財務総合政策研究所

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環境問題と経済・財政の対応に関する研究会
第3回会合議事要旨

(平成18年12月13日(水) 10:00〜12:30)

 

(1 ) 報告:「京都メカニズムの活用について」
    経済産業省産業技術環境局京都メカニズム推進室  遠藤健太郎室長
 
日本は京都議定書において1990年比で6%の温室効果ガス削減義務が課されている。昨年閣議決定した目標達成計画では、省エネなどの国内対策や森林吸収源による対応を行ってもなお不足する部分1.6%分を京都メカニズムで補うこととされている。
京都メカニズムには以下の3種類の制度がある。(1)共同実施(JI):先進国同士で温室効果ガス削減事業を行い、削減分を目標達成に利用する、(2)クリーン開発メカニズム(CDM):先進国が途上国で温室効果ガス削減事業を行い、削減分を目標達成に利用する、(3)排出権取引:先進国同士が排出量の枠を売買する。
世界全体で温室効果ガスを削減するには、削減費用が相対的に安く、今後排出量の増大が予想されている途上国で削減を行うことが効果的で、それが京都メカニズムの意義といえる。
最近、CDMを中心に政府承認案件のクレジット量が急速に拡大している。CDMにおいては、削減事業を行ったとき、それがなかった場合(ベースライン)と比較してどの程度の追加的な排出削減量が生じたかを、どのようにして設定するかということが重要である。
政府によるクレジットの取得事業はNEDOに委託されている。取得方法には、(1)直接取得:NEDOがCDMプロジェクトに参加して直接クレジットを取得する、(2)間接取得:クレジット購入契約を有する事業者との間でクレジット転売契約を締結する、(3)現物取得:すでにクレジットを保有する者からクレジットを購入する、の3つの方法が想定されており、当面は(1)と(2)により取得を進める。

(2

)
報告:「排出権市場の現状」
    住友商事株式会社地球環境部 山本隆三部長
 
米国では1995年からSO2の排出権取引が行われている。キャップアンドトレード方式で、過去のエネルギー消費量に基づいた割当を行い、翌年への繰越を認める一方、排出量が超過した場合には罰金がある。
この排出権取引は非常に効果的に機能しており、SO2の排出量は大幅に減少した。米国政府はその要因について、制度が非常に単純だったこと、透明性が確保されていたこと、排出量の測定が正確かつ簡単に行われたことを挙げているが、それ以前の米国におけるSO2の排出量が相当多かったことも事実である。
この制度が成功した理由としては、SO2の限界削減費用が容易に計算できたことも挙げられる。また、規制値と排出権価格の関係や、それが電力価格に与える影響も算出することができた。すなわち、適切な排出レベルを容易に設定可能であった。
一方、EUの排出権市場では価格が乱高下している。これは排出権が余っているという認識が市場で広がっていることによる。また、投機筋の資金が流入していることも影響していると言われている。
EU市場の問題点として、排出権の割当を各国に任せていることが指摘される。各国とも産業界に甘い割当をする一方、電力業界に厳しい割当をしたため、不公平感が漂っている。
本来、排出権取引は技術革新を行って温室効果ガスの削減を促進することが目的であるはずだが、現在のEU市場ではそうなっていない。甘い割当によって余った排出権を売って、事実上政府からの補助金を受けているのと同じような状態になっている。
京都議定書における排出権の需要を考えると、EUや日本は一定量を購入するものと思われるが、カナダは議定書からの離脱をほのめかしている。供給サイドに関しては、ロシアやウクライナがいわゆるホットエアを抱えており、これを売却することを表明すれば供給過剰となり市場価格は崩落する。このため、戦略として売却を明確にしていない。結果、需要、供給の両面で先行きが不透明な状況にある。
京都議定書の第一約束期間終了後の2013年以降の枠組みに目途がついていない。このため、長期的なプロジェクトに取り組みづらくなっている。
排出権取引市場が効果的に機能するには技術革新や真の排出削減につながる仕組みが必要である。削減コストが把握できず、将来的な枠組みもはっきりしない中では、効果的な仕組みを設計するのは非常に困難である。

(3

)
自由討議
 
政府はNEDOを通じて排出権を購入する枠組みを政府分について作っているが、企業が経団連の自主行動計画に基づき、その未達分について自ら排出権を購入した場合、それは政府に無償で移転されることとされている。
以前はイギリスで排出権取引が行われており、それに自発的に参加すれば炭素税を軽減するという制度だった。EUに市場が形成されたため、なくなるものと思われる。
限界削減費用が分かるのならば、排出権取引のような市場メカニズムによらずとも、個別割当制度により最小費用で削減を達成できるのではないか。
先行きへの不透明感が強い中で、京都議定書の第一約束期間が終わる2012年まで、排出権市場が市場らしい機能を発揮しないまま、時間だけが過ぎていってしまうのではないか。
NEDOによるクレジットの取得について、どの方式でどのくらい取得するのかという計画は現在のところ存在しない。
すでに排出権を必要としないイギリスが今年に入って大幅に排出権を取得しているなど、最終的に必要となる人だけではなく、転売目的のプライベートファンドなどが取得に動き出している。
先行して実績を積み、排出権取引における世界市場をリードしようという意味からは、EUの狙いは達成されているのではないか。

