「PRE戦略検討会」(第4回)における有識者ヒアリング 議事要旨
「PRE戦略検討会」(第4回)における有識者ヒアリング
「議事要旨」
1.日 時:平成22年11月25日(木)10:30〜12:00
2.場 所:財務省第三特別会議室
3.出席者
〔有識者〕
| 川口有一郎氏 | 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科教授 |
|---|---|
| 高橋滋氏 | 一橋大学 国際・公共政策大学院長 |
| 田中英隆氏 | 格付投資情報センター常務執行役員 |
| 西久保浩二氏 | 山梨大学 教育人間科学部教授 |
| 望月久美子氏 | 東急住生活研究所代表取締役所長 |
| 持永勇一氏 | 新日本有限責任監査法人常務理事 |
| 山内弘隆氏 | 一橋大学大学院 商学研究科教授 |
〔財務省〕
| 吉田泉 | 財務大臣政務官 |
|---|---|
| 中村明雄 | 理財局長ほか |
4. 概要
○ 冒頭、吉田財務大臣政務官より、概要以下のとおり挨拶。
・ 財務省では、本年6月にとりまとめた「新成長戦略における国有財産の有効活用」において、庁舎・宿舎を含む国有財産について、「PRE戦略」の考え方等を踏まえた検討を行うこととしたところ。これを受け、「PRE戦略検討会」を開催し、これまで3回にわたり「PRE戦略の概論」「不動産の保有コスト」「公務員宿舎の在り方」について、10名の有識者からご意見を伺った。
・ 今日は、国有財産行政における「PRE戦略」のとりまとめに向け、これまでのご意見等を集約した「論点整理」についてご議論を賜わりたい。「PRE戦略」については、財務省政務が中心となってとりまとめ、12月上旬を目途に公表したい。
○ 財務省事務局より、資料に沿って説明。
○ 川口氏より、提出資料「国有財産の有効活用について」を基に、概要以下の通りコメント。
・ PRE戦略とは何かについて、プロセス面から整理した「PREヘキサゴン」を踏まえてコメントする。
・ 未利用地の貸付か売却かの判断や、PFIの導入による保有コストの削減は、PREアセットマネジメントということができる。行政財産を普通財産に転換し、成長機会を創出することは、PREオプションアプローチということができる。国有財産の柔軟な活用により、社会的効率性につなげること等は、PRE戦略的再編ということができる。「論点整理」については、PREに係る自分なりの整理と符号しており、更に深化されているという印象を持つ。
・ 公務員宿舎は、経済的には合理的なものであるが、世論や社会の流れも考慮する必要がある。
○ 高橋氏より、概要以下の通りコメント。
・ 公務員宿舎は、公務員の福利厚生の側面と国有財産の活用という側面があり、PRE戦略は、主に後者に係るものである。例えば、宿舎を普通財産に転換した場合には、定期借地や交換、信託などを積極的に活用することが有効であり、行政財産においても、合築など行政財産としての機能を維持したまま活用を図ることが重要。
・ 宿舎の必要性について、各省庁から出されている意見(転勤、緊急参集、深夜勤務)には、十分な根拠がある。長時間の勤務に加えて、遠距離通勤では、労働条件が悪化するし、深夜帰宅のタクシー代もかさむ。地方からの交流人事や人材の確保の観点からも重要。宿舎による福利厚生は、過剰でも過小でもない水準にすべき。
・ 都心三区には危機管理用宿舎などを置き、若手などのハードな職務を行う者はできるだけ職場の近くに、中堅や幹部は山手線内外あたりに住まわせる体制とするなど、一定の再編も考えられるのではないか。
・ 宿舎使用料は、民間とのバランスも考えながら、適切な水準とすべき。
・ 宿舎について国民の理解を得るためには、宿舎に係る費用や必要性について積極的に情報公開するべき。また、社会的効率性を確保するという視点から、地域との共生や防災機能の確保などを行うべき。
