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国際金融システム改革の主要課題 |
1.透明性の向上、国際的スタンダードの確立 | |
― | IMFのSDDS(特別データ公表基準)強化、IMF作成の財政政策及び金融政策の透明性に関係する2つのコード、IMF自体の透明性、 OECD・BIS・IASC(国際会計基準委員会)・IAIS(保険監督者国際機構)・IOSCO(証券監督者国際機構)等の取組み |
2.金融監督の強化 | |
― | プルーデンシャル規制の強化(先進国/新興市場国)、ヘッジファンド対策、金融安定化フォーラム |
3.国際的な資本移動への対応 | |
― | 資本自由化の前提と順序、モニタリング強化、資本規制の是非 |
4.安定的な為替相場制度の確立 | |
― | 主要通貨間の通貨の安定、新興市場国にとっての適切な為替制度 |
5.暫定委・開発委改革 | |
― | 暫定委代理会合、評議会化の可能性 |
6.IMFサーベイランス、プログラム、手続きの改善 | |
― | 国際的な資本移動への対応、実体経済把握の強化、通常時及び危機時の適切な財政・金融政策・為替制度、構造政策への関与の低下、IMFの透明性及びアカウンタビリティ向上のための手続き改善 |
7.国際的資金供給機能の強化 | |
― | 増資発効、NAB発効、IMFの予防的クレジットライン |
8.民間関与 | |
― | 民間銀行の融資残高の維持、Collective Action Clauses、Temporary Stay(公的/民間部門の対外債務の一時的モラトリアム) |
9.社会的弱者の保護 | |
― | 社会政策に関する基準(世銀) |
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(注) | ○ : | 国際的議論の流れ |
◎ : | 上記のうち日本が従来から特に主張し、国際的コンセンサスに反映されているもの | |
☆ : | 日本の主張 |
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○ | 各国が民間セクターのコーポレートガバナンスや会計基準を含めた透明性に関する基準の策定及び遵守にコミット。 | |||
◎ | IMFの透明性の向上に関し、事務局ペーパー等の公開等についての進展を歓迎。 | |||
◎ | IMFの業務と政策に関する情報公開や事後評価を通じてIMF自身が透明性向上に寄与していくことの重要性を再確認。特に、IMFが業務、プログラム、政策、及び手続きの効率性について組織的な内部及び外部評価の継続することを要請。(本年4月G7・暫定委員会) | |||
○ | IMFのSDDS(特別データ公表基準)強化を実現。特に、外準の内訳等のより詳細な公表に合意。 | |||
○ | IMFの財政透明性に関する原則及びその実施のためのマニュアルの完成。 | |||
○ | IMFの金融・金融監督政策の透明性に関する原則を検討中。 | |||
○ | 関係国際機関の取り組み | |||
・ | OECD → コーポレート・ガバナンスに関する基準を5月の閣僚理に提出予定 | |||
・ | IASC (国際会計基準委員会) | → | 1月に包括的会計基準を事実上完成 | |
・ | バーゼル銀行監督委員会 | → | 自己資本規制基準改訂作業中 | |
・ | その他、IOSCO(証券監督者国際機構)、IAIS(保険監督者国際機構)等でも、スタンダードの強化等に取り組んでいる。 |
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○ | 先進国におけるプルーデンシャル規制を強化。 |
○ | 新興市場諸国におけるプルーデンシャル規制及び金融システムを更に強化。 |
◎ | ヘッジファンド等高レバレッジ機関(Highly Leveraged Institutions= HLIs)に投融資を行っている金融機関のリスク管理体制を強化する方法(間接規制)の検討 → 99年1月バーゼル銀行監督委「HLIsと銀行取引に関する報告書」発出済み。 |
◎ | より広い文脈で、ヘッジファンド等自身による更なる報告及び情報開示が必要あるいは実現可能なのかどうかを含めて、金融監督のフレームワークに対するHLIs及びオフショアセンターの活動から生じる影響に関し検討。 |
◎ | G7主導での金融安定化フォーラムの開催(各国大蔵省、中央銀行、金融監督当局の代表及び関連する国際機関が出席) |
(注) | 同フォーラムには、HLIs、オフショアセンター、短期資本移動の国際金融の安定性への影響、を研究するための3つの作業部会が設立された。 |