(4

)
報告:「温暖化対策の国内制度設計」
    大阪大学社会経済研究所 西條辰義教授
 
京都メカニズムの意義は、最小のコストで最大の効果を得ることにある。そのために、これまで無料であった温室効果ガスの排出に価格をつけ、化石燃料の価格を上げることで消費を抑えようとした。
京都議定書において各国の排出量に上限を設けたということは、量を固定して価格で調整するメカニズムを採用したといえる。これを与件とする限りにおいて、国家の枠組みとしては排出権取引のような制度を採用することが必要である。
そのための国内制度として、「上流還元型排出権取引制度」を提案している。これは、化石燃料を輸入する主体に、輸入した化石燃料に含まれる炭素含有量と同量の排出権を購入するよう義務付けるものである。輸入主体は日本政府または海外から排出権を調達する。日本政府の持つ排出権は京都議定書に定められた排出枠総量と同じである。企業の負担については、政府が得た収入の一部を還元することで軽減される。
この制度には以下のような利点がある。(1)削減量が確定するので、確実に京都議定書を遵守できる、(2)制度の執行費用が少ない、(3)すべての産業をカバーできる、(4)個々の企業にキャップがかからない、(5)下流の企業も参加できる、(6)政策の自由度が保たれる、(7)国庫に収入が得られるのでそれを技術開発に投資できる、(8)費用負担が少なくて済む。
排出権取引について実験を行うと、将来に対する不確実性が高い状況では、取引が始まった時点では排出権価格が高いため、各自が過剰な削減をしてしまい、排出権の需要が減少し供給が過剰になるので、やがては排出権価格が暴落し、経済効率性が低くなってしまうケースがある。EUETSにおける価格の動きは正にこれと同じである。
上流型と下流型を比較すると、下流型では自ら排出権を購入することができるゆえに、過度に楽観的な見通しを持ってしまい失敗するケースがある。上流型のほうが経済効率性に優れ、排出量を押さえ込むことができる。
現在の日本の制度では、経団連の自主行動計画以外では誰が排出権を確保するのかというインセンティブを与えていないという問題がある。

(5

)
自由討議
 
ヨーロッパやカナダは購入の見込みを明確にせず、駆け引きにより排出権の価格を下げる方向に持っていこうとしている。この制度では、日本は確実に買うということを世界に公表することとなるが、政治の世界の駆け引きとしてそれで良いのかと感じる。
この制度では、安ければいい、省エネ技術や技術移転は関係ないということから、ホットエアを購入する人が出てくる懸念がある。京都議定書は温室効果ガスを削減するというのが大目標にある。ホットエアを購入するというのは温室効果ガスの削減につながっていないことから問題ではないか。
京都議定書の枠組みで考えると、ロシアがホットエアを供給できることは正当化されている。また、ロシアに対しても、ホットエアだから購入しないということではなく、適当に購入することによって、彼らが国内で削減するためのインセンティブが出てくるのではないか。
ホットエアの購入については、マネーロンダリングのような可能性がある。購入したAAUはロシアで削減したAAUと思っていても、そうではない可能性もあることも考えるべき。
この制度によりエネルギー価格が上昇するが、経済に与える影響は少ないとのシミュレーション結果もある。上流の企業は大手を振って下流に価格転嫁して良いのではないか。
考えなければならないのは、国内独自の制度というのが今後の世界の中でどうなっていくのか。例えばEUは独自のルールで独自の制度を作っているが、これを、アメリカの州やノルウェー、スイスへ拡張しようとしている。そのように国際ルール化していく中で、日本が国内排出権制度を設計する際には、国際的な制度とどのようにリンクさせていくかというのがポイントとなる。
排出権取引の場合、様々な投機的な思惑の観点からバブルが崩壊するという問題点があると思うが、それをいかに回避するのかというのを考える必要がある。実験研究では、先物市場を整備すると相対的にバブルが起こりにくいということが分かっている。他に、しっかりした情報が提供されることも有効。
基本的にはシステムの執行コスト、情報を集めてきっちり取るという観点からは、上流で抑える方が、数が少ないことからコストが少なくてすむという点で、メリットが多いのではないか。
排出権取引制度を設計するに当たっては、京都議定書の目標達成のみを考えるのか、研究開発や設備投資を促進することまで考えるのか、日本経済に与えるコストはどうなるのか、など様々な観点から検討することが必要である。
国内において、優れた環境技術を持つ大企業が、そういうものを持たない中小企業に技術移転した場合に、その削減量をベースライン方式によりクレジットとしてカウントする国内版CDMのような制度も検討すべきではないか。
 


以 上