,支配の正当性を強化すべく,「富強」という国家目標の下にナショナリズムを発揚してきた。また,改革の断行に不可欠なリーダーシップを確立すべく,習への権力集中を推し進めてきた。一元的指導体制の下で,改革がスピーディに実施され効果をあげるならば,支配の正当性は強化されるであろう。しかしながらこうした楽観論には,留保が必要である。第一に,困難な改革の過程で必要となるコストに加え,少数民族や市民の言論抑圧に必要なコストは増大の一途をたどるであろう。第二に,昨今の好戦的な外交姿勢から憶測するに,国家としての合理的判断が下せぬまでに習指導部のリーダーシップが低下している可能性が否定できない。中国の暴走を食い止めるべく多国間の協力体制を構築すると同時に,その経済改革とガバナンスの向上を支える多元的な戦略が求められている。

キーワード:習近平政権,支配の正当性,リーダーシップ,統治のコスト

JEL Classification: Z00

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中国の財政状況,政策および地方債務問題の現状と課題

内藤 二郎 (大東文化大学副学長/経済学部教授)

(要約)

中国の財政は,比較的健全な中央財政に対し,債務や不良債権の拡大を中心にリスクが高まっている地方財政という構図である。このことは,中華人民共和国・審計署(日本の会計検査院に相当)による地方債務の監査結果を見ても明らかである。依然として7%台半ばという高い成長率を維持していることや,多額の外貨準備,経常黒字などの状況を考えれば,政府債務が短期的に中国経済全体に大きな混乱をもたらすことは当面は考えにくいだろう。しかしながら,一部の地方財政で問題が顕在化することによってその影響が飛び火したり,改革が進まずに問題が先送りされるような事態が続けば,いずれは深刻な危機につながる。こうした状況を回避するためには,税財政制度改革,財政移転制度の充実,地方財政関連法規の整備とそれに基づく適切な財政運営,政府間における事務−権限−財源−責任の適切な配置など,課題は山積している。これらは,現政権が掲げている,経済の構造調整の断行や政府機能の転換を実現するためにも,決して避けて通れない課題であり,先送りは許されない。経済の減速傾向が強まる中で,財政の果たすべき役割がますます重要となっており,改革のために残された時間は限られている。

キーワード:地方債務問題,政府間財政関係,行財政政策

JEL Classification: H6,H7,O2

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中国の金融・資本市場改革:シャドーバンキング問題と不良債権問題

関根 栄一 (野村資本市場研究所北京代表処首席代表)

(要約)

中国の短期金融市場(銀行間市場)で、2013年5〜6月にかけて金利が上昇した。短期的には流動性の問題であるが、構造的には銀行の資産拡張とオフバランスシートの金融商品の開発がある。うち後者は、中国のシャドーバンキングの問題としても捉えられている。中国のシャドーバンキングは、主に銀行理財商品や信託商品から構成され、全体でGDPの5割を越えているという試算もある。最近では、インターネット金融も規模を増加させている。このため、中国政府は2013年末に、金融当局と地方政府に対して、シャドーバンキングの管理監督強化に向けた内部通達を出し、シャドーバンキングとされる業務と金融機関ごとに管理監督機関を定め、包括的に管理監督の網を掛けようとしている。加えて、中国政府は、バーゼルローマ数字3対応の枠組みの中で2018年を目標としたスケジュールを設定し、銀行のバランスシートを健全化しようとしている。

中国のシャドーバンキングには、金融当局の規制を回避し、金融市場にリスク要因をもたらしている負の側面がある一方、中小企業の資金調達難を解決し、家計に事実上の金利自由化商品を供給している正の側面もある。最終的には、金融改革や証券・資産運用業界の育成の中で解決していかなければならない問題でもある。

キーワード:シャドーバンキング、銀行理財商品、信託商品、インターネット金融

JEL Classification: E58,G21,G28

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発展方式の転換と対外経済政策

大橋 英夫 (専修大学経済学部教授)

(要約)