一昨年来の新興市場諸国における危機の一因は、短期資金の急速な流出入にあったことから、短期的あるいは投機的な資本移動への対応を図る。 |
◎ | 各国の資本自由化・資本規制の経験に関する分析、及び資本自由化の適切な速度及び順序についての検討。 |
◎ | 具体的進展としては、98年秋の暫定委コミュニケには日本等の強い要請もあってIMF理事会での検討が明記され、本年3月の理事会での包括的な分析・理論に続いて、4月の暫定委コミュニケにおいてもIMFが今後引き続き分析・検討していくことが合意された。 |
◎ | 新興市場国の資本自由化はよく順序立った方法(orderly and well-sequenced manner)で、各国ごとにcase by caseで進めるべき。順序よくというのは、金融セクターの強化や貿易の自由化等の他の政策を前提にするという意味でも、また、資本流出入のカテゴリーごとの自由化の順序ということでも必要(特に、短期資本の流入の自由化には慎重さが必要)。 |
◎ | 資本移動、特に短期資本移動のモニタリングの強化が必要。投資家側(ヘッジファンド等)のモニタリング強化も必要。 |
◎ | Volatileな資本移動を防ぐために、整合的な金融政策・為替制度が重要。 |
◎ | 資本規制は一般に価格を活用したもの(market friendly)、一時的また広範に課されるほど有効。 |
○ | 資本流入、特に短期資本に対する規制の導入は一時的には流入量を減少させ、より根本的な政策実施のためのbreathing spaceを与えうるが、いずれその効果は落ちてくるものであり代替手段とはなりえない。 |
○ | 資本流出を防ぐための規制は広範なものとならざるを得ず、それは結局rollover率やnew moneyの流入の減少に結びつくことから、危機の際に、一時的に資本流出の再規制を実施することは疑問。 |
☆ | 攪乱的な資本流入を防ぐための措置はmarket friendlyである限りより一般的に正当化されるべき。 |
☆ | 危機においては、居住者に対する資本流出規制の再導入などの方策も、オプションの一つとなりうる。 |
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◎ | 主要通貨間の為替レートがファンダメンタルズと整合的になるよう、G7間の強い協力を維持する必要がある。 |
◎ | 新興市場諸国において持続可能な為替制度の維持に必要な要素を検討する必要がある。 |
◎ | 望ましい為替制度は国によって異なり得る。また、どのような為替制度も規律のある政策及び堅固な金融システムによって支えられなければならない。 |
☆ | 先進国においても変動相場制移行後の為替相場のmisalignmentとvolatilityは実物経済に非常に大きな影響を与えており、為替相場の安定に向けた何らかの取り組みを検討する必要がある。 |
☆ | 新興市場国においてはその通貨を緊密な相互依存関係にある先進国の通貨バスケットにペグし、実質実効為替レート、国際収支の動向等に応じてペグを調整することもひとつの方法。但しこれは単純な公式はなく、ケースバイケースで検討することが必要不可欠。 |
IFIs(国際金融機関)の業務に対して出資国の政治的意思を一層反映させることで、IFIsのaccountabilityを強化する必要がある。 |
◎ | IMF暫定委員会、IMF・世銀の合同開発委員会の強化。仏は暫定委の評議会化が最善であると主張。 |
◎ | 暫定委員会を含む機構改革の方策についての更なる検討。特に暫定委員会と合同開発委員会の業務の重複を削減しつつ、情報の共有を改善する必要あり。 |
◎ | 暫定委代理会合の定例化。 |
IMFのサーベイランス強化やIMFプログラム及び手続きの改善が、今日の通貨・金融危機の予防・解決に不可欠。 |
◎ | IMFの透明性及びアカウンタビリティ、融資方針や融資条件の修正、及び改善されたコンディショナリティを含め、IMFの有効性を改善するための幅広い範囲の改革を支持することに合意。 |
◎ | 具体的な進展として、昨年12月には日本等の要請もあって、アジア通貨危機におけるIMFプログラムを評価する理事会が開かれ、成長見通しの誤りがより深刻な事態を招いた、財政政策は当初引締め過ぎた、構造政策の実施については一層の配慮が必要、等の反省点が議論され、本年1月にはペーパーも公表された。更に本年3月のマニラ・フレームワーク会合(メルボルン)でも、アジア太平洋諸国・IMF等の参加者により活発な議論が行われた。 |
◎ | 実際のアジア向けプログラムもこうした反省を踏まえ改善。 |