・ 国と民間は、労働市場において、人材を分け合う関係にあり、公務員になることの魅力を確保する観点からも、職場から近いところに宿舎を配置することも重要。学生は、民間企業から好条件を示されると、公務員試験を受けることすら諦めるなど、最近はなかなか公務に就かない傾向がある。省庁の中には、優秀な学生を確保できないところもあり、憂慮している。
○ 田中氏より、概要以下の通りコメント。
・ 新成長戦略の下、国有財産の活用戦略によって国富の増大を資するため、PRE戦略を策定することは、理に適ったもの。
・ 民間のCRE戦略を下敷きにしたPRE戦略は、地方公共団体を対象として整理されてきたが、概念は必ずしも固まっている訳ではない。戦略の検証に際しても、民間ではROEなどの定量的な指標で評価することができる。他方、PRE戦略では、PDCAサイクルの中でも、定量的な指標を用いて、全体の検証を統一的に行うことは難しいが、定量的な指標で効果測定していく姿勢は重要。
・ すべての国有財産をカバーしてPRE戦略を実行していくのは膨大なエネルギーを要するため、効果を把握しやすいものなどに絞り込み、フェージングしながら実施することが実効性に繋がるだろう。
・ 地方公共団体のPRE戦略との整合性が重要であり、国と地方のコンセンサスのための仕組みづくりが重要。
・ 手法として確立され、ノウハウが蓄積されているPFIの拡充と推進により、国有財産の有効活用を図ることが重要。民間の事業運営能力等や、政策目的に沿った附帯事業の質を評価できるため、PFIは有効な手段である。但しPFIは個別性が強いことから、総括的なPRE戦略の下で活用することによって、PFIの真価はより発揮される。
○ 西久保氏より、概要以下の通りコメント。
・ 公務員宿舎について、円滑に職務を遂行する業務上の必要性という基準がある。また、最近の公務員は、若年職員の離職、メンタル上の問題などがあるが、人材戦略として、人的資源に対する投資と見ることもできる。
・ 日経連の企業は、法定外福利の50%を住宅支援に充てている。国においても、宿舎を提供すれば、結果的に、質の高い行政サービスを通じ、成長戦略にもつながる。
・ 緊急性を有する業務に就く公務員に対しては、適切な立地の宿舎の提供が必要。また、長時間労働の上に長時間通勤となると過労をもたらすこともあり、労働力の再生の観点から、適切な立地や広さに加え、設備など宿舎のアメニティ面も検討すべき。
・ 宿舎使用料については、官民の均衡を考慮すべき。大企業でも社宅の使用料は引き上げており、社宅に入居できる者と入居できない者との間の不公平の是正を行っている。公務員についても、妥当な使用料とすべき。引き上げるべきか否かは、広さや立地を基に検討すべき。
・ 宿舎以外の福利施策を含め、透明性が求められている。
○ 望月氏より、概要以下の通りコメント。
・ 民間のCRE戦略を活用してPRE戦略を立てるというのは前向きで良いこと。従来の枠にとらわれず柔軟な発想を持つことに、PRE戦略の意義がある。
・ PRE戦略の評価尺度を作るのは簡単ではないが、PRE戦略の最終的な目的は、国民の幸福、豊かな生活であり、幸福度や環境貢献度を測ることが重要。一方、運営コストや最低限の収益性などについても考慮する必要がある。
・ 個々の不動産のポテンシャルを把握するため、マーケティング的思考により、ニーズと供給をマッチングするべき。その際、国の所有物だから国が利用するという考えにとらわれるのではなく、幅広い参加者を拾い上げることが重要。また、不動産のポジショニングに際しては、なるべく外部の目で判断すべき。
・ 土地には個別性があり、共通解はない。既成の枠にとらわれることなく、柔軟に対応すべき。
・ マーケティングや利用方法を決定していく際に、誰がニーズを拾い上げ、誰が調整を行って決定するのか、プロセスの仕組みづくりが重要。
・ 宿舎については、PRE戦略の文脈の中では、必ずしも保有にとらわれずに量と質を決める必要があり、建替え、リノベーション、用途の複合化などを柔軟に考えるべき。
