財務総合政策研究所

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フィナンシャル・レビュー
平成26年(2014年)第1号(通巻第117号)

平成26年3月発行

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<特集>日本財政・経済に関する定量的分析

日本の財政運営において必要とされる収支調整幅の大きさ
―動学的な財政不均衡に関する量的分析―

要約(日本語) 要約(英語) 本文(PDF:1876KB)PDF

  1. はじめに
  2. 先行研究と本論文の目的
  3. 政府支出と収入の見通し
  4. プライマリー収支の見通しと収支調整幅の大きさ
  5. 重要な経済変数の前提に関する感度分析
  6. 医療費の将来見通しに関するシナリオ

上田 淳二

(前財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室長)

米田 泰隆

(財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室研究官)

太田 勲

(財務省財務総合政策研究所客員研究員)

年金財政と支給開始年齢等に関する定量的分析

要約(日本語) 要約(英語) 本文(PDF:2066KB)PDF

  1. はじめに
  2. 2004年の年金制度改革とデフレが年金財政に与える影響
  3. 支給開始年齢の見直しに関する議論
  4. 支給開始年齢引上げがマクロ経済スライドと所得代替率に与える影響
  5. 年金財政バランスシートを用いた分析
  6. 世代ごとの年金資産に与える影響
  7. まとめ

中澤 正彦

(京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センター准教授)

影山 昇

(財務省財務総合政策研究所客員研究員)

鳥羽 建

(財務省財務総合政策研究所客員研究員)

高村 誠

(財務省財務総合政策研究所客員研究員)

高齢化と医療・介護費
―日本版レッド・へリング仮説の検証―

要約(日本語) 要約(英語) 本文(PDF:1614KB)PDF

  1. はじめに
  2. 高齢化が医療・介護費に与える影響
  3. 推計方法
  4. 推計結果
  5. 終わりに

補論1 日本における死亡前医療費

補論2 市町村国保に対する公費負担の状況

田近 栄治

(一橋大学国際・公共政策大学院特任教授)

菊池 潤

(国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部第4室長)

国民生活基礎調査の個票データによる所得税収変動要因等の定量的分析

要約(日本語) 要約(英語) 本文(PDF:1176KB)PDF

  1. はじめに
  2. 国民生活基礎調査(2010 年調査) の特徴
  3. 税制改正の効果の算出
  4. 税収の変動要因の分析
  5. 最後に

中澤 正彦

(京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センター准教授)

松田 和也

(財務省財務総合政策研究所客員研究員)

米田 泰隆

(財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室研究官)

菊田 和晃

(財務省財務総合政策研究所研究員)

多部門開放経済型の世代重複モデルの構造とそのシミュレーション結果
―少子高齢化の下での我が国の将来的な経済構造に関する定量的分析

要約(日本語) 要約(英語) 本文(PDF:1527KB)PDF

  1. はじめに
  2. 理論モデル
  3. カリブレーションとデータ
  4. シミュレーション結果
  5. 結論と今後の課題

付録 Calibrated Share Form について

石川 大輔

(財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室主任研究官)

中川 雅央

(東北大学大学院経済学研究科准教授)

中澤 正彦

(京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センター准教授)

新居 理有

(広島大学大学院社会科学研究科特任助教)

上田 淳二

(前財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室長)

4経済圏モデルによる日本経済予測分析:プロジェクションモデル・アプローチ

要約(日本語) 要約(英語) 本文(PDF:2610KB)PDF

  1. はじめに
  2. モデル
  3. 推定と分析
  4. 3経済圏モデルとの比較
  5. まとめ

中澤 正彦

(京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センター准教授)

小寺 剛

(京都大学経済研究所研究員)

清水 玄彦

(財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室研究官)

石川 大輔

(財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室主任研究官)

高村 誠

(財務省財務総合政策研究所客員研究員)


《日本財政・経済に関する定量的分析》

日本の財政運営において必要とされる収支調整幅の大きさ
―動学的な財政不均衡に関する量的分析―

上田 淳二(前財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室長)
米田 泰隆(財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室研究官)
太田 勲(財務省財務総合政策研究所客員研究員)

(要約)

本稿では,日本の財政運営において,政府が異時点間の予算制約式を満たす状態を実現するために必要とされる一般政府の収支調整幅の大きさを,定量的に分析した結果を示す。分析手法については,欧州委員会(EC)の「Fiscal Sustainability Report 2012」で公表された欧州各国の値と比較可能な数値を示すために,一定の経済・人口等に関する前提に基づく部分均衡分析の手法を用いて,EC と同様の2通りの指標を作成している。

具体的には,2060年度まで,現在の政策が変更されないという前提に基づいて,公的年金,医療,介護,教育などの「年齢関係支出」に関する政府の支出見通しを作成した上で,12030 年度までに政府債務残高対GDP 比を60%に到達させるために必要とされる収支調整幅(S1 指標),2異時点間の予算制約式を満たすために必要とされる収支調整幅の大きさ(S2 指標)をそれぞれ計算した。計算に当たっては,2013 年度当初予算,社会保障と税の一体改革を踏まえるとともに,景気変動や一時的な歳出などの影響を取り除くこととした。

