平成25年1月発行
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<特集>企業ダイナミクスとマクロ経済
細野薫財務総合政策研究所総括主任研究官 責任編集
| | 細野 薫 (財務総合政策研究所総括主任研究官) |
| T.はじめに U.先行研究の整理 V.仮説 W.データ X.推定結果 Y.おわりに | 岡室 博之 (一橋大学大学院経済学研究科教授) 加藤 雅俊 (関西学院大学経済学部専任講師) |
| T.はじめに U.わが国におけるプロダクト・イノベーションの現状 V.プロダクト・イノベーションにおける構造推定モデル W.構造推定と推定結果 X.政策の効果に関する定量的な分析 Y.結論 | 大橋 弘 (東京大学大学院経済学研究科教授) 五十川 大也 (東京大学大学院経済学研究科博士課程) |
| T.はじめに U.日本の製造業における製品構成別企業データの構築 V.日本における製品転換の特徴 W.製品転換が企業パフォーマンスに与える効果 X.分析結果のまとめ | 川上 淳之 (学習院大学学長付国際研究交流オフィス准教授) 宮川 努 (学習院大学経済学部教授) |
| T.はじめに U.理論仮説 V.既存の実証研究 W.IPO の動機と資金使途 X.上場企業の株式発行(SEO),社債発行の動機と資金使途 Y.おわりに | 細野 薫 (財務総合政策研究所総括主任研究官) 滝澤 美帆 (東洋大学経済学部准教授) 内本 憲児 (財務総合政策研究所研究員) 蜂須賀 圭史 (財務総合政策研究所研究員) |
| T.はじめに U.関連研究のサーベイ V.データ W.ハザードレートの推計方法 X.推計結果 Y.おわりに | 細野 薫 (財務総合政策研究所総括主任研究官) 布袋 正樹 (財務総合政策研究所研究官) 梅崎 知恵 (前財務総合政策研究所研究員) |
| T.序論 U.産業レベルでみた無形資産投資の推計 V.無形資産の蓄積 W.無形資産を含む成長会計 X.結論 | 宮川 努 (学習院大学経済学部教授) 比佐 章一 (横浜市立大学国際総合科学部准教授) |
| T.はじめに U.歪みと経済全体のTFP 損失の計測 V.事業所レベルの歪みの要因 W.おわりに | 細野 薫 (財務総合政策研究所総括主任研究官) 滝澤 美帆 (東洋大学経済学部准教授) |
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わが国所得税課税ベースの新推計 T.はじめに− 課税ベースの推計の意義 U.本推計の説明と内容 V.推計結果の概要 W.推計からのインプリケーション X.おわりに
| 森信 茂樹 (中央大学法科大学院教授) 中本 淳 (財務総合政策研究所客員研究員) |
スタートアップ企業における雇用の成長と構成変化の決定要因
−研究開発型企業とそれ以外の企業の比較分析−
| 岡室 博之 | (一橋大学大学院経済学研究科教授) |
|---|---|
| 加藤 雅俊 | (関西学院大学経済学部専任講師) |
(要約)
本論文は,日本のスタートアップ(新規開業)企業を対象とする独自の継続アンケート調査に基づいて,創業後の雇用の成長と構成変化の要因について実証的に分析する。企業の成長と雇用創出について多くの研究が行われてきたが,研究開発型のスタートアップ企業については,十分な研究の蓄積があるとは言えない。また,雇用の量的変化だけでなく,スタートアップ企業がどのような雇用(正規雇用等の就業形態)を生み出すかも重要であるが,雇用の構成変化(質の変化)についての実証研究は乏しい。そこで本論文は,研究開発型企業とそれ以外の企業を比較し,雇用の量的拡大と質的変化の要因を明らかにする。回帰分析の結果,創業者の人的資本は雇用成長には影響しないが,正規職員の比率上昇に対して斯業経験と経営経験が有意な正の効果を持つことと,研究開発型企業の開業時における公的補助金が雇用の成長のみならず正規雇用の相対的な拡大をもたらすことが明らかになった。
キーワード:スタートアップ,雇用成長,正規雇用,研究開発,公的補助金
JEL Classification: J21, L25, L26
(要約)
