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第107回世銀・IMF 合同開発委員会における議長声明(仮訳)(2023年4月12日 於:ワシントンD.C.)

開発委員会は、本日2023年4月12日に開催された。

昨年10月、世界銀行グループ(WBG)は、苦労して得られた開発の成果を覆すような、複層的な危機への対応能力を向上させることを目的として、「世銀改革ロードマップ」の作成を要請された。これには、極度の貧困を撲滅し、繁栄の共有を促進し、地球規模課題に取り組み、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するための、ビジョンとミッション、業務モデル、そして財務能力の見直しが含まれる。本日の会合で、開発委員会のメンバーは、この作業について議論を行った。総務は、これまでの野心と進捗について歓迎の意を示したとともに、10月にマラケシュで開催される会合までに、主要なマイルストーンを達成するため、更なる建設的な作業が行われることを期待する。彼らは、理事会とWBGマネジメントが、実施すべき詳細な行動を含む作業計画を最終化することを期待している。

開発委員会のメンバーは、WBGマネジメントとスタッフが、貧困との闘いを続けるための開発資金を歴史的な規模で急増させつつ、予期せぬ危機に大規模に対応したことを評価した。WBGは、過去3年半の会計年度において、過去最大の3,300億ドルの支援を提供した。WBGは、この期間における途上国向け気候資金の世界最大の提供者でもあり、その額は約900億ドルに達するとともに、パリ協定への準拠を図るための計画を描いてきた。総務は、WBGのプログラムが、緊急対応と長期的な強靱性に貢献し、包摂的かつ持続可能な経済成長を加速し、マクロ経済及び金融の安定を支え、水とエネルギーへのアクセスに対処し、食料不安と栄養失調に取り組み、医療品やワクチンを含むパンデミックへの備え及び対応のための支援を行い、貧困層や脆弱層に対する社会保護を拡充し、教育システムを強化し、雇用創出と民間部門の開発を促進し、各国の債務透明性・持続可能性の問題への取組みを支援し、ジェンダー平等と女性・女子のエンパワメントを促進してきたことを認識した。彼らはWBGに対し、こうした取組みについて枠組みを維持しながら継続していくこと、及び、SDGsの達成に向けたコミットメントを再確認することを求めた。開発委員会メンバーは、今後、自然や生物多様性等の環境課題への支援が拡大されることを歓迎した。また、彼らは「ジェンダー戦略」の更新と「脆弱性・紛争・暴力(FCV)戦略」の中間レビューを期待している。

ほとんどの開発委員会のメンバーは、ロシアのウクライナ侵攻が大規模な人道的影響と世界経済への有害な影響を及ぼし続けていることを認識した。彼らは、それを強く非難し、ウクライナやその他の戦争被害国への経済支援の継続を呼びかけた[1]。また、彼らは、世銀がウクライナ当局、欧州委員会、国連と協力して実施した「被害状況及び財政需要に関する緊急評価」の改訂を称賛するとともに、早期の復興ニーズ(140億米ドルと推定される)や、戦争による被害を受けた最貧国のニーズを含め、世銀や他の開発パートナーが支援を継続するよう呼びかけた。この状況に対する他の見解や異なる評価があった。

WBGのビジョンは、貧困のない世界である。極度の貧困の撲滅と繁栄の共有の促進という目標は、今後もこのビジョンの中核であり、活動の中心であり続ける。これらの目標の推進には、関連する指標とターゲットを活用しつつ、持続可能性、強靭性、包括性に更なる焦点を当てることが必要である。総務は、WBGミッション・ステートメントの暫定的更新にかかる議論を歓迎し、その確定を期待している。

開発委員会のメンバーは、全ての支援対象国への支援の強化につながるであろう、進化するミッションを実施するために、WBGの業務モデルを向上する提案を歓迎した。このアジェンダは、金融仲介基金(FIFs)や信託基金(TFs)を通じたものを含め、支援対象国とのエンゲージメント、手段、インセンティブ、譲許的資金へのアクセスについて扱っている。また、このアジェンダは、開発のための追加資金の動員やカスケード・アプローチも対象としている。開発委員会のメンバーは、国別、地域別、そして全世界的な診断、統合的な知識支援、成果志向の強化と能力開発、コーポレート・スコアカードの更新、新たな成果連動型の融資手段を通じた、より強固な分析によって、各国のオーナーシップと国別支援モデルを強化する提案を歓迎した。彼らは、中所得国(MICs)に対する支援の考え方を強化するとともに、低所得国(LICs)、小国やFCVの影響を受けている国々に改めて焦点を当てることを要求した。また、彼らは、国、部局、スタッフに対する金銭的・非金銭的なインセンティブに関する具体的な提案を期待するとともに、提案されたグローバル・プライオリティ・プログラムの開発に向け、明確な選定基準に焦点を当てつつ、更なる取組みを行うことを奨励した。

