平成25年3月発行
| 目次 | 要約へ |
<特集>株式市場におけるボラティリティ・アノマリーとアクティブ運用
倉澤資成横浜国立大学名誉教授 責任編集
| | 倉澤 資成 (横浜国立大学名誉教授) |
| T.イントロダクション U.伝統的ファイナンス理論と「ボラティリティ・アノマリー」 V.「アノマリー」の行動経済学的解釈 W.「ベータ・アノマリー」と機関投資家の「ベータ選好」 X.「ボラティリティ・アノマリー」と個人投資家の「ギャンブル選好」 Y.結論 | 岩澤誠一郎 (名古屋商科大学大学院マネジメント研究科教授) 内山 朋規 (野村證券株式会社エクイティ・クオンツ・リサーチ部クオンツ・ストラテジー・グループ・リーダー) |
| T.はじめに U.リスクパリティ・ポートフォリオと先行研究 V.証券価格のモデル W.均衡の性質 X.債券市場の実証分析 Y.結語 A 補論 | 大森 孝造 (三井住友信託銀行株式会社パッシブ・クオンツ運用部運用執行役) |
| T.はじめに U.日米の株式市場から得られたリターン V.CAPMの再検証と平均分散フロンティア W.平均分散アプローチの改善方法 X.効率的フロンティアの事前把握 Y.対ベンチマーク運用の問題点 Z.まとめ [.補論 命題1 の証明 | 本多 俊毅 (一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授) |
| T.序論 U.ポートフォリオ分散に関するリスクのサブファクター V.線形モデルによるリスクプレミアム分析 W.ボラティリティ効果とサブファクターの関係 X.結論 補論 | 坂巻 敏史 (三菱UFJ 信託銀行株式会社資産運用部運用企画グループ・グループマネージャー) |
| T.導入 U.検証方法 V.検証結果 W.頑健性の確認 X.考察 Y.総括 Z.補論 | 山田 徹 (野村アセットマネジメント株式会社投資開発部シニア クオンツアナリスト) |
|
イールドカーブと景気予測 T.はじめに U.Nelson-Siegelモデルによるイールドカーブの表現 V.データ W.モデルと推定結果 X.ゼロ金利政策の影響 Y.結論 A Nelson-Siegelモデルの性質とデータへの当てはめ B 四半期系列GDPの月次への分割と平滑化 C Lasso推定
| 高岡 慎 (琉球大学法文学部講師) 藤井眞理子 (東京大学先端科学技術研究センター教授) |
《株式市場におけるボラティリティ・アノマリーとアクティブ運用》
「ボラティリティ・アノマリー」の行動経済学的探求
| 岩澤誠一郎 | (名古屋商科大学大学院マネジメント研究科教授) |
|---|---|
| 内山 朋規 | (野村證券株式会社エクイティ・クオンツ・リサーチ部クオンツ・ストラテジー・グループ・リーダー) |
(要約)
「リスクが高い証券に投資した場合の期待リターンは,リスクが低い証券に投資した場合のそれに比べて高い」との伝統的ファイナンス理論の「常識」に反し,現実の株式市場では,事前に測定された個別証券のベータ値とその後に実現されるリターンとの間,そして事前に測定された個別証券の銘柄固有ボラティリティとその後に実現されるリターンとの間に,それぞれ負の相関が観察される。我々は日本の株式市場における投資家行動の実証研究により,「ベータ・アノマリー」の背景に「ベンチマーク運用」を行う機関投資家による「高ベータ銘柄」への選好があること,そして「銘柄固有ボラティリティ・アノマリー」の背景に「ギャンブル選好」とでも呼ぶべき「ごく少ない確率で発生する多額の利益に対するリスク愛好的な傾向」を示す個人投資家−中でも信用取引を行う個人投資家−による「歪度の高い銘柄」への選好があることを示す。
キーワード:ボラティリティ,アノマリー,行動バイアス,機関投資家,個人投資家
JEL Classification: G11, G12, G14
(要約)
近年,リスクパリティと呼ばれるポートフォリオ選択法が,その好パフォーマンスから注目されている。この手法はポートフォリオのリスク配分を均すというものだが,好パフォーマンスの要因はほとんど説明されていない。
わずかな例外が Asness et al.[1] である。彼らは,レバレッジ制約によって低リスク資産が割安になることを,リスクパリティ・ポートフォリオに結び付けた。しかし,リスクとリスク配分は同一ではない。一方,投資家の自信過剰によっても低リスク資産が割安になることを示すことができる。この場合は,市場におけるリスク配分の大小が割高 / 安に直接繋がるため,常に市場ポートフォリオに比較してリスク配分を均すことが望ましいとのリスクパリティ・ポートフォリオを支持する結果が得られる。
本稿では,レバレッジ制約と自信過剰に関して,どちらがリスクパリティ・ポートフォリオの説明として適切か検討し,後者がもっともらしいことを示す。まずそれぞれの含意とリスクパリティ・ポートフォリオの関係を整理する。次に,両者の違いが現れる市場として債券市場を調べる。実証結果は,レバレッジ制約とは別の説明を要求するものとなった。
キーワード:リスク配分,低リスク効果,CAPM,市場ポートフォリオ
