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第21回EBRD年次総会 日本国総務演説(平成24年5月19日 於:英国・ロンドン)

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第21回欧州復興開発銀行年次総会における三谷財務大臣政務官総務演説
(2012年5月19日 於:英国・ロンドン)

 

1. はじめに

議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、

欧州復興開発銀行(EBRD)の第21回年次総会の開催にあたり、日本政府を代表し本総会の主催国である英国政府およびロンドン市の皆様の温かい歓迎に対して、心から感謝いたします。

ミロー総裁は、過去4年間の在任期間において、EBRDのマンデートである体制移行を着実に進められました。特に、増資を成功させ、危機に的確に対応するとともに、南・東地中海への地理的業務拡大への道筋をつけられました。これらの功績に心から謝意を表したいと思います。また、昨日の総裁選挙において、チャクラバルティ新総裁が選出されたことを歓迎します。チャクラバルティ新総裁は、これまでの知見やバランス感覚を生かし、EBRDが直面する重要な課題に率先して当たられることを期待します。

昨年3月に東日本大震災が発生してから約1年間が経過しました。この機会に改めて皆様から頂いた温かいご支援に感謝の意を表したいと思います。

本日は、まず、我が国の世界経済・欧州安定化への貢献について述べるとともに、EBRDの課題と期待について4点申し上げたいと思います。

 

2.世界経済・欧州経済の安定化

世界経済には明るい兆しも見られますが、欧州情勢等を背景とした不安定な状況は、特にユーロ圏との繋がりが深い中東欧圏には引き続き色濃く存在します。その中で、先月、我が国はIMFに対する600億ドルの貢献を他国に先駆けて表明しましたが、その後短期間で多くの国々が我が国の後に続いて貢献を表明した結果、総額4300億ドルを上回るIMFの資金基盤強化に合意できました。これは世界経済・欧州経済の安定にとって大きな成果であり、我が国としても大きな役割を果たせたと考えています。

IMFの資金はグローバルなセーフティネットですが、特に債務問題を抱える欧州地域及び、欧州との経済的なつながりが強い中東欧地域を含むEBRD支援地域の安定にも資するものです。我が国は、このグローバルな仕組みと連携しつつ、EBRDがこの地域の経済・金融が再び不安定化しないよう、欧州の関係機関や加盟各国との政策対話を強化しながら支援を行うことを望みます。特に、中小企業の活動育成を通じ市場経済の円滑な機能を促進する目的を持っているEBRDが、多様性に富み、競争力が強い中小企業セクターの育成や、中小企業を取り巻く金融環境を安定させるための国内資本市場の育成などに取り組み、支援国経済の危機への耐性を高めていくことを切に期待します。

 

3. EBRDの課題と期待(地理的業務範囲の拡大、卒業政策、環境、accountability)

次に、EBRDの課題と期待について、4点申し上げます。

【地理的業務範囲の拡大】

まずは、EBRDの地理的業務範囲の拡大について申し上げます。昨年の初めから中東・北アフリカ地域(MENA)での政治・経済の不安定化の動きは、民主化を渇望する人々の願いの現れである一方、世界経済の不安定化要因となりました。これらの動きに対して、民主化・市場経済化への移行を目的とする唯一の国際開発金融機関であるEBRDが、いち早く検討を開始し、早期に支援可能とする方法である3段階の支援アプローチを含めて、南・東地中海地域(SEMED)まで地理的業務範囲の拡大を決定したことを歓迎します。

わが国も、G8の参加国として、また、世界経済に高度に組み込まれた国として、MENA地域の安定化には重大な関心を持って国際的な支援の議論に参加してきました。特に、EBRDの地理的業務範囲の拡大については、昨年の総会にて、追加増資を前提としない、初期段階移行国(ETC)への支援をクラウドアウトしない、EU7の卒業を進めることを前提として、支持しました。その国内手続きに必要な改正案を先月、国会に提出し、できるだけ早期にご了解いただけるよう、現在、努力を尽くしているところです。改正協定が発効し、EBRDがSEMEDで具体的な支援を行うに当たっては、他の国際金融機関と緊密に連携し、EBRDの基本精神である民主化目的との関係に留意し、EBRDの特徴、強みを生かした支援を行うことを期待します。

【卒業政策】

第二に、EBRDの支援からの卒業について申し上げます。卒業を進めていくことは、新たな支援対象国への拡大のために必要な資金リソースを捻出するためだけではなく、EBRDの業務成果を示す意味でも必要と考えます。

