「アメリカ経済研究会」
第6回会合議事要旨



日時:平成15年3月18日(火)14:00〜16:00

開催場所:第一特別会議室


(1


)一橋大学大学院商学研究科小川教授の報告の概要「アメリカへの資金流入の変化と世界経済への影響」

アメリカへの資本流入は、90年代後半から2001年初め頃まで増加傾向にあったが、2001年以降減少傾向にある。アメリカからの資本流出は、90年代後半から2000年初め頃まで増加傾向にあったが、2000年以降減少傾向にある。

近年のこれら資本流入、資本流出の減少の背景には、ITブームの崩壊、2001年9月の同時テロ、イラク攻撃等による世界的なリスクの高まりからリスクマネーが世界的に流れにくくなっていること等があり、ホームバイアスが強まっている可能性がある。

90年代後半から2000年、2001年頃までのこのような資本フローの急増においては欧州の寄与度が高かった。近年の急減についてもやはり欧州の影響が大きい。

本日は、アメリカの経常収支赤字の持続可能性についての分析結果を報告する。Catherine Mannが取り上げている、経常収支赤字の持続可能性をみる3つの視座から分析した。対象データは1960年第1四半期〜2001年第4四半期である。

第一に、IS(貯蓄・投資)バランスからみる。経常収支の赤字は、民間の貯蓄投資のギャップと政府の貯蓄投資のギャップを足したものに等しいというマクロ経済学的な考え方から、経常収支赤字について分析する。

第二に、貿易フローからみる。財だけの貿易にとどまらず、サービス、所得収支も含めて貿易フローの視点から分析する。

第三に、資本流入、資本流出の観点からみる。国際収支全体を考えるとき、経常収支の赤字がある場合、資本収支の黒字で支えられなければならない。

これら3つの視座から分析した結果、アメリカの経常収支赤字は持続不可能という結果になった。

次に、経常収支の赤字と資本収支の黒字をセットにして、アメリカの国際収支全体で持続可能かどうか分析した。これは、経常収支と資本収支の合計である国際収支全体では持続可能という結果になった。

しかし、この分析のデータは2001年までであり、最近の資本移動の変化を含んでいない。したがって、資本の流れが既に変化している可能性があり、今後は経常収支の赤字をまかなうことができなくなるのではないかという危惧も残る。

世界経済への影響としては、為替レートが大きく変動し、あるいはアメリカの経常収支赤字が持続不可能だということがはっきり露呈してくることによって、益々アメリカに資金が流れなくなる可能性がある。そうなれば、影響がスパイラル的に発生してくることも考えられる。


(2


)自由討議の概要

アメリカの経常収支赤字は、80年代半ばまででみれば持続不可能にみえる。しかし、90年にかけて経常収支が黒字に戻った時点では持続可能にみえる。どこの時点までとるかによって結果はかなり違ってくるのではないか。

欧州からのアメリカに対する直接投資が明らかに細りつつある。これが足元の持続可能性に大きな影を落としているのではないか。

2001年までは、アメリカの経常収支赤字は民間部門の資本流入だけでかなり補えたが、2002年以降は、公的部門の資本流入に依存する度合いがかなり高まっている。

今後、アメリカへの公的な資本流入の中で、中国のウェートが大きくなっていくのではないか。それが元・ドルレートにどういう影響を与えるかということが、目先の重要な論点の1つになるのではないか。

アメリカの経常収支赤字の背景には中国の貿易黒字がある。元はドルにペッグしているから、為替による調整は難しいのではないか。

持続不可能だということは、何らかの調整が必要だということを意味している。どういう調整が必要になるのかということに興味がある。

アメリカへの資本流入は、2001年9月の同時テロがあった7-9月期においてもそれほど減らなかったのに、2002年1月以降かなり減少してきている。また、2002年半ば以降、バミューダ等タックス・ヘイブンからの資本流入が増えている。これはアメリカへの投資が増えているというよりも、今まで流出していた資金が本国回帰しているのではないか。

経常収支赤字の調整では、80年代後半の日米間の貿易不均衡が大きいときに、政府の赤字を減らすか貯蓄を増やすような政策をとるべきであると日本側が主張したように、国内の貯蓄投資バランスを直してもらうことが経済学的な正解である。消費が伸びて貯蓄が減っていること、黒字になっていた財政もまた赤字になってきていること等が経常収支赤字拡大の背景にある。

アメリカは、政府支出が増えているおかげで世界中の需要不足を補っているといういい方もできる。日本や欧州のように景気が低迷している国が反論しても弱い気がする。

直近では、アメリカの経常収支赤字が大きいままで、輸出、輸入ともに減少しているところが気になる。これを放置しておくと、経済が世界的にシュリンクしてしまうのではないかということが、一番大きなリスクではないか。

今のアメリカの経常収支赤字の拡大は構造的なものではなく、循環的なものではないか。今は財政も一旦は黒字に戻ったこともあり、80年代ほど深刻ではないのではないか。

調整の仕方がどの程度の速度で起こるのかに関心がある。為替や金利の変動が急速に起こるのか、あるいは徐々に起こるのか、いろいろなシナリオが考えられると思うが、それぞれの場合において世界経済にどのような影響があり得るのか。

我々は経済が今後どうなるのか知りたい。大胆な仮定を置くなり、いくつかのシナリオを作って分析するなりしてもらえればと思う。

 


以上


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