◎ | 更に、本年4月の暫定委員会は日本等の主張も受けて理事会に対し、アジア金融危機時のIMFの支援プログラムに関して理事会が行った有益なレビューを踏まえ、世界経済の変化、特に国境を越えた急激で大規模な資本移動が起こり得る状況をより的確に反映するように、IMFのサーベイランス及びプログラムを一層改善する方法を議論することを要請。 |
☆ | IMFのサーベイランス(一般的な経済政策協議)及びプログラム(資金供与にあたっての政策協議)をより的確なものとするため、財政・金融のマクロ経済政策に加え、 国際的な資本移動への対応、 為替政策、 実体経済の把握の強化、の3点に重点的に取り組むべきである。他方、構造政策に対するIMFの関与を限定することも必要である。 |
☆ | IMFプログラムの内容の見直しにあたっては、 危機時に安定の回復だけでなく経済の過度の収縮・コンフィデンスの更なる低下を回避するような財政・金融政策のあり方、 危機の予防・解決のための民間の関与のさせ方、等を中心に再検討が必要。 |
☆ | IMFの手続きの見直しにあたっては、IMFのアカウンタビリティの改善、理事会の関与の向上の観点から、 事務局が各国と交渉を始める前を含めプログラム策定のすべての段階で理事会が事務局に対してプログラムのデザインについて関与できるようにする、 理事会である国のサーベイランス及びプログラムを議論する際には当該国の政府当局者自身を招いて議論に参加させる、 サーベイランス及びプログラム双方についての全ての事務局ペーパーの自発的な公表を促進する、 暫定委員会直属の事後評価組織を作る。 |
◎ | 既にIMF事務局ペーパーの公表問題については、サーベイランスに関するペーパーを当該国がvoluntaryに公表するパイロット・プロジェクトに着手。 |
(注) | 日本は4月の暫定委員会において、このパイロット・プロジェクトのパイロット国となる意図を表明。 |
危機の予防・解決にあたっては、IMFを中心とする国際的な資金供給機能を強化することも必要。 |
◎ | 第11次増資が発効(99年1月22日; IMFの資金規模が45%増加し、2120億SDRに。日本は出資シェア6.28%で単独2位。) |
◎ | NAB(New Arrangement to Borrow)が発効(98年11月17日; 総額340億SDR。従来のGABに比べ金額で2倍、参加国は11ヶ国から25ヶ国・地域) |
◎ | IMFの予防的クレジット・ライン(CCL)の創設(1999年4月) |
(注) | 日本は、IMFによる日頃のサーベイランスの結果が良好な国が、通貨危機の伝播や投機的資金のアタックなどの要因で危機に陥った場合、一度に大量の短期資金を貸し付けられるような新融資制度をIMF内に設けることを提案してきたが、CCLの創設はその趣旨と軌を一にするもの。 |
☆ | IMFが危機時に動員できる資金の規模を十分に拡大するため、IMFが市場から資金調達することも検討すべき。 |
☆ | 各国の外準強化のために、IMFが新規にSDRの一般配分を行うことも一案。 |
☆ | IMFの役割と機能を補完するための、地域内で相互に通貨支援を行うメカニズムも長期的な検討課題とすべきではないか。 |
危機に際し民間債権者に対し適切な負担を求める仕組みを構築することは、危機の予防・解決にあたって喫緊の課題。 |
◎ | 現在検討されている民間関与強化策 | |
・ | IMFの支援策の合意にあたり、民間部門の融資残高の維持や借換えを条件とすること | |
・ | 民間銀行と危機の際に発動するクレジット・ライン(contingent credit line)を締結すること | |
・ | インターバンク・ローンに危機の際に返済期限を延長することができるコールオプションを付すこと | |
・ | より秩序ある債務整理のアレンジメントのために、集団行動に関する条項(Collective action clauses)を債券発行時の契約に盛り込むこと | |
・ | IMFの承認の下に対外債務の一時的モラトリアムを導入すること | |
・ | IMFが債務履行遅滞国へ貸付を行うというポリシーを推進すること | |
・ | 短期債務の過度の累積の回避 | |
・ | 民間セクターの対外債務に関するモニタリングシステムの構築 | |
・ | 民間資本金融市場との効果的な対話の維持 |
金融危機の際の社会的弱者への影響を最小化する必要がある。 |
◎ | 危機時の調整プログラムにおいて、社会の最も脆弱な層への影響に対する配慮を強化する措置を促進する。 |
○ | 世銀において社会政策に関する基準を作成中。 |
○ | 公共支出に関する作業に向けた、世銀とIMFの間の協力関係の強化。 (以 上) |