本論文ではプロダクト・イノベーションが生み出される動学的なプロセスを寡占市場における企業の利潤最大化の枠組みを用いてモデル化したうえで,イノベーションに係る政策の効果をわが国のデータを用いて定量的に評価することを目的とする。2006 年から2008 年までの企業レベルのデータを用いて構造推定を行ったところ,プロダクト・イノベーションには技術的な波及効果が存在し,その影響はイノベーションが活性化することを通じた競争激化による負の効果を上回っていることが明らかになった。そこで企業がイノベーション活動を行うのに要する固定費用に対する公的助成は社会厚生を増大させるが,構造推定の結果を用いてシミュレーションを行ったところ,その乗数効果は1.4 程度となることが分かった。またシミュレーションの結果から,わが国における現状の公的助成は必ずしも効率的に付与されているとは言えず,公的助成を受けた企業のうち4 割程度は,助成がなくともイノベーションを実施したであろうことが推測された。つまり本論文から,イノベーションの活性化に係る現行の公的助成のあり方について,効率化を行う余地が存在することが示唆される。
キーワード:プロダクト・イノベーション,波及効果,動学的寡占市場モデル,マルコフ完全均衡,補助金,イノベーション調査
JEL Classification: C73, L13, O31, O38
(要約)
Bernard, Redding and Schott (2010)に倣い,「工業統計」を用いて作成した財・企業レベルのデータベースを用いて,日本企業の製品転換について実証分析を行った。最初に,複数財生産企業と単一財生産企業を比較し,前者のパフォーマンスが後者を上回っていることを示した。産業レベルにデータを集約して行った分析から,競争的な環境である産業ほど,製品転換は多く行われていることが明らかになった。一方,企業単位の推計では,製品の追加を行った企業は雇用も含めて企業パフォーマンスを改善しているが,製品の削減を行った企業では,雇用の減少よりも産出量の減少が大きいため,生産性は悪化している。
キーワード: 参入,退出,複数財の生産,製品転換,労働生産性,TFP,Propensity Score Matching Model
JEL Classification: L11, L21, L25, L60
資本市場を通じた資金調達と企業行動
―IPO, SEO, および社債発行の意思決定とその後の投資・研究開発―
| 細野 薫 | (財務総合政策研究所総括主任研究官) |
|---|---|
| 滝澤 美帆 | (東洋大学経済学部准教授) |
| 内本 憲児 | (財務総合政策研究所研究員) |
| 蜂須賀 圭史 | (財務総合政策研究所研究員) |
(要約)
本稿では,1990年代後半以降の日本企業を対象として,非上場企業のIPO(新規株式公開)と上場企業の株式発行(SEO)・社債発行による資金調達の決定要因,および,資金調達後の企業行動を分析した。
IPOに関する分析では,収益性,健全性が高い企業はIPOをする確率が高いこと,また,IPOをした企業は,その後非IPO企業に比べて,設備投資や研究開発を有意に増加させていることが明らかになった。この結果は,IPOが単に株価のミスプライシングを利用するためだけではなく,設備投資や研究開発のための資金調達手段として用いられていることを示している。
上場企業による株式発行(SEO)・社債発行に関する分析では,時価簿価比率およびレバレッジが高い企業は株式発行割合が高く,売上高伸び率および債務不履行確率が高い企業は社債発行割合が高いことなどが明らかになった。株式発行に関する結果は,マーケットタイミング(ミスプライシング)仮説および資本構成に関する既存の理論仮説(トレードオフ,およびペッキングオーダー)と整合的であり,社債発行に関する結果は,銀行によるホールドアップ仮説と整合的であるが,銀行の再交渉機能を重視する仮説は支持されない。また,上場企業による資金調達後の投資行動を分析したところ,社債発行は企業の設備投資を有意に増加させるものの,SEOが設備投資,研究開発を有意に増加させる効果は限定的であった。
キーワード: IPO,SEO,社債,設備投資,研究開発
JEL Classification: G30, E22, O30
外部資金制約と大規模投資(投資スパイク)のタイミング
| 細野 薫 | (財務総合政策研究所総括主任研究官) |
|---|---|
| 布袋 正樹 | (財務総合政策研究所研究官) |
| 梅崎 知恵 | (前財務総合政策研究所研究員) |
(要約)
