財務総合政策研究所

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フィナンシャル・レビュー
平成24年(2012年)第2号(通巻第109号)

平成24年3月発行

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<特集>世界の資金循環と日本の金融市場

吉野直行慶應義塾大学経済学部教授   責任編集
 

序文[841kb,PDF]

吉野 直行

(慶應義塾大学経済学部教授)

資金の流れの変化と財政安定化のための財政ルール

要約(日本語) 要約(英語) 本文[1.4mb,PDF]

T.はじめに

U.バブル期から今日までの資金の流れの変化

V.財政不安定化の経路と財政ルール構築の必要性

W.国債の需給を考慮に入れた経済成長モデルの拡張

吉野 直行

(慶應義塾大学経済学部教授)

溝口 哲郎

(麗澤大学経済学部助教)

東日本大震災と日本の株式市場における投資家行動

要約(日本語) 要約(英語) 本文[1.6mb,PDF]

T.はじめに

U.投資部門別の株式売買データ

V.分析結果

W.まとめと展望

亀坂 安紀子

(青山学院大学経営学部教授)

地域金融機関の意思決定構造とソフト情報の活用

要約(日本語) 要約(英語) 本文[2.0mb,PDF]

T.序論

U.金融機関の意思決定構造と中小企業向け融資に関する既存の経済学的分析

V.アンケート調査から読み取れる地域金融機関の融資決定プロセスの実態

W.金融機関アンケートのミクロデータを用いた簡単な実証分析

X.結語

小倉 義明

(立命館大学経営学部准教授)

根本 忠宣

(中央大学商学部教授)

渡部 和孝

(慶應義塾大学商学部准教授)

金融危機下での国際インターバンク市場のリスク・プレミアム

要約(日本語) 要約(英語) 本文[1.4mb,PDF]

T.はじめに

U.TIBORとLIBOR:データの概要

V.1990年代と2000年代のLIBORとTIBORの推移

W.インターバンク市場における2つのリスク

X.計量分析

Y.おわりに

福田 慎一

(東京大学大学院経済学研究科教授)

 

<特別寄稿>

  EVAから見た大手銀行の合併 

要約(日本語) 要約(英語) 本文[2.2mb,PDF]

T.イントロダクション

U.EVAとは

V.各銀行のEVAの推移

W.実証分析

X.結論

 

菅 和志

(住友信託銀行調査部、前財務総合政策研究所研究員)

大野 太郎

(尾道大学経済情報学部講師、財務総合政策研究所特別研究官)


《世界の資金循環と日本の金融市場》
 

資金の流れの変化と財政安定化のための財政ルール
 

吉野 直行 (慶應義塾大学経済学部教授)
溝口 哲郎 (麗澤大学経済学部助教)

(要約)

日本の資金循環を,資金循環表を用いて,それぞれの時代毎に資金の流れの特徴を説明する。景気のよかった1980 年代と比べると,さまざまな部門での資金の流れが減少していることなどが説明される。特に,近年では,海外からの所得収支の増加による企業の貯蓄の増大が,流動性預金などの預金として預け入れられ,金融機関を通じて,国債の購入に向かっていることが説明される。金融機関から企業の投資に流れていた資金が,最近は激減している。

次に,ギリシャと日本の国債市場の違いを見る。日本の国債残高/GDP比率は,ギリシャよりも大きいが,国債市場は安定性を保っている。国債の需要面に着目し,国内金融機関,国内投資家による国債需要の大きい日本と,海外投資家による国債需要の大きいギリシャの違いを説明し,需要サイドにより,両国の国債安定化の違いが説明される。

従来の国債市場の安定化議論であるドーマー条件は,国債の供給サイドのみから導出されているため,必ずしも正しくないことを指摘し,国債需要を考慮したモデルで,国債市場の安定化条件を導出する。財政の安定化のためのルールも提示され,金融政策のテイラールールに対応する財政ルールが説明される。最後に,日本経済の成長回復のためには,財政赤字による大量国債の発行を抑え,日本の資金が,民間資本ストックの蓄積に向かう必要があり,その適正レベルについてモデル分析を行う。

キーワード:国債市場,財政ルール,財政安定化条件

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《世界の資金循環と日本の金融市場》
 

東日本大震災と日本の株式市場における投資家行動
 

亀坂 安紀子 (青山学院大学経営学部教授)

(要約)