総務は、急増する資金ニーズに対応するための臨時の手段を含む、危機への備え及び対応に対する強化されたアプローチに関するオプションに期待している。彼らは、戦略的パートナーシップの深化、地域アプローチの強化や、上流段階での戦略的なエンゲージメントの強化によるOne WBGアプローチの実施を更に強化するための提案を要請した。開発委員会のメンバーは、ビジネス環境を改善しつつ、民間資本の増加、投資の促進、公的部門の役割強化のために、WBG横断で野心的かつ統合的なアプローチを実施することを求めた。彼らは、国内資金動員の役割を強調し、かつ、WBGマネジメントに対して、この分野における野心的なコミットメントの策定を求めた。総務たちは、WBGの業務における既存の譲許的ファイナンスプールの活用を含め、譲許的資金を効果的に動員し配分する方法についての議論を支持した。また、彼らは、国別支援モデル、One WBGアプローチ、各国における強固なプレゼンス、グローバルな知識の創造と普及、そしてIMFや他の国際開発金融機関、国連システム、二国間パートナーや民間セクター等とのパートナーシップなど、WBGが有する中核的な強みをどのように活かしていくかという議論が継続されることを期待している。

開発委員会のメンバーは、WBGが、開発の課題に対応し、その拡大したミッションを支えるために、十分な財務能力を有することの確保にコミットしている。彼らは、IBRDにおける対融資資本比率の最低基準の19%への改定、市場投資家からのハイブリッド資本調達の試行、二国間保証プログラムの拡大等を通じて、WBGの財務能力を高めるというコミットメントを強く再確認した。開発委員会のメンバーは、今後10年間で最大500億ドルのファイナンス能力を追加する可能性を有するこれらの取組みの実施について、理事会からの更なる報告を期待する。彼らは、協定から法定貸出限度額(SLL)を削除する提案を検討することに合意した。開発委員会のメンバーは、「トリプルA」格付や、優先弁済の取扱(PCT)、長期的な財務持続可能性を維持しつつ、自己資本の十分性に関する枠組(CAF)レビューの残りの提言を検討する取組みの継続を期待する。これには、民間投資家のグローバル新興国市場データベース(GEMs)へのアクセス拡大、株主によるポートフォリオ保証プラットフォームの検討、FIFs、TFsや協調融資の最適な活用、IDAのバランスシートの最適化、強化された請求払資本と株主購入型ハイブリッド資本に係るオプションの開発、特別引出権(SDRs)の潜在的かつ自主的なチャネリングの検討が含まれる。彼らは、複数の危機が最貧国に及ぼした影響を認識した。また、IDAの財源を守ることへの強い支持を表明したとともに、IDA危機対応ファシリティを検討していく。開発委員会のメンバーは、IBRDからIDAへの純益移転を継続することや、借入国の負担増加を回避することの重要性を再確認した。彼らは、マラケシュ総会及びそれ以降に向け、IBRDの財務能力を強化するためのオプションについて更に議論、検討していく。

総務は、先日のトルコ及びシリアでの地震で見られたような、自然災害がもたらす悲劇的な人命の損失と広範囲にわたる破壊を認識した。彼らは、被害を受けた全ての人々に最も深い哀悼の意を示した。開発委員会のメンバーは、壊滅的な自然災害が生じた際に、国際社会が迅速な人道的対応を行うことが確かめられたことを心強く思うとともに、世銀による被害状況及び財政需要の評価がシリアでの対応に活用されたこと、及び、世銀がトルコにおいて、適時かつ的を絞った復旧・復興支援を提供したことを称賛した。

開発委員会のメンバーは、デイビッド・マルパス氏に対し、グローバルな開発成果に影響を与える複合的な危機に対応するための前例のない資金支援の急増等、歴史的に困難な時期において、WBGとして強力かつ堅固なリーダーシップを発揮したことに深い感謝の意を表した。彼らは、WBGのミッション、戦略目標、国レベルの開発成果に対するマルパス氏のコミットメントを評価する。また、スタッフへの支援や、彼の在任中の多くの重要な成果につながった、強力なリーダーシップにも称賛の意を示した。総務たちは、彼の今後の挑戦が成功することを祈念した。彼らは、WBG次期総裁の選定プロセスの結果を期待している。

開発委員会は、世界経済の統合を守るための、国際協力の拡大と多国間主義の強化の要請を再確認した。

次の開発委員会は、モロッコ・マラケシュにおいて、2023年10月に開催する。

1 開発委員会は2022年3月2日に、国連総会が141カ国の多数で、「憲章第2条4項に違反するロシア連邦によるウクライナへの侵略を最も強い言葉で非難し」、「ロシア連邦が直ちにウクライナに対する武力行使を停止するよう要求する」決議であるES-11/1「ウクライナへの侵略」を採択したことを想起した。35カ国が投票を棄権し、5カ国が決議に反対票を投じ、いくつかの国は立場を表明しなかった。