現在位置 : トップページ > 国際政策 > 国際開発金融機関(MDBs)〜世界銀行、アジア開発銀行等〜 > 米州開発銀行(IDB) > 第53回IDB・第27回IIC年次総会 日本国総務演説(平成24年3月19日 於:ウルグアイ・モンテビデオ)

第53回IDB・第27回IIC年次総会 日本国総務演説(平成24年3月19日 於:ウルグアイ・モンテビデオ)

English 印刷用(PDF)

第53回米州開発銀行・第27回米州投資公社年次総会 日本国総務演説
(平成24年(2012年)3月19日(月)於:ウルグアイ モンテビデオ)

 

1.序

 議長、総裁、各国総務各位、ならびにご参列の皆様、

 第53回米州開発銀行(IDB)、第27回米州投資公社(IIC)年次総会にあたり、日本政府を代表して、ご挨拶申し上げることを光栄に思います。また、ホスト国であるウルグアイ政府、モンテビデオ市の皆様の暖かい歓迎に感謝申し上げます。

 中南米カリブ(LAC:Latin America and Caribbean)地域は、比較的開発が進んだ中所得国が多く、また、多くの島嶼国を抱えるという特徴を有しています。IDBには、防災や気候変動、持続可能都市といった取組みを通じて、国際公共財や格差是正という開発課題に対応し、LAC地域の強靭性(resilience)向上に貢献することを期待します。

 2008年の危機においてIDBは、他のMDBsに先駆けて、流動性供給プログラムの導入や貿易金融ファシリティの拡大を行うなど、迅速且つ適切に対応しました。世界経済の先行きが不透明な今、IDBには、IMF等他機関と協力のうえ地域経済の動向を注視し、危機に備え、その持てるリソースをどのように活用していくか検討を進めることを求めます。

 

2.防災

 昨年、我が国を襲った東日本大震災から一年が経過しました。IDB及びLAC地域諸国の皆様から頂いた心温まるお見舞いと支援に対し、改めて感謝の意を表します。我が国は、現在力強く復興、復旧を進めているところです。その過程で得られた教訓や知見を皆様にも積極的に共有し、各国の防災政策にとって有用な教訓を提供します。これにより、強靭な(resilient)コミュニティ、強靭な国、強靭な国際社会の構築に向けて貢献していく考えです。

 これまでに明らかになった教訓としては、一定の資源を防災に投資することは合理的である、ということです。過去の災害を単なる危機として終わらせず、社会の回復力を高める機会に転化することが重要です。例えば、1995年の阪神大震災の被害を受け、全国的に道路や鉄道の高架橋を補強しました。この結果、今回の震災では、マグニチュード9.0という激しい揺れにもかかわらず、新幹線の高架橋等が崩落するような重大な事故を回避することができ、早期の運転再開につながりました。

 一方で技術に頼りすぎることの問題も明らかになりました。今般の震災では、想定を大幅に上回る津波が海岸堤防を越えて沿岸を襲い、甚大な被害を生みました。これから見えてくるのは、ハード面の整備のみならず、災害を想定した立地を含めたまちづくりや避難、警戒態勢の工夫、防災教育などソフト面の施策を充実させることが重要です。

 LAC地域は、我が国同様、地震、津波、洪水など自然災害の多発地域であり、防災は最重要とも言える開発課題です。特に、社会的に脆弱な貧困層にとっては死活問題です。防災への投資は合理的ではありますが、財政資金に限りがある中、いかに効率的に防災の施策を実現するかが大きな課題の一つです。LAC地域の途上国が、各防災手法の特質を踏まえたベスト・ミックスの防災対策を講じることができるよう、IDBが適切な支援を行うと共に、国別戦略の中で防災を明確に位置づけるなど、主導的な役割を果たしていくことを期待します。IDBが、モレノ総裁のリーダーシップにより2006年に防災イニシアティブを立ち上げたことは、先見の明があったと考えます。

 我が国は、世界的に防災の主流化を推進していきます。本年次総会に際して、JICA、IDB、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)の共催により開催したセミナーはその1つです。また、本年10月に東京で開催されるIMF・世界銀行年次総会の機会には、得られた教訓・知見を世界に発信するために防災に関する国際会議を開催し、被災地への訪問も行います。IDBやLAC諸国からも是非参加して頂きたいと思います。

 