改革開放後,急速な経済成長を続けてきた中国経済は,2010年代を迎えた頃から,安定成長の軌道に移行を始めた。持続的な高成長の結果として,過剰貯蓄,経済効率の悪化,要素価格の上昇,内外不均衡の顕在化に直面した中国経済は,投資・輸出主導型成長から消費・内需主導型成長への発展方式の転換を迫られている。発展方式の転換の一環として,対外経済政策では,改革開放後,一貫して強調されてきた輸出振興・外資導入から輸入促進・対外投資への転換が図られている。経済大国の道を邁進する中国は,国際経済システムにおいても,そのプレゼンスを急速に高めつつある。なかでも,多角的な国際通商体制が膠着状態に陥り,世界各国・地域が自由貿易協定(FTA)の構築に努めるなかで,中国は重要なプレーヤーとしての地位を確立しつつある。また対外経済政策の遂行に伴う変化は,中国の経済改革の全面的深化を促す方向に機能しつつある。

キーワード:対外経済政策,対外不均衡,輸出振興,外資導入,WTO,FTA

JEL Classification: F13,F15,F21,F60

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「二つの罠」に挑む習近平体制
―「政左経右」路線は持続可能か―

関 志雄 (株式会社野村資本市場研究所シニアフェロー)

(要約)

改革開放以来,中国は,経済発展と市場経済体制への移行を同時に目指しているが,この過程で,「中所得の罠」と「体制移行の罠」からなる「二つの罠」に陥る恐れがある。

現に,所得格差の拡大や,環境の悪化,官僚の腐敗に加え,農村部における余剰労働力の解消に伴う労働力不足に伴う潜在成長率の低下や,国有企業改革の停滞など,その兆候が表れている。

「二つの罠」を克服するために,習近平政権は,政治面では共産党による一党統治,中でも習近平総書記の権力基盤を強化する一方で,経済面ではできるだけ政府による経済活動への介入を減らし,市場と企業の活力を発揮させる「政左経右」路線を打ち出している。経済改革の具体的内容は,2013年11 月に開催された中国共産党の「三中全会」で決定されたが,既得権益集団の抵抗が予想される。それを抑えるために,民主化と法治化を中心とする政治改革を通じて,国民の支持を集め,権力を制限する仕組みを構築しなければならない。

キーワード:中所得の罠,体制移行の罠,三中全会,習近平

JEL Classification: O53,P26,P31

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中国の社会保障制度と格差に関する考察

柯 隆 (富士通総研経済研究所主席研究員)

(要約)

中国経済はこれまでの30余年間、飛躍的な成長を成し遂げたが、それは一貫して投資と輸出に依存するものだった。20年ほど前から中国政府は内需に依存する成長モデルへの転換を図ると明言したが、消費が盛り上がらず、成長モデルの転換は実現していない。一般家計の消費性向が低く抑制されている原因の一つは社会保障制度の未整備である。かつて、国有企業などの組織はその従業員の社会保障機能を担っていた。1998年ごろ、国有企業改革の一環としてその社会保障機能を企業の本体から分離し公的な社会保障制度が設立されている。しかし、社会保障制度の保障能力は依然不十分である。また、共産党幹部と普通の従業員に対する保障について大きな隔たりがある。とくに、農民の多くは社会保障サービスを受けていない。社会保障制度の整備が遅れることは単なる消費が盛り上がらないだけでなく、社会不安をもたらす原因でもある。

キーワード:中国経済、経済改革、社会保障制度、所得格差、構造改革

JEL Classification: G

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中国経済の構造変化と日中経済関係

瀬口 清之 (キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

(要約)

中国経済は,2012年春以降,雇用,物価の両面において安定を保持している。この間,GDPに占める第3次産業の比率が第2次産業を初めて上回ったほか,投資の比率が低下する一方,消費の比率が上昇し始めている。こうした構造変化の背景にあるのは,都市化の進展と過剰設備の削減だ。

このような構造変化を伴いながら,中国経済は依然高度成長を持続し,中国国内市場は急速な拡大を続けている。日本企業もそこに着目し,2011年以降,対中直接投資を急増させた。その後,尖閣諸島領有権問題,靖国神社参拝問題などを背景に日中関係は過去最悪の状況に陥っている。それにもかかわらず,中国政府は日中経済交流への悪影響を最小限に抑え,日本企業に対する対中投資誘致姿勢を積極化させている。尖閣問題直後は大半の日本企業が一時的に対中投資を凍結した。しかし,最近の状況を的確に把握している日本企業は,様々なリスクを考慮しながら,引き続き中国ビジネスへの積極的な取り組みを持続している。

キーワード:構造変化,雇用と物価,不動産市場,経常収支,政経分離

JEL Classification: E24,E31,E51,O1,P4

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