| (中南米の概況) 中南米(LAC)地域は、好調な世界経済と国際的な商品価格の高騰等を背景に、2004年以降年平均5.3%という高い経済成長を遂げてきました。経常収支も2003年以降黒字で推移するとともに、外貨準備も着実に増加しており、失業率も2005年以降3年連続で一桁台に留まる見通しです。このような中、主な借入国で開発に必要な資金を資本市場からも調達するようになってきております。 (貧困・所得格差) このように急速に変貌を遂げる中南米地域にあって、IDBにはどのような役割が期待されるのでしょうか。それはまず、貧困問題と所得格差への対応です。富裕層が高い経済成長の恩恵を享受して所得を拡大させている一方、貧困層はそのような恩恵を十分に享受できず、所得格差は深刻な社会問題となっております。我が国も第二次世界大戦前は、ジニ係数が現在のLAC地域と同じか高い水準にありましたが、農地改革、税制改革による資産課税及び累進課税の強化等を通じ、比較的短期間に所得格差を是正したことが、その後の社会の安定と発展につながったという経験があります。 中南米地域の開発金融機関として、IDBは貧困対策及び所得格差の問題に最優先で取り組む必要があります。具体的には、貧困層によりフォーカスして、例えば、遅れている医療・年金等社会保障制度の導入や改革に向けてのノウハウの提供や、地方や貧困地帯での経済活動及び生活向上を促進する基礎的インフラの整備、所得格差の是正に向けた諸改革に集中的に取り組むべきです。また、IDBは民間セクター開発において、貧困層の雇用拡大に繋がるような中小企業支援やマイクロファイナンス等を一層強化する必要があります。このような観点から、モレノ総裁のリーダーシップのもと立ち上げられたOM(Opportunities for the Majority)イニシアティブを評価するとともに、今後ともその推進を期待しています。 (気候変動) 次に、IDBは、地球規模の課題である気候変動問題にも、積極的に取り組まなくてはなりません。LAC地域においては、最近気候変動が原因と考えられる自然災害が多発しており、気候変動は経済発展の大きなリスクとして広く認識されるに至っています。 日本は、本年7月に開催される北海道洞爺湖サミットの議長を務めますが、その主要テーマの一つは気候変動問題となる予定です。我が国は、主要排出国全てが参加する仕組作りや公平な目標設定に責任を持って取り組みたいと考えております。同時に、既に公表したとおり、我が国は100億ドル規模の新たな資金メカニズム(クールアース・パートナーシップ)を構築し、省エネ努力などの途上国の排出削減への取組みに積極的に協力するとともに、気候変動で深刻な被害を受ける途上国に対し支援を行いたいと考えております。また、温室効果ガス削減や気候変動への適応に取り組むため、現在、米国や英国、国際開発金融機関(MDBs)とともに、多国間の新たな基金の創設に向けて協議を進めており、他のドナーにも参加を呼びかけています。この基金により、MDBsの気候変動対策におけるリソースやノウハウを活用することによって温室効果ガス排出が削減されるばかりでなく、京都議定書後の枠組み作りに向けた国際協調が促進されることを期待します。 IDBが昨年、持続可能エネルギー及び気候変動イニシアティブ(SECCI)を立ち上げました。これについては、LAC地域の持続的な発展にとって重要な意義を有するとと考えています。SECCIの柱の一つに、LAC地域が比較優位を有するバイオ燃料がありますが、私の地元の鹿児島県も、養豚農家から発生する廃棄物を利用してメタンガスを生産する実験を行うなど、自然環境への負荷の小さいバイオ燃料分野における取組みを強化しています。 我が国は、LAC地域においてIDBが環境関連投資の促進や技術協力等で主導的な役割を果たしていくことを期待し、SECCIマルチドナー基金へ最大5百万ドル拠出することをここで表明します。 (組織改革) IDBに求められているのは、単に融資を量的に拡大することではなく、先に述べた二つの課題に取り組みつつ、域内国のニーズに柔軟に対応していくことです。そのために、IDBは、まず組織として、職員の地域的多様性に配慮しつつ、柔軟で効率的な組織作りを進めて頂きたいと思います。 (純益処分) 次に、IDBの資本の面を見ると、TELR(Total Equity to Loans Ratio)が38%を超えている現状は超過資本の状態にあると言えます。これについては、本年1月にEAG(External Advisory Group)が報告書を出していますが、IDBに期待されている役割を踏まえれば、純益を準備金に更に積み上げることは適当ではなく、所得格差や気候変動の問題に対処するための能力構築・技術協力や、貧困国向けの基金である特別業務基金(FSO)への移転を行う等有効に活用することを検討するべきです。 本年は、2009年以降の中期的な業務方針である新業務枠組み(New Operational Framework)策定に向けた議論も本格化します。中南米地域の各国のニーズやIDBの強みを踏まえて優先分野を特定し、業務量の拡大を指向するのではなく、開発効果を最大化すべく業務の質の向上を追求していく方向性を期待します。 |