計算結果は,S1 指標が対GDP 比19.9%,S2 指標が対GDP比12.9%と,いずれも欧州各国の値を大きく上回る数値となっている。また,金利,人口,物価および賃金の前提について,異なる値を設定した場合の感度分析の結果と,医療費の将来見通しについて,EC の「The 2012 Ageing Report」で公表されている複数のシナリオを日本に当てはめた結果も計算した。

これらの結果は,日本の財政運営において,動学的なコントロールを実現するためには,相当な規模の収支調整が必要であることを示しており,日本においては,家計や企業など民間部門の意思決定が,将来の政策変更に関する不確実な予想に基づかざるを得ない状態にあることが示唆される。

キーワード:財政の持続可能性,医療費

JEL classifi cation codes:C53,E27,I15

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《日本財政・経済に関する定量的分析》

年金財政と支給開始年齢等に関する定量的分析

中澤正彦(京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センター准教授)
影山 昇(財務省財務総合政策研究所客員研究員)
鳥羽 建(財務省財務総合政策研究所客員研究員)
高村 誠(財務省財務総合政策研究所客員研究員)

(要約)

本稿では、中長期の年金財政を見通すために、物価の変動が年金財政に与える長期的な影響と支給開始年齢引上げが年金財政に与える影響について、上田他(2010)で示された「年金財政モデル」を用いて定量的に分析する。

具体的には、まず、1990 年代末以降のデフレにより年金給付水準に係る特例措置により「たまり」が発生する中で、物価上昇率が異なる5つのシナリオを用いて、物価の変動が年金財政に与える長期的な影響について分析する。分析の結果、早期にたまりを解消し、その後も2%程度の物価上昇率で推移させるシナリオが、5つのシナリオの中で年金財政の改善に最もつながることを示した。

次に、支給開始年齢引上げが年金財政に与える影響について、所得代替率、バランスシート及び世代ごとの年金受給総額と3つの視点から分析する。分析の結果、例えば、支給開始年齢の引上げにより、中長期において将来期間の年金給付総額を増加させることが示された。また、世代ごとの年金受給総額の分析においては、支給開始年齢の引上げが多くの世代にとって年金受給総額の増加につながる一方で、そのタイミングにより特定の世代の年金受給総額が減少することを示された。

キーワード:年金財政、マクロ経済スライド、公的年金支給開始年齢の引上げ

JEL classifi cation codes:H55

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《日本財政・経済に関する定量的分析》

高齢化と医療・介護費―日本版レッド・へリング仮説の検証―

田近栄治(一橋大学国際・公共政策大学院特任教授)
菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部第4室長)

(要約)

高齢化の進展により医療費の増大が見込まれている。わが国の医療・介護保険制度はその財源の多くを公費に依存しており,厳しい財政状況の下での公費負担の拡大により,制度の持続可能性に懸念が持たれている。一方で,年齢とともに医療費が高騰するのは医療費が高額となる死亡者の割合が高くなるためであり,年齢の直接的な効果ではないとの指摘もある。Zweifel et al. (1999)はこの点に着目して,医療費の増加要因を明らかにするうえで,高齢化はその真の要因から目をそらし,本来検討すべき政策的対応をおろそかにするとして,高齢化はあたかも猟犬の臭覚を惑わす仕掛け(レッドへリング)であると警鐘を鳴らしている。本稿の目的は,日本におけるこの「レッドへリング仮説」を検証し,政策的含意を明らかにすることである。すなわち,死亡率の低下(長寿化)や健康増進による費用抑制効果を考慮した上で,高齢化が医療・介護費に与える影響について精査し,今後の医療・介護保険制度のあり方について検討する。本稿から得られた主な結果は以下のとおりである。

死亡率の低下を考慮した場合,2060 年度の1 人当たり医療費は通常の医療費推計に比して3.7%抑制されることとなり,わが国においてもレッド・へリング仮説は妥当と考えられる。健康状態の改善による費用抑制効果はさらに大きく,2060年度には13.9%に達することになる。一方で,以上の効果を考慮した場合でも1人当たり医療費は拡大することとなり,人口構成の変化が与える影響は甚大である。とくに,人口構成の変化が介護費に与える影響はより深刻であり,高齢化の進展による医療・介護費の拡大は避けられない。

公費負担に与える影響はより深刻である。高齢化の進展により,公費への依存度が高い後期高齢者医療制度や介護保険制度の対象者が拡大し,医療・介護費に対する公費負担の割合は,2010年度から2060年度にかけて,39.5%か ら47.0%に上昇する。逼迫する財政状況の下での更なる公費負担の拡大は,制度の持続可能性を一層低下させるのみならず,利用者や保険者のコスト意識を希薄化し,効率的なサービス利用の実現を阻害する要因ともなりうる。