東日本大震災前には上昇基調にあった株価は,震災後一旦急落し,その後数日のうちにある程度回復した。近年,日本の株式市場で大きな取引シェアを占めているのは海外の投資家であるが,震災直後は,通常時以上に海外の投資家が市場で活発に取引を行っていた。震災前後に日本の株式をネットで購入していたのは海外の投資家だけであり,株式の投資主体別に2011 年1月以降のネットの購入額を累計してみると,日本の株式は海外の投資家によって買い支えられていたことがより明確に示される。過去に同一データを分析した先行研究では,証券自己売買は,海外の投資家と同一のポジションをとっていることが多い(海外の投資家の純購入額が増えている時には,証券自己売買の純購入額も増えていることが多い)ことが示されていたが,震災前後には,国内の証券会社(証券自己売買)やそれ以外の金融機関は,ネットで売却し続けていたことが示される。VAR 分析では,震災前後は国内の金融機関や証券自己売買など,むしろ国内の投資家に特定の売買パターンが観測されたことが示される。また,原子力発電所の事故の影響についても分析を試み,東京電力株式会社の株式リターンを変数に加えたVAR 分析も行ったが,分析期間中に事故の状況に特に敏感であったと思われる海外の投資家の売買との間に特別な因果関係は観測されなかった。

キーワード: 東日本大震災,日本の株式市場,投資家行動

JEL Classification: G11, G14

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《世界の資金循環と日本の金融市場》
 

地域金融機関の意思決定構造とソフト情報の活用
 

小倉 義明 (立命館大学経営学部准教授)
根本 忠宣 (中央大学商学部教授)
渡部 和孝 (慶應義塾大学商学部准教授)

(要約)

独自に設計した金融機関向けアンケート調査から収集したデータを元に,地域金融機関の融資審査・条件設定プロセス,及びこれらプロセスでの定性情報の利用に関する実態を明らかにした上で,支店への融資決定権限の委譲の程度とソフト情報利用の程度の間に正の相関があるとの既存理論の提示する仮説の統計的検定を試みた。統計的有意性はそれほど高くないものの,正の相関は観察され,弱いながらもこの仮説を支持する結果を得た。また,金融機関の資産規模と定性情報の利用度の間に統計的に有意な正の相関が観察された。この結果は,資産規模が大きいほど金融機関の意思決定が集権的でソフト情報の利用度が低いとの直感的前提に基づいて設計された従来の実証研究の結果の解釈には注意が必要であることを示唆している。

キーワード: ソフト情報,中小企業金融,意思決定構造

JEL Classification: G21, L14, L23, D82

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《世界の資金循環と日本の金融市場》
 

金融危機下での国際インターバンク市場のリスク・プレミアム

福田 慎一 (東京大学大学院経済学研究科教授)

(要約)

本稿では,東京市場とロンドン市場という2つの国際インターバンク市場におけるリスク・プレミアムが金融危機下でどのように変化したかを分析する。分析では,日本で金融危機が顕在化した1990 年代末の動向を簡単に振り返ったのち,2007 年夏から2009 年にかけて発生した世界的金融危機下での2つのインターバンク市場のリスク・プレミアムの推移を比較検討する。分析で利用される利子率は,東京銀行間取引金利TIBOR とロンドン銀行間取引金利LIBOR である。平常時には,東京市場はロンドン市場とほぼ完全に統合されており,ドル建てか円建てかに関わらずTIBOR はLIBOR とほぼ連動している。これに対して,金融危機時には,両者の間に有意な乖離が観察された。ただし,どのような乖離が発生するかは,金融危機のタイプによって大きく異なった。まず,日本で金融危機が顕在化した1990 年代末には,ドル建てか円建てかに関わらずTIBOR がLIBOR を上回った。一方,2000 年代末の世界的金融危機下では,円建てではTIBOR がLIBOR を下回ったが,ドル建てではTIBOR がLIBORを依然として上回った。円建てかドル建てかでTIBOR とLIBOR の大小関係が逆転する現象は,金融機関の相対的信用リスクの違いだけでは説明できないものである。本稿では,信用リスクに加えて,流動性リスクの存在がこのような一見パラドキシカルな結果を説明する上で有益なことを明らかにする。

キーワード: 流動性リスク,短期金融市場,リスク・プレミアム,世界金融危機

JEL Classification: G15; G12; F36

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《特別寄稿》
 

EVAから見た大手銀行の合併

菅 和志 (住友信託銀行調査部、前財務総合政策研究所研究員)
大野 太郎 (尾道大学経済情報学部講師、財務総合政策研究所特別研究官)

(要約)

本稿ではEVA(Economic Value Added)という経営指標に焦点をあて,国内の大手銀行について過去20 年間(1989-2008 年度)の業績を確認するとともに,銀行合併の効果について検証した。

考察の結果,まず業界全体のEVA は2000 年代中頃(2005-07 年度)を除いてほぼマイナスであり,銀行界としてはこれまで株主が期待するだけの利益を獲得できていなかったことが示された。また,2000 年前後を中心に多くの大手銀行が合併に取り組んだものの,EVA の向上という点から見るとき,現時点で必ずしも全ての合併が成功を収めているわけではない。実証分析の結果も踏まえるとき,合併の効果を享受する上で一つの重要な要素となっているのが貸出シェアの拡大であり,合併後に貸出シェアを拡大させた銀行ほどEVA を上昇させている点が明らかとなった。

キーワード: EVA,銀行,合併

JEL Classification: G21, G34

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