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開発経済に関する世界銀行年次会合における谷垣大臣スピーチ(2006年5月29日)

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開発経済に関する世界銀行年次会合における谷垣大臣スピーチ
(2006年5月29日(月) 於:三田共用会議所)

(仮訳)

 
1. 冒頭
 
 ご列席の皆様、
 
 本日から2日間に亘り、開発経済に関する世界銀行年次会合(Annual Bank Conference on Development Economics(ABCDE))を、東アジアにおいて初めてホストできることを喜ばしく思います。
 
 昨年5月のアムステルダムにおけるABCDEにおいて、日本での開催を表明して以来、世銀本部、世銀東京事務所・パリ事務所と連携しつつ、本会合に向けた準備を行ってまいりました。本日の開催に至るまでの、ウォルフォウィッツ総裁、ブルギニオン チーフ・エコノミストをはじめとする世銀関係者の皆様のご協力に対し感謝いたします。
 
 また、このABCDEでの議論を有意義なものとするために、世界中から開発における第一線の研究者、実務家、政策担当者、民間セクターの皆様にお集まりいただいています。これらの方々のABCDEへの参加にも御礼申し上げます。
 
2. 新しいインフラ
 
 本年のABCDEのテーマは、「開発のための新たなインフラを考える」です。
 
 1945年の設立以来、世銀はインフラ支援への関与を継続してきています。我が国も戦後復興の過程で、世銀の支援により黒四ダム、東海道新幹線、東名高速道路などの経済インフラを整備してきた経験を有しています。こうした支援の中には、我が国にとって資金面だけでなく、新たな技術をもたらしたという点において、大きな意義があったものが見られます。
 
 しかし、我々は、インフラ支援を取り巻く環境、インフラ支援に対する考え方が大きく変化を続けてきていることも忘れてはなりません。
 
 まず、自由貿易の拡大や国際金融市場の発展、途上国間での格差の拡大や競争の激化など、途上国が置かれている国際経済情勢が大きく変化してきています。
 
 また、途上国におけるインフラ整備を担うべき主体についても、考え方が変化してきています。1990年代には、途上国におけるインフラ整備は民間資金に委ねるべきとの考え方が支配的でした。しかし、最近では、公的部門の関与の必要性が再び認識されつつあります。こうした中で、過去の経験を踏まえた官民パートナーシップのあり方の再検討の必要性等が指摘されるようになっています。
 
 さらに、インフラ支援の歴史を通じて、多くの経験、教訓が蓄積されてきています。例えば、インフラ支援は無駄な設備(white elephants)を残しただけだったのではないか、環境・社会面での配慮が十分であったか、ステーク・ホルダーとの対話が十分であったか、といった点について、過去に多くの議論が積み重ねられてきました。
 
 こうした議論の成果は、現在の世銀の支援において、インフラに関連するセクターの制度・政策改革への配慮、インフラにより提供されるサービス内容の重視、明確な環境・社会配慮基準の策定、等によって、実際の業務に反映されています。
 
 ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた一層の努力が必要とされる中で、インフラ分野での支援が、適切かつ効果的に行われることが、途上国の開発を進める上で必要不可欠であることに疑いの余地はありません。
 
 例えば、子どもの学習のためには照明が必要であり、病院へ行くためには道路が必要です。また、インフラ支援は、民間部門の発展を促すための経済基盤を整備し、教育、保健分野での開発効果をより確実にするための雇用機会を提供するという観点からも、その役割が見直されつつあります。世銀のクライアントを対象とした最近の調査においても、インフラ支援は「重要性」、「世銀による支援の効果」の両面において高い評価を得ています。
 
 こうしたインフラ支援は、既に申し上げたような外的環境の変化、過去の支援から得られた教訓、を踏まえつつ、物的施設の整備のみを考慮する伝統的な支援に留まらない、新たな考え方に基づいてなされることが必要です。
 
 本年のABCDEにおける議論が、理論面、実務面の双方から、インフラ支援に関する最先端の知見を集約し、インフラ支援の今後のあり方に新たな光をもたらすことを期待します。また、こうした議論は、インフラ部門での主要ドナーである我が国にとっても、貴重な示唆をもたらすものと考えます。
 
3. ABCDEにおけるテーマ
 
 本日から始まる2日間に亘るABCDEでの議論では、インフラに関連するトピックの中でも、成長のためのインフラ、持続可能な開発とインフラ、地方インフラと農業開発、インフラと地域協力の4点を特に取り上げています。
 
 第一の成長のためのインフラについては、インフラ支援が途上国の成長に与える影響について考察を深め、開発全体におけるインフラ支援の位置づけがより明確になるような議論がなされることを期待します。
 
 第二の持続可能な開発とインフラについては、特にエネルギー消費量の増大が見込まれるアジアにおいて、気候変動への配慮やエネルギー効率化の問題を議論することに大きな意義があると考えています。この課題は、世銀においてエネルギー投資枠組みの議論が進められ、サミット・プロセスでエネルギー問題が議論されているように、インフラの中でも非常にタイムリーで重要なテーマであると考えます。
 
 第三に、地方インフラと農業開発については、貧困層の多くが地方に住んでいることを考えれば、その重要性は明らかです。昨年秋の総会において、ウォルフォウィッツ総裁も世銀の取り組みを強化すべき分野の一つとして農業を挙げられており、今回の議論が今後の途上国への支援のあり方に貴重な示唆を与えることを期待します。
 
 第四に、インフラと地域協力です。域内貿易の活発化や内陸国での開発の遅れを踏まえれば、効果的なインフラ支援のために、国境を跨るインフラ整備について地域協力を強化していく必要性が増しています。アジアやアフリカにおける地域協力の実態を踏まえつつ、こうしたインフラと地域協力の関係について議論していただきたいと考えています。
 
4. 世銀の調査研究活動への支援と協力
 
 最後に、世銀の調査研究活動への支援と日本政府との協力強化について申し上げます。
 
 本年のABCDEの開催は、インフラ支援に関する様々な議論を深めるとともに、我が国と世銀との間で、開発分野における調査研究についての交流を強化する契機となると期待しています。我が国は、こうした交流を今後とも更に活発にしていきたいと考えます。
 
 具体的には、開発分野の学術研究を促進するための世銀のイニシアティブであるKnowledge for Change Program(KCP)に我が国も参加することにより、農業、気候変動といった分野での世銀の調査研究活動を支援するとともに、日本の研究者、研究機関と世銀との間での情報・意見交換や共同研究を継続的に実施していきたいと考えています。このための費用として、我が国はKCPのために設けられた信託基金に対して2百万ドルまでの拠出を行うことを、ここに表明いたします。
 
5. 結び:
 
 本日ご参集いただきました皆様により、ここ東京において開発に関する最先端の議論が行われることを喜ばしく思います。また、皆様が活発かつ率直な意見交換を通じて、この貴重な機会を最大限活用していただければと存じます。
 
 こうした議論を通じて、インフラ支援に新たな知見が提供され、ひいては途上国における持続的な経済成長、貧困削減に資することを祈念して、私の挨拶の結びの言葉とさせていただきます。