キーワード:高齢化,医療・介護費,死亡前医療費,医療・介護保険財政

JEL Classifi cation: H50, I10

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《日本財政・経済に関する定量的分析》

国民生活基礎調査の個票データによる所得税収変動要因等の定量的分析

中澤 正彦(京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センター准教授)
松田 和也(財務省財務総合政策研究所客員研究員)
米田 泰隆(財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室研究官)
菊田 和晃(財務省財務総合政策研究所研究員)

(要約)

わが国の所得税収は,1991年度に26.7兆円でピークを迎えた後,2012年度の14.0兆円まで下落基調で推移してきた。この間,度重なる税率構造や所得控除の制度改正,景気対策としての定額減税・定率減税が実施される一方で,所得税の税源となる所得は1990年代半ばから減少傾向に推移してきた。

ここで,矢田(2011)では国民生活基礎調査の個票データからマクロの所得税を計算するモデルを提示しており,これを用いることで,個々の制度改正等が税収に与えた影響を定量的に把握することができる。さらに,所得等に一定の仮定を置くことにより,矢田(2011)の計算モデルを用いて一定期間の税収の変動の要因を検証することができると考えられる。

本稿では,国民生活基礎調査の個票データに対し矢田(2011)の計算モデルを用いることにより,1997年から2009年にかけての制度改正や恒久的減税等の景気対策の規模を定量的に示す。その上で,制度改正や所得水準の変化,社会保険料水準の変化による影響について一定の仮定を置き,その間の大きな所得税収の変動について定量的に分析する。

分析の結果,例えば,2005年の公的年金控除の引き下げと老年者控除の廃止は合計で同所得税収比4.2%の増収となるという結果を得た。一方で,景気対策として実施された定額減税・定率減税等の効果については,各年の税収を1998年から2005年までの間2兆円以上,減少させるという結果となる。また,1997年から2009年までの税収変動の要因を分析すると,所得の変動,その中でも名目的な価格の変動が大きく寄与していることがわかる。

本稿のような定量的な分析は,政策の検証やそれを踏まえた政策の企画立案に有効な材料を提供することになると考えられる。

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《日本財政・経済に関する定量的分析》

多部門開放経済型の世代重複モデルの構造とそのシミュレーション結果
−少子高齢化の下での我が国の将来的な経済構造に関する定量的分析

石川 大輔(財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室主任研究官)
中川 雅央(東北大学大学院経済学研究科准教授)
中澤 正彦(京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センター准教授)
新居 理有(広島大学大学院社会科学研究科特任助教)
上田 淳二(前財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室長)

(要約)

本稿は、複数の産業部門、対外部門、ならびに異なる年齢の世代が一時点に併存する「多部門開放経済型の世代重複モデル」を用いて、経済主体が合理的な意思決定を行うことを前提とした場合に、日本における近年の人口減少と高齢化の進展が、異時点間及び産業部門間の資源配分の変化を通じて、どの程度の規模でマクロ経済に影響を与えるのかについて、日本経済のデータを用いて数値ミュレーション分析を行った結果を示すものである。

それらの結果を見ることによって、人口構造の変化により、総人口1人あたりの付加価値、資本労働比率、賃金率、資本のユーザーコスト、マクロの貯蓄率がどの程度の大きさで変化するか、また、製造業が産出する貿易財が輸入で代替される結果、国内の製造業の産出額シェアがどの程度縮小し、非製造業の同シェアがどの程度拡大するか、長期的に貿易収支の赤字がどの程度の規模となるかといった点について、定量的に理解することができる。また、こうした人口構造が大きく変化する状況の下では、消費型の課税がある場合の方が、ない場合と比べて、1人当たり付加価値と資本労働比率が、ともに無視できない大きさで増加することも定量的に示される。

キーワード:多部門世代重複モデル、人口減少と高齢化の進展、産業構造の変化

JEL classifi cation: J11, H51, H68

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《日本財政・経済に関する定量的分析》

4経済圏モデルによる日本経済予測分析:プロジェクションモデル・アプローチ

中澤 正彦(京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センター准教授)
小寺 剛(京都大学経済研究所研究員)
清水 玄彦(財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室研究官)
石川 大輔(財務省財務総合政策研究所研究部財政経済計量分析室主任研究官)
高村 誠(財務省財務総合政策研究所客員研究員)

(要約)

本稿では、IMF が開発したGlobal Projection Model (GPM)を発展させ、日本経済の分析や予測を行うための新たなツールを提示する。本稿の特徴は以下の4点である:(1)既存の日本、米国、ユーロ圏の3経済圏モデルに中国を加えた4経済圏モデルを構築する。(2)4経済圏モデルのパラメーターを一括でベイズ推定する。(3)得られた推定結果を基に、各国の需要ショックと金融政策ショックに対するインパルス応答や、GDPギャップの歴史的分解を行う。また、推定結果から導かれる経済予測と現実経済の推移を比較し、その精度を検証する。(4)3経済圏モデルと4経済圏モデルの分析結果を比較し、モデル拡張の影響を検証する。これらの分析によって、モデルに中国経済を明示的に組み込むことが分析結果に様々な影響を与えることを確認する。

キーワード:マクロ経済モデル、予測、ベイズ推定

JEL classifi cation:C32、C53、E37

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