○ 持永氏より、概要以下の通りコメント。
・ 不動産は固有性が高く、数値化が難しい中、新成長戦略では、国有財産の有効活用の方針が示され、ベクトル合わせがなされた。また、新成長戦略のブレイクダウンにより、PDCAサイクルのステップに進んでいるものと理解。
・ 戦略の達成水準や社会的効率性の評価は難しく、評価基準については、コンセンサスが必要となる。定性的な情報を公開することにより、社会の目による牽制をかけるというガバナンスという方法もあるのではないか。
・ 一般に、サービスに対する価値の認識が薄い中、長期安定的な行政サービスの提供の際には、そのためのコストがかかるについて、十分に伝えていく必要がある。
・ 特別会計所属資産にも目が向けられていることは良いことであり、情報の一元化についても進めるべき。財務省と国土交通省の連携はもちろん、その他の省庁との連携も重要。また、余談だが、第三セクターが保有している民間の土地の有効活用も課題となっている。
○ 山内氏より、概要以下の通りコメント。
・ 財政逼迫する中、国有財産の切り売りではなく、有効活用を行うことは重要。また、国有財産の機能等の維持・向上も行うべき。
・ 民間手法を国有財産行政に取り入れ、できるだけ指標化、数値化を目指すことが重要。国有財産に係る政策ニーズについては、例えば、公共事業で使われている費用便益分析のように、ベネフィットとして捉えることも考えられる。
・ すべて数値化することは難しく、総合的・定性的情報で判断することも重要であり、情報を公開し、国民的合意の下で価値を把握していくこととすべき。
・ ライフサイクルコストの算出に際して大事なのは割引率。アセットの特性を踏まえ、今後、理論的な詰めと議論の進展を期待したい。
・ 国有財産は、大規模で種類も多いため、PRE戦略を一度に実行することは難しい。ノウハウの蓄積、データベースの整備などを経て、部分最適から最終的な全体最適に向けて、一歩ずつ推進していくべき。
・ PFIは、情報・ノウハウが蓄積されており、問題点や論点がはっきりとしているため、有効な方法となる。
・ PRE戦略の構築上の課題として、具体的な目標設定を如何にするのかということがあげられる。宿舎の例であれば、どういう目的に沿って、どういう形で、どういう手段といった、目標設定を明確にした上での施策のあり方が問われていると思われる。
○ 意見交換における、の概要は以下のとおり。
(川口氏)
・ 戦略の評価には、多次元の尺度が必要。アメリカのCRE戦略では、企業活動のすべてをデータベース化し、その中から抽出した情報を基にした評価手法が導入されている例もあるが、データベース化などは、予算制約もあるので、可能なところから推進することが重要。
(吉田政務官)
・ 公務員宿舎について、世論の目などがある中、既成の考え方にとらわれず、施設の複合化を行うことも重要。保育所の併設なども行われているが、ショッピングセンター等の併設については、どう考えるか。
(望月氏)
・ 土地のポテンシャリティに基づいて、最適解を得るべき。ショッピングセンターも、開かれているものであれば、社会性は高いのではないか。
(山内氏)
・ 宿舎にショッピングセンターを併設することくらいであれば、推進すべき。
(高橋氏)
・ その他にも、行政施設の合築のほか、民間賃貸住宅との合築ということなども考えられる。
(田中氏)
・ 過去にも、宿舎に小さな店舗を併設する案件はあった。その例の場合は、周囲の商業施設との関係で、結果的に実現しなかったが、いずれにしても、PFIでは官が単一の事業を決めるのではなく、戦略の中で選択の幅を与え、民間に事業性などを考えさせ、その知恵を生かすことが重要。
○ 中村理財局長より、以下の通り閉会の挨拶。
・ 本日は、国有財産における「PRE戦略」について、とりまとめに向けた議論をすることができた。頂いたご意見を踏まえ、PRE戦略という方向性を示した上で、個々の不動産への適用については、柔軟に考えていきたい。