企業の大規模投資(投資スパイク)のタイミングは,外部資金調達の制約に影響を受けるだろうか?本論文では,非上場企業を含む企業レベルの四半期データを用いて,投資スパイクのハザードレート(前回の投資スパイクからの経過時間の関数として,新たな投資スパイクを行う確率を表したもの)を推計し,外部資金調達制約の有無がハザードレートにどう影響しているかを検証した。この結果,外部資金依存度が高い産業に属する企業,有形固定資産比率が低い産業に属する企業,および,キャッシュフローに比して債務残高が大きい企業は,それ以外の企業と比べて,ハザードレートが低いことが明らかになった。これは,外部資金制約が投資スパイクのタイミングを遅らせることを示唆している。また,推定されたハザードレートは時間の増加関数であり,理論予測と整合的である。
推計結果は,財政金融政策ができるだけ早い効果を生むためには,企業の外部資金制約を緩和する政策が有益であることを示唆している。
キーワード: 投資スパイク, 外部資金制約
JEL Classification: E22, G31
(要約)
本稿では,JIPデータベースとその他の1次統計をもとに,日本の産業レベルでの無形資産投資を推計している。日本の無形資産支出は,2000年代で約43兆円と,GDPの約9%を占める。これを産業別にみると,IT部門に属する産業では,他の産業に比べて,高い無形資産投資比率となっている。2008年の無形資産ストックは136兆円であるが,2000年代になると,いくつかの産業では,厳しいリストラを行ったことで,無形資産ストックの伸び率がマイナスに転じている。また成長会計の手法を使って,無形資産の経済成長に対する貢献を調べると,日本経済を牽引するIT部門では,無形資産の成長への貢献がみられる。このことから,成長政策を考える場合は,従来の産業分類に囚われず,新たな産業区分で成長促進策を考察する必要がある。
キーワード: 無形資産投資, IT 部門, 成長会計, ソロー残差
JEL Classification: E01, E22, O31, O32
(要約)
資源の非効率な配分(ミスアロケーション)は,企業・事業所の規模や参入・退出行動を歪め,経済全体の生産性(Total Factor Productivity: TFP)を低下させる。本稿では,日本の製造業を対象に,事業所レベルの資本と産出の歪み(wedge)を計測し,その規模分布,参入・退出,および製造業全体のTFPへの影響を試算した。さらに,歪みの要因を分析した。主要なファインディングは,以下のとおりである。
第1に,もし資本と労働が米国と同程度に効率的に(すなわち,限界生産力が均等化されるように)再配分されれば,日本の製造業全体のTFPは7.7%上昇する。また,過去30年の間に,資源配分の効率性は低下傾向にあった。
第2に,現実の事業所の規模分布は,資本と産出の歪みがない場合の仮想的な分布に比べると,全体のばらつきが小さく,また規模の大きな事業所(例えばトップ1%)のシェアが小さく,規模の小さな事業所(例えばボトム20%)のシェアが大きい。
第3に,資本と産出の歪みが大きい産業ほど退出・参入事業所の割合が低く,同一産業内では資本と産出の歪みが大きい事業所ほど,退出確率が高い。
最後に,歪みの要因としては,借入制約に直面する可能性が高い産業に属している事業所ほど資本の歪みが大きく,また,生産性の高い事業所ほど産出の歪みが大きい。
本稿の結果は,資源配分の効率性を改善させることよって生産性を改善させる余地は大きいが,そのためには,金融システムの資金配分機能を向上させるとともに,規模に依存した政策を見直し,生産性の高い事業所に対する制約を除く(あるいは生産性の低い事業所に対する補助を削減する)ことが重要であることを示唆している。
キーワード: 資源の非効率な配分, 経済全体の全要素生産性(TFP), 事業所のダイナミクス, 規模分布
JEL Classification: O47, E44
(要約)
本稿では,先行研究における推計上の問題点を克服しつつ,93SNAを用いて所得税課税ベースの推移をマクロ推計した。森信・前川(2001)で推計された1997年以降の動きをみると,所得控除の改革を受けて2000年代半ばに課税ベースは拡大したものの,その後は,基本的には高齢化に伴う社会保障費の増大に伴って,課税ベースは減少していく傾向にある。所得税の再分配機能を高めるためにも,課税ベースの拡大は今後の税制上の大きな課題である。
具体的には,先進諸外国の税制改革の流れでもある所得控除から税額控除・給付付き税額控除へのシフトを進めていくこと,女性の社会進出に対する中立性を欠く配偶者控除を見直すこと,公的年金等控除・医療費控除を見直すこと,などが検討課題となる。
キーワード: 所得課税,所得控除,課税ベース,税制改革,配偶者控除,公的年金等控除
JEL Classification: E62, H24