JEL Classification: G11, G12
(要約)
CAPM を背景にして,マーケットポートフォリオが株式運用のベンチマークとして用いられることが多い。しかし,日本の過去データを前提にすると,マーケットポートフォリオは効率的フロンティア上に位置するとは言いがたいばかりでなく,リスクに見合ったリターンが得られたかどうかも疑わしい。その一方で,過去データに含まれる情報を適切に用いて,推定誤差による影響を小さくするようにポートフォリオ構築を行うことによって,マーケットリスク以外のリスク要因からリターンが得られたことが示唆される。日本においてマーケットポートフォリオをベンチマークに採用し,さらにアクティブ運用を上乗せしてきた投資家の多くは,リターンの伴わないマーケットリスクをとってきたばかりではなく,リターンを得ることが難しいアクティブリスクを上乗せしてきた可能性が高い。
キーワード: 日本の株式市場,CAPM,平均分散ポートフォリオ,最小分散ポートフォリオ
JEL Classification: G11, G12
《株式市場におけるボラティリティ・アノマリーとアクティブ運用》
日本株式市場の銘柄相関リスクとボラティリティ効果
| 坂巻敏史 | (三菱UFJ信託銀行株式会社資産運用部運用企画グループ・グループマネージャー) |
|---|
(要約)
本稿では,市場ボラティリティを上方リスクと下方リスクについての個別銘柄分散成分と相関成分に分解し,その成分に対応するサブファクターを定義し分析することで,プライシングとしてのボラティリティ・ファクターの性質を検討し,市場平均ボラティリティに対する感応度とボラティリティ効果との関係も調べる。
先ず,ボラティリティの近似表現として4つの部分に分解する方法を提案する。この方法を,日本の株式市場に当てはめたところ高い近似精度が得られていると分かった。
これらのサブファクターを用いて日本の株式市場を調べたところ,市場ボラティリティの増減はプレミアムの評価を伴ったリスクファクターの可能性があり,また,ボラティリティ効果とは整合的だった。これは市場ボラティリティ上昇に対するヘッジ需要を表すと考えられ,程度は異なるが個別銘柄ボラティリティ水準の増減は上方リスク下方リスクともに評価されていた。一方,相関水準の増減リスクはあまり評価されていなかったが,株価下落で相関が高まる時期のヘッジ需要として評価する場合があり,この傾向は近年強まっていた。将来リターンに関する分析ではこれらの性質を利用した戦略について考察する。ボラティリティ効果で低リターンの傾向がある高ボラティリティ銘柄は市場上昇時には個別に上がり下落時には多くの銘柄同様に下落しヘッジ効果の期待できる銘柄ではなかった。
キーワード:ボラティリティ効果,下方リスク,上方リスク,平均個別銘柄分散,平均相関係数,ボラティリティ分解
JEL Classification: G12
(要約)
世界の株式市場を対象に,ボラティリティの低い株式の長期パフォーマンスの検証を行った。各市場において個別株式ではなく業種指数を用いることで,米国では1920 年代,日本では1950 年代,その他の先進国で1970 年代からの信頼性の高い観測が可能となった。
検証結果によると,最小分散ポートフォリオ等の低ボラティリティ株ポートフォリオは,ほぼ全ての市場で時価加重型指数よりも長期的に高いリスク調整後リターンを示すことが確認された。両者の差は,低ボラティリティ株は高ボラティリティ株よりも将来のリスク調整後リターンが高いという低ボラティリティ効果に加えて,時価加重型市場指数に株価変動が近い株式ほど将来のパフォーマンスが低いという非時価加重効果へ分解される。すなわち,低ボラティリティ株ポートフォリオは,ボラティリティの低い株式を数多く,時価加重せずに保有することで,相対的に高いパフォーマンスを実現していると考えられる。
キーワード: ポートフォリオ運用,株式戦略,低ボラティリティ効果,最小分散ポートフォリオ,非時価加重
JEL Classification: G11
(要約)
イールドカーブの形状から将来の景気動向が読み取れることは古くから指摘されており,特に米国ではこれを実証する多くの分析が行われている。それらの多くは,回帰モデル等により金利のスプレッドの拡大が景気拡大の先行指標であることを示している。
本稿では,1990 年代以降の日本経済についてイールドカーブの形状には景気に関するどのような情報が含まれているのかに関する実証分析を行った。具体的には,1992 年1 月から 2008 年6 月までの国債価格データから計算したイールドカーブをNelson-Siegelモデルから推定された水準,傾き,曲率の3ファクターで表現し,これらファクターの変動が3 度の景気循環を含むの変動とどのように関係づけられるかを検証した。その結果,全体としてはカーブの傾き(=スプレッド)だけではなく,曲率も将来の実体経済の動きについて有用な情報を含んでいることが確認された。
キーワード: 日本国債,イールドカーブ,Nelson-Siegelモデル,景気予測
JEL Classification: E43, E47, E58