各支援対象国の移行状況を踏まえつつ、より効果的な支援を迅速に行い、市場経済への移行を速やかに進めることで支援対象国の卒業を実現していくことが重要です。他方で、2015年までの期間に卒業が見込まれる国々については、数々の危機を経験して、卒業後、EBRDとの関わりがなくなることに対して不安を覚えることも理解でき、卒業後を見据えた現実的な卒業のための戦略の検討も重要です。その際、卒業国へのEBRDの関与を必要最小限なものに限定するとともに、EBRDが、支援対象国からの卒業は当該国の市場経済への移行が概ね完了したことを表すEBRD支援の成果であり、卒業を目指すべき正しい方向として改めて認識し、卒業へのモチベーションを高めていくことを期待します。このことにより、卒業国が良きモデルとなり、自らの知識・経験を改革に取り組む後続の支援対象国に伝えていくことも期待できます。

【環境問題への取組み】

第三に、環境問題について申し上げます。EBRDの支援対象国では、エネルギー効率が低い旧式の設備を用いている国が多く、気候変動の要因を生み出しております。言うまでもなく、持続可能な開発のためには、これらの地域が自ら気候変動対策に取り組む必要があり、その莫大なニーズにこたえるためには公的リソースのみならず、効果的に民間の資金や知見を動員する必要があります。

民間企業の活動を支援するEBRDは、2006年から持続可能なエネルギーイニシアティブ(SEI)を立ち上げるなどエネルギーの効率化や再生可能エネルギーなどの面で積極的に取り組んでおり、2011年末時点で、累積約88億ユーロ、全体の投融資に占めるシェアが約3割のSEI向け支援を実施してきた結果、推定年間4600万トンものCO2の削減が図られている実績を評価します。SEIは、本年より、第3フェーズに移行しますが、今後も、同イニシアティブが着実に推進され、グローバルな課題である省エネやCO2削減、支援対象国の企業の競争力や生産性向上などに貢献し、移行経済の促進を支えていくことを期待しております。我が国は、引き続き、このようなEBRDの取り組みを積極的に支援していく考えです。

また、EBRDは、我が国が資金貢献を行う地球環境ファシリティ(GEF)の実施機関でもあります。現在、GEFのCEO選挙に我が国から石井副財務官が立候補しております。石井氏は、開発分野での知見・経験を持ち、国際機関のマネジメント経験もある、次期CEOには最適な人物であり、関係国からの支援をお願いしたいと思います。

【アカウンタビリティ(説明責任)の向上】

最後にアカウンタビリティについて申し上げます。先進国の財政状況の悪化を背景に、今日より強くその重要性が認識されたことはありません。我が国政府は、引き続きEBRDの使命と活動を支持しますが、EBRDがより成果を重視した(result-oriented)効果的な支援とわかりやすい説明を行うことを通じて、各加盟国政府ひいては各国の納税者に対する説明責任(accountability)を果たすことを求めます。

まず、先程の卒業の議論とも関連しますが、限られたEBRDの資金リソースを経済移行の余地(トランジション・ギャップ)の大きい国や地域に振り向けることが重要です。我が国は、EBRDが、ETCや中央アジア諸国などの経済移行の遅れている国への支援に重点を移動させ、各国との政策対話を通じてより効果的な支援を行うことを期待します。また、業務の効率性を高めるためには、世界中の知見や技術をEBRDに集めることが重要です。そのためには、スタッフの多様性を改善することが重要です。現在、スタッフの構成については大きな改善の余地があり、我が国は人材面でも貢献を行う準備があります。また、EBRDが、環境や省エネ分野において進んだ技術を保有する我が国の民間セクターと協働することにより、今やEBRDの中心的な業務となっている環境分野での支援効果をより高めて行くことを期待します。

本年、我が国は、秋に東京で開催予定のIMF/世銀総会に向けて、EBRDを含むMDBsの取組みなどにつき、広く発信していく予定です。EBRDにおかれても、スタッフの多様性の改善、我が国の民間セクターとの協働、広報活動の拡充などに積極的に取り組んでいくことを期待します。関連して、本年2月に大幅に改訂された倫理規定改訂は、EBRDの透明性及び説明責任を一層拡充するものであり、EBRD事務局の真摯な取り組みについて敬意を表したいと思います。

 

4. 結語

議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、

未だ不安定な欧州経済の状況、新しい支援対象地域など、EBRDが支援をするにあたり、取り組むべき課題は山積しております。我が国は震災からの復旧・復興への対応や厳しい経済・財政状況にありますが、EBRDが政治・経済的に移行途上にある国々を支援するという使命を果たすことを支えるため、今後とも積極的に協力をしていきたいと考えます。

ご静聴ありがとうございました。

(以上)