第46回IDB・第20回IIC年次総会 議長演説(平成17年4月10日 於:日本・沖縄)

第46回米州開発銀行・第20回米州投資公社年次総会議長演説(仮訳)
(平成17年4月10日(日)於:沖縄)
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| 1. 序 |
| 皇太子殿下、ホンジュラス共和国大統領閣下、コロンビア共和国大統領閣下、ボリビア共和国大統領閣下、イグレシアス総裁、各国総務各位、並びに御参列の皆様、 第46回米州開発銀行・第20回米州投資公社年次総会の開催にあたり、皇太子殿下の御臨席を賜りましたことは、私どもの最も光栄とするところであります。総務ならびに他の参加者を代表いたしまして、心から感謝申し上げます。 今年次総会の議長に選ばれましたことに御礼申し上げるとともに、過去1年間議長を立派に務められてこられましたペルー国総務に対し敬意を表します。 我が国での米州開発銀行(IDB)グループの年次総会開催は、1991年の名古屋総会に続き14年ぶりとなります。中南米・カリブ海地域とアジア地域が交流を深める時期において、この度アジア各地との交易の要衝として栄え、また、移民を通じて同地域と1世紀以上にわたる人的交流の歴史を持つここ沖縄で年次総会を開催することは、極めて時宜を得たものと考えます。 まず、主催国の総務と致しまして、沖縄総会への皆様の参加を心から歓迎いたします。特に、大韓民国総務のご参加を心から歓迎いたします。 |
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| 2. 中南米・カリブ海地域の経済情勢と課題 |
| 皆様、 さて、名古屋総会以降の世界経済を振り返ると、経済活動のグローバル化が大きく進展した時期と言えます。 1991年以降、IT等の技術革新に支えられた長期経済成長の下、各国経済が相互依存性を強め、アジア諸国では、近年、97年の通貨危機の影響から立ち直り、中国を中心とした東アジアの急成長に加え、南アジアにもその波が広がっています。 我が国経済も、バブル崩壊後の長い調整期間を経て、デフレの克服と経済の活性化を目指し、構造改革に取り組んできた成果が現れつつあり、民間需要中心の景気回復局面が続いています。 この間、中南米・カリブ海諸国は、メキシコ・ブラジル・アルゼンチンの累次の通貨金融危機の影響を大きく受けつつも、90年代には「失われた80年代」に比べてポジティブな成長を遂げるとともに、インフレ率も低く抑えられるに至っています。2001年から2002年にかけて低下した成長率も、好調な世界経済、堅調な国際商品市況等を背景とした輸出の増加、低インフレ等に伴う国内需要の増大により、2004年には同地域は5%前後の高い経済成長を達成しました。 また、貿易の拡大は、「北米自由貿易協定(NAFTA)」や「南米南部共同市場(MERCOSUR)」といった自由貿易協定に支えられてきました。その点について、4月1日に発効したばかりの我が国とメキシコとの「経済連携協定」を強調したいと思います。さらに、中南米・カリブ海諸国は中国、韓国、ASEANの国々との貿易の拡大を通じてアジア地域との経済関係を深化させつつあります。 一方、中南米・カリブ海諸国は、相対的に見れば中所得国が多いにも拘らず、国内の所得格差が縮小しているとは言えません。本年9月の国連総会において「ミレニアム開発目標(MDGs)」の中間レビューが行われる予定ですが、中南米・カリブ海諸国においては、ジェンダーの平等推進や初等教育については比較的順調な進展が見られる一方、貧困人口率については、1990年から2000年までに11.3%から9.5%へ減少したものの、その減少幅は大きくありません。その目標達成に向けて、成長の持続を通じた貧困層の生活環境の改善に加え、社会的安全網の整備、中小企業の育成を通じた雇用促進が不可欠であると考えます。 また、1999年のパリ年次総会に出席した際、私から申し上げたように、環境保護も重要な問題であります。本年2月に京都議定書が発効したところですが、気候変動に対処するには、早急に行動を起こす必要があります。中南米・カリブ海諸国においても、気候変動に大きな影響を及ぼす熱帯雨林保全や大気汚染といった課題に対処する必要があります。 更に、中南米・カリブ海諸国が持続的な経済成長を達成するためには、厳格な財政支出管理や透明性の向上、及び税収管理改善といった政策を継続するとともに、法制度等の投資環境の整備や金融制度の改革が重要です。このような取り組みは域外からの資本流入や直接投資を促進させることから、これらに対する各国政府の強いリーダーシップの発揮が肝要です。 |
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| 3. 米州開発銀行グループの役割と課題 |
