第47回IDB・第21回IIC年次総会 日本国総務演説(平成18年4月3日 於:ブラジル・ベロ・オリゾンテ)
第47回米州開発銀行・第21回米州投資公社年次総会議長演説(仮訳)
(平成18年4月3日(月)於:ベロ・オリゾンテ(ブラジル))
| |
| 1. 序 |
| 総裁、各国総務各位、並びに御参列の皆様、 第47回米州開発銀行・第21回米州投資公社年次総会開催にあたり、日本政府を代表して、ご挨拶申し上げることを光栄に思います。 まず、ブラジル政府、ベロ・オリゾンテ市民の暖かい歓迎に心から感謝申し上げます。 昨年年次総会が開催された沖縄からは、多くの移住者が海を越えてブラジルにわたり、今やブラジル在住の沖縄系移住者は15万人を超え、2008年にはブラジル移住百周年を祝おうとしています。今回、その沖縄から、つながりが深いブラジルにIDB年次総会のバトンを渡すことができることを、非常に喜ばしく思います。 |
| |
| 2. モレノ総裁の歓迎 |
| 皆様、 次に、総務会議長として、イグレシアス前総裁のIDBへの多大なる貢献に対し深く感謝するとともに、IDB総裁として初めての年次総会を迎えられたモレノ総裁を心から歓迎いたします。 モレノ総裁は、昨年10月の就任後わずか半年の間に、域内の開発課題により積極的に応えていくために、様々なイニシアティブでリーダーシップを発揮されています。私自身、モレノ総裁が就任早々に日本を訪問された際にお会いし、新しい任務に意欲的にチャレンジしていこうとする姿勢に強い印象を受けました。 モレノ総裁が今後、IDBを強力に率いていかれることを強く期待しています。 |
| |
| 3. IDBの課題 |
| 皆様、 日本国民は、長い移住者の歴史を通じて、中南米・カリブ海諸国に対して親近感を抱いています。この地域に対する愛着もあって、我が国は、これまでアジア諸国の発展のため支援してきた経験を活かし、この地域の貧困削減や格差の是正に貢献したいと考え、IDBの活動に積極的に関与してきています。 中南米・カリブ海地域では、今なお域内の4分の1を占める1億2千万人以上の人が1日2ドル以下の生活を余儀なくされています。また、アジアと比較して所得格差が大きいことも指摘されており、域内諸国にとって貧困削減と所得格差の是正は依然課題として根強く残っています。 私は、モレノ総裁のリーダーシップのもと、IDBが域内の公平な経済成長達成のために今後取り組むべき課題として、以下の3点を強調したいと思います。 第一に、「域内のインフラ整備」です。 中南米・カリブ海地域のインフラ投資は、1990年代以降、厳しい財政事情を背景に公的部門の投資が削減される中、民間資本による投資も、法制度や政府機関等の能力が不十分なことが主な要因となり、特に近年著しく落ち込みました。域内のGDPに占める公的・民間をあわせたインフラ投資の割合は1980年代前半の3.7%から、2000年前後には2.2%まで低下しました。域内の不十分なインフラが、同地域の生産性にも悪影響を及ぼし、域内の物流コストが先進国の3倍になっているとの調査もあります。 アジアでも持続的な経済成長と貧困削減を達成するためにどのようにインフラを整備していくかが議論となり、我が国の協力のもと、世銀、ADB、JBICが共同で東アジアのインフラ整備に関する研究を行いました。そこでは、インフラの整備にあたっては、財源の確保が必要なだけでなく、長期的な戦略の策定や官・民・国際社会・市民社会等関係主体間の調整が重要であることが示されています。この調査の成果が中南米・カリブ海地域のインフラ投資の強化に向けたIDBの努力の一助にもなることを期待します。 この点に関連して、IDBが、官民双方のインフラ整備のボトルネックに対処し、域内の投資促進を図るためのインフラ・ファンドを設立したことを歓迎します。 第二に、「民間部門開発への取組」です。 民間部門開発は持続的な経済成長にとって不可欠ですが、これまでIDBはグループ内の各民間部門の支援を通じて、域内の民間部門開発に大きな貢献をしてきました。特にIDBの民間部門局は、近年、有料道路建設のための現地通貨建て債券発行に対する保証や地方の貧困層への電力供給拡大プログラム支援など、単なる資金支援だけでなく、民間資金の活用や民間資金が入りにくい分野の市場開拓につながるような革新的で開発効果の高いプロジェクトを多く手がけています。 今回IDBの民間部門が支援できる対象分野を拡大するとともに、政府系企業に対する支援も可能とする提案がなされていることを喜ばしく思います。民間部門コーディネーターのもと、IDBの民間部門局、米州投資公社(IIC)、沖縄総会で増資が合意された多数国間投資基金(MIF)、及び事業環境整備を支援する地域局が相互に連携することにより、IDBグループとして民間部門開発において高い成果をあげていくことを期待します。 第三に「自然災害予防」であります。 昨年中米地域を襲ったハリケーン・スタンをはじめ、自然災害による被害は中南米・カリブ海地域の成長と貧困との闘いにとって大きな脅威となっています。 近年、自然災害予防を無視した開発が災害への脆弱性を生むことにより、ある程度開発の進んだ国々で自然災害による被害が増大する傾向が見られており、懸念されます。このため、大規模な災害被害の発生によって、尊い人命が犠牲となるばかりでなく、長年にわたる開発への努力の成果が無に帰してしまうという悪循環が指摘されています。 ここで、長年にわたり自然災害に対処してきた我が国の教訓を紹介したいと思います。我が国にとって転換点となったのは、中南米・カリブ海地域で起きた津波でありました。 1960年5月22日夕刻にチリ南部で発生した最大級の地震は、大規模な津波を発生させました。この津波は、チリ沿岸を出た15時間後にハワイを襲い、22時間後には最大6mの波となって地球の裏側の日本の沿岸に到達し大きな被害を出しました。このチリ地震津波を契機として、我が国は海外で発生した地震による津波に対する警報システムを作り上げました。 我が国はその後も予防に努力を傾けた結果、世界でも高度の自然災害予防システムを持つに至っています。このようなノウハウに基づき、2004年12月のインド洋地震津波の後、多くのアジア諸国に対し、津波早期警報システムの構築について率先して協力することができました。 自然災害予防は私自身、行政官及び国会議員として長年にわたり携わってきた重要な課題です。今般、IDBが持続的な成長のための自然災害に対する対策の必要性を認識し、自然災害予防ファンドを立ち上げたことは、我が意を得た思いであります。我が国は、今回のIDBによる自然災害予防に対するイニシアティブの一助となるよう、今後3年間で最大5百万ドルの貢献をすることをここに表明するとともに、自然災害予防のために我が国がこれまで築き上げてきたノウハウを提供していきたいと思います。 演説を終える前に、債務救済と特別業務基金(FSO)の問題については、IDBが自らの開発目標を達成する上で最も望ましい政策のあり方を見出すために、さらに議論を深めていく必要があることを強調しておきたいと思います。 |
| |
| 4. 結び |
| 今年は、我が国をはじめとする域外国9カ国の加盟が認められてからちょうど30年目に当たる年です。その中で我が国は域外国最大のサポーターとして、また、中南米・カリブ海諸国の安定的な経済パートナーとして、域内の発展に貢献していきたいと考えます。IDBが域内の経済社会開発に大きな役割を果たすべく、モレノ総裁が存分にリーダーシップを発揮されることを期待してやみません。 最後に、この1年間の総務会や事務局の助言と協力に感謝いたします。また、次の総務会議長の健闘を祈念いたします。 どうもありがとうございました。 |
| |