3.気候変動

 気候変動は、豪雨、干ばつ、洪水等の自然災害を増加させるに止まらず、食料・水問題、海面上昇による国土の消失など様々な影響を通じてLAC地域の人々の生活・経済を脅かしています。今後、ますます深刻化し、頻発する気候変動の悪影響に対処するためには国際社会全体による着実な取り組みが必要であり、昨年末の国連気候変動枠組条約第17回締約国会合において合意された、「ダーバン・プラットフォーム」のプロセスを着実に進めていくことが求められます。これと同時に、小島嶼国など気候変動の悪影響に脆弱な国々の「今そこにある危機」への対応も急務の課題です。IDBが、増資(GCI)合意に基づき、引き続き気候変動対策の主流化を推進することが重要です。

 我が国はLAC地域における気候変動対策に積極的に貢献しています。我が国の陸域観測技術衛星「だいち」を活用したブラジルの森林違法伐採の監視では、森林破壊面積が減少するなど着実に成果を上げました。また、2010年のGCI交渉において、我が国は、環境・気候変動問題対策をIDBの優先課題とするよう積極的に主張し、資金貢献を行いました。さらに我が国は、カリブ海諸国の省エネ分野の促進やアマゾン川流域の熱帯雨林の保全などLAC地域の地球環境問題に積極的に取り組んでいる地球環境ファシリティ(GEF)にも積極的に資金貢献を行っており、今後GEFとの関係をさらに強化してまいります。

 これらに加え、我が国は、経済成長と気候変動対策の両立を目指し、今般、IDBとJICAとの間で、省エネルギー・再生可能エネルギー分野において協調融資を行う枠組「CORE(Cofinancing for Renewable Energy and Energy Efficiency)」に署名し、支援を開始することになりました。この枠組みを通じて、気候変動対策が促進されるとともに、我が国の優れた環境技術が活用される機会が拡大することを期待します。

 

4.持続可能都市(Sustainable Cities)

 LAC地域は、世界で最も格差の大きい地域の一つと言われており、格差是正は重要な課題です。特にLAC地域においては、人口の75%が都市部に居住していますが、この地域の都市は、貧困層への保健・医療など社会サービスの欠如や環境汚染等の深刻な問題を抱えるなど、脆弱性(Vulnerability)を有しています。IDBの持続可能都市(Sustainable Cities)イニシアティブはこうした都市問題に真正面から取組むものであり、本イニシアティブの推進が、貧困や環境問題に苦しむ都市のresilience向上に資することを期待します。

 

5.経済危機への備え

 LAC地域は、2008年の世界的な経済危機の影響を比較的軽微なものに留めることに成功し、2010年以降は、商品価格の上昇や海外資本の流入等を背景に全体としては力強い成長を維持しています。しかしながら、現下の世界経済においては、欧州政府債務問題が引き続き最大のリスク要因となっており、各国の政策運営に油断は許されない状況にあることから、十分に警戒することが必要です。

 総じて好調なLAC経済ではありますが、中米・カリブ地域の一部の国では経済が低迷しています。危機に対して最も脆弱である貧困層が、更なる生活苦に陥ることがないよう、IDBが各国政府との政策対話を通じて適切な貧困対策の実施を促すと共に、貧困削減・格差是正にフォーカスした融資や技術協力を積極的に実施することが重要です。

 

6.我が国の貢献とIDBの課題

 これまで我が国は、通常資本への出資に加え、日本特別基金や日本貧困削減プログラムなどの信託基金への拠出を通じ、IDBが行うLAC地域の貧困削減に向けた取り組みを支援してきました。更に我が国は、LAC地域のresilience向上のため、防災、気候変動、持続可能都市の3つのイニシアティブに対して貢献を行います。これらの重要な課題の解決に資することを期待します。

 IDBには、上記で申し上げた開発課題に適切に対応するため、援助効果、効率性や財務健全性の向上等を通じて業務運営を強化していくことを求めます。IDBが、GCIで合意された改革アジェンダに関し、制度やポリシーの策定・見直しを当初のスケジュール通り2011年内に完了したことを評価します。今後、これらの制度やポリシーを着実に実施に移すことを期待します。

 

7.結び

 我が国は、LAC地域と長きに渡る移民・交流の歴史を有しています。今次総会のホスト国であるウルグアイでは2008年に日本人の移住100周年を迎えました。また、昨年6月には、ウルグアイ政府が東京市場でサムライ債を発行し、国際協力銀行(JBIC)が保証を提供しました。こうした歴史を基盤として、今後も日本とLAC地域の関係を発展させていきたいと思います。

 IDBにおかれても、引き続きLAC地域の経済社会開発において大きな役割を果たすと共に、アジア事務所も活用のうえ、我が国を含むアジアとLAC地域との橋渡しの役割を強化することを期待します。

 どうもありがとうございました。

以上