| 皆様、 次に、米州開発銀行(IDB)グループの役割と課題について述べたいと思います。 IDBは、イグレシアス総裁の強力なリーダーシップの下、第7次及び第8次増資の実施、民間部門局の創設等の組織改革、多数国間投資基金(MIF)の設立、世界銀行を始めとした他の開発機関との協調・連携強化、中米における「プラン・プエブラ・パナマ」及び「南米インフラ統合イニシアティブ(IIRSA)」といった地域統合イニシアティブへの支援等を通じて、域内の開発ニーズに常に応えてきました。しかしながら、今後は以下の諸点に留意しつつ、中南米・カリブ海諸国における諸課題に対して、より効率的・効果的に取り組むことが重要と考えております。 第一に、適切な融資手段の組み合わせについてであります。米州開発銀行の進むべきロードマップともいうべき「新規融資枠組み」が最近合意されたことを歓迎致します。我が国としては、米州開発銀行の融資の基本は、プロジェクトに対する融資であると考えます。この度新規融資枠組みにかかる議論において融資の手続及び対象がより弾力化されたことを喜ばしく思います。他方、政策改革努力が持続的な経済成長にとって重要であるとの認識の下、借入国において政策調整融資(PBL)に対するニーズが高まっています。しかしながら、我が国は、政策調整融資への供与を増加する前に、それが真に開発効果を持つためのガイドラインの策定や適格性の整理、及びマクロ経済の安定を確認するため、国際通貨基金や世界銀行との協調が不可欠である旨繰り返し主張してまいりました。理事会の議論において、こうした我が国の主張が借入国を含めて加盟国間で共有されたことを歓迎致します。 第二に、「民間部門開発への取組」です。中南米・カリブ海諸国は、前述のとおり他の地域に比べれば所得水準の高い中所得国が多く、IDBグループがその業務の軸足を民間部門へ移していくことは、長期的にみて正しい方向性であると考えます。しかし域内の法制度や金融制度は十分とは言えません。ただ単に、民間資金の流入不足によるギャップを埋めるのではなく、域内国に関する深い知識及び借入国政府との良好な関係を梃子としつつ、民間資金の流入を促進する投資環境整備に更に注力することが重要であると考えます。 これに関連して、IDBグループ内における民間部門の再編問題に対し、新たな提案が出されたことを歓迎いたします。我が国は、以前より民間部門開発への取組は、民間部門局や米州投資公社だけが取り組むべきものではなく、公的部門局も含めIDBグループ全体が、競争力強化及びビジネス環境の改善に焦点を当てながら、包括的な戦略に基づいて各部門相互の連携を強化していくことの重要性を強調してまいりました。本提案は我が国のこうした考え方と軌を一にするものであると考えます。今後、本提案の具体化が進展することを期待しております。 第三に「多数国間投資基金(MIF)増資」について述べたいと思います。MIFは、1993年の設立以来、中南米・カリブ海諸国の零細・小規模企業育成や投資・事業環境の整備において着実な成果を上げ、受益国から高い評価を得ております。例えば、我が国への出稼ぎの人が帰国した後、母国内で起業する際の支援プロジェクトなどは、MIFの革新的な試みの良い例として挙げられます。この度MIF2が、さらに多くの参加国を得てここ沖縄で署名するに至ったことは、我が国としても大きな喜びであります。我が国は今増資に際しても、7,000万ドルの拠出を行うこととしております。 第四に「開発効果の重視」であります。IDBグループが実施するプロジェクトの設計・実施・評価の各段階において、同銀行の活動がいかなる開発効果をもたらすのかという「結果連鎖」の明確化、そのための計測可能なモニタリング指標の考案等の、結果重視志向の徹底化が重要です。またそのためには、他の国際金融機関や他のドナーとの間で受益国の開発計画を共有する努力が不可欠です。 |
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| 4. 日本とIDBとの関係・日本の貢献 |
| 皆様、 我が国は、これまでIDBグループに対して、域外国第1位の出資国として、先月に韓国が加盟となるまでは、アジアからの唯一の加盟国として、IDBグループの政策や活動に深く関与してきました。 さらに我が国は、前述のMIFへの貢献に加え、信託基金を通じた多様な支援を行ってきています。プロジェクトの準備や実施調査等の技術協力を行う銀行内最大の信託基金として、これまで約260億円の貢献を行ってきた日本特別基金(JSF)、域内における草の根の貧困削減努力を支援することを目的とした日本貧困削減基金、アジア及び中南米・カリブ海諸国における開発問題に関する知識・経験の共有を目的としたジャパン・プログラム等を設立しています。 IDBは、災害管理改善のための様々なイニシアティブを実施に移すと聞いております。我が国としても、最近のインド洋の津波に伴う大規模な災害を踏まえ、我が国が蓄積した防災にかかる知識と経験を活かしつつその活動を支援するため、日本特別基金(JSF)から資金援助を行うことを決定しました。 |
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| 5. 結び |
| 最後に、今年次総会が、中南米・カリブ海諸国とアジア諸国との経済連携をさらに強める機会となることを祈念いたします。 グローバリゼーションの中、両地域はそれぞれの競争力を強化する必要がありますが、同時に、私たちは互いの繁栄に資するパートナーとなることができることも心にとめておく必要があります。わが国は、中南米・カリブ海諸国との製品・原材料輸入の長期契約や安定的な資金フローを通じて、長きにわたり、これらの諸国と安定的な経済関係を築いてきました。アジア諸国が中南米・カリブ海諸国の重要な取引相手として急速に浮上してきている今、我が国の信頼のおける安定的な経済パートナーとしての役割、そしてまたアジアと中南米・カリブ海諸国との間の仲介役としての役割はますます重要になると強く信じる次第です。 どうもありがとうございました。 |
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