このページの本文へ移動

第56回米州開発銀行・第30回米州投資公社年次総会 日本国総務演説

第56回米州開発銀行・第30回米州投資公社年次総会 日本国総務演説
(平成27年(2015年)3月28日(土)於:韓国 釜山)

 


  1.  議長、総裁、各国総務各位、ならびにご列席の皆様、

     第56 回米州開発銀行(IDB)、第30回米州投資公社(IIC)年次総会にあたり、日本政府を代表して、ご挨拶申し上げることを光栄に思います。また、IDBグループへの加盟10周年という意義深い年にホスト国を務める韓国政府、そして釜山広域市の皆様の暖かい歓迎に感謝申し上げます。

  2. 日本とラテンアメリカ・カリブ(LAC)地域との関係
     ラテンアメリカ・カリブ(LAC)地域は、約6億の人口と約6兆ドルの市場を擁し、世界経済における成長センターの一翼を担っています。こうしたLAC地域において日本はアジア最大の投資国であり、また、LAC地域は日系人としては180万人と最も多く暮らしている地域であるなど、日本とLAC地域は経済のみならず人的関係においても深く結ばれています。

     日本はアベノミクスの成長戦略の中で新興市場国との関係強化を図っており、とりわけ成長著しく大きなポテンシャルを持つLAC地域との経済関係を強化する観点から、安倍総理が昨年7月、LAC地域のメキシコ、トリニダード・トバゴ、コロンビア、チリ、ブラジルを歴訪したところです。これまで、日本企業の強みがある資源開発や省エネ、再生可能エネルギー分野で、LAC地域と日本企業との協力を推進してきており、今後も更なる連携強化が期待されます。

     同訪問に際しては初の日本・カリブ共同体首脳会合を実現しました。また、IDB、カリブ開発銀行(CDB)、国際協力機構(JICA)の三者で業務協力覚書を締結し、再生可能エネルギー・省エネ分野におけるIDBとJICA間の協調融資の枠組みである「Cofinancing for Renewable Energy and Energy Efficiency(CORE)」の連携を強化したところです。日本は、COREの枠組みのもと、これまでニカラグア、コスタリカに円借款を供与していますが、本年は、ホンジュラスの水力発電事業について、JICAとIDBがそろって貸付契約に調印しました。このような日本の強みを活かしてLAC地域の発展に今後とも貢献してまいります。

  3. IDB新組織戦略と民間セクター開発
     他の地域に比べて中所得国が多いLAC地域が直面する主要な開発課題として、社会的疎外と不平等があること、生産性・革新性が低いこと、経済統合が限定的であることが挙げられます。これらの課題の解決に向けて、今次総会において、「包摂的な開発」、「持続的生産性と革新」、「包括的統合と協力」に重点化した新たな組織戦略が策定されることを支持します。この新組織戦略の下、LAC地域の貧困削減や経済発展が益々促進されることを期待します。

     こうした中、特にLAC地域の経済発展に欠かせないのは、民間部門の牽引力を高めることです。この点、現在IDBが進めている「新生IIC」の立上げは非常に時宜を得ています。特に、これまでIDBグループ全体で培われた民間部門支援の知見やノウハウを一つの組織に集約し、IICを効率的で財務基盤の安定した組織へと変革させることを通じて、IICのLAC地域の民間部門向け開発資金に対する呼び水効果が高まるなど、一層高い開発効果が期待できます。こうした組織改革において、リーダーシップを発揮されたモレノ総裁に敬意を表したいと思います。

     なお、IDBグループの民間セクター支援において、小規模零細企業向けの革新的な支援を行うMIFの果たす役割も重要です。MIFは、投資・融資・技術協力を有機的に組み合わせる等効果的な支援を行うと共に、革新的なラボラトリーとしてのユニークな特徴も有しています。引き続きMIFの強みを活かした民間部門支援に期待しています。

  4. IDBと日本の協働
     IDBの重要な役割の一つに、域内加盟国政府の能力構築や貧困層を対象とするコミュニティ開発等の技術支援があります。日本はこれまで、こうした技術支援の主要ドナーとして、日本特別基金を通じた貢献をしてきました。日本特別基金を通じた支援の成功事例の一つとしては、2011年に150万ドルを拠出して、日本人教師である国際協力機構(JICA)協力隊員と協調の下、パラグアイの貧困層児童の算術能力を大きく向上させたプロジェクトがあります。近年、LAC地域では、発展の恩恵から取り残された多くの人々への支援や各国政府の政策策定・実施能力の引き上げが重要な課題となっており、我が国としては今後ともIDBの技術支援活動をサポートしていきたいと考えております。

  5. 結語
     日本は安倍総理のリーダーシップの下、全力で取り組んでいる経済政策がもたらす成果を確実なものとするため、目下、東日本大震災からの復興、社会保障改革、教育再生、地方創生、女性活躍など多方面にわたる「戦後以来の大改革」を進めています。こうした成果が日本の経済再生に結びつき、ひいてはLAC地域を含む世界経済の成長にも日本が貢献していくことを望んでいます。

     IDBにおいても、引き続きLAC地域の経済社会開発に大きな役割を果たすと共に、今回の釜山総会を含めアジアとLAC地域の橋渡しの役割を一貫して担ってきたIDBアジア事務所をより一層活用することで、アジアとLAC地域の連携が更に強化されることを期待します。

     どうもありがとうございました。