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第20回EBRD年次総会 日本国総務演説(平成23年5月21日 於:カザフスタン・アスタナ)

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  1. はじめに
     議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、

     本年、アジアと欧州を地理的に繋ぐカザフスタン共和国において、欧州復興開発銀行(EBRD)の第20回の節目に当たる年次総会が開催されるにあたり、日本政府を代表して、本総会の主催国であるカザフスタン政府およびアスタナ市の皆様の温かい歓迎に、心から感謝いたします。

  2. 東日本大震災

     今般の東日本大震災により、死者・行方不明者数が約2万4千人、未だ避難生活を余儀なくされている人々が約11万6千人に上っています。140以上の国・地域、EBRDを含む40近くの国際機関、そして世界中の方々から、我が国に寄せられたお見舞いと励ましのメッセージに心より感謝の意を表明致します。また、我が国支援のための募金活動に多くのEBRD職員から協力をいただいたことにも、大変勇気付けられています。 チェルノブイリ原発事故から四半世紀が経過した本年、我が国では、極めて残念なことに、大震災の津波の影響により福島の原子力発電所で深刻な事故が発生しました。

     チェルノブイリ原発事故では原子炉そのものが爆発したのに対し、福島の原発では原子炉は自動停止し、大規模な火災は発生しておらず、放射性物質の放出も限定的といった違いはありますが、我々は事態を重く受け止めています。原子力発電所の事故が及ぼし得る甚大なリスクは、我が国のみならず、世界のエネルギー政策及び気候変動対策にも影響を与え得るものと考えます。

     我が国では、政府の要請に基づき、30年以内にマグニチュード8程度の地震が発生する可能性が87%と、他の原子力発電所と比較して際だって高い浜岡原発の運転の停止を中部電力が決定しました。我が国は今回の事故を徹底的に検証し、そこから得られる知見や経験を、今後、透明性をもって国際社会と共有していきます。 我が国は、戦後最大の困難に直面しておりますが、復興財源を手当てするための平成23年度補正予算は既に国会で成立しており、これからも全国民の連帯の下、一日も早い復旧・復興に全力で取り組んでまいります。

  3. EBRDの課題
     (EBRDの業務の効果的・効率的な遂行)

     今年4月で設立20周年を迎えたEBRDは、旧ソ連下の中央アジアを含む中東欧地域の市場経済への移行を支援するとの使命に基づき、支援実績を上げてきており、世界経済危機に迅速に対応して支援を伸ばしたこと等を受け、昨年には銀行の資本基盤を1.5倍に拡大する一般増資にも合意致しました。我が国では、東日本大震災への対応の緊急事態の中でありましたが、この一般増資への応募を行うための予算措置を含む平成23年度予算が、3月末に国会において成立しております。

     このように、我が国は引き続きEBRDの活動を支持していきます。他方、我が国政府は、今年初め、EBRDの業務に関連して理事が関与する不正が行われているとの嫌疑がかけられたことは、EBRDの業務の廉潔性及び信頼保持に影響を与える重大な問題と考えています。これまで、EBRDマネジメントは、内部調査を進めつつ、不正の再発防止のための措置の検討を進めてきており、その労を多とします。更に、本件にかかる早急な事実解明が行われ報告されること、及び再発防止策が速やかに策定され、理事会、更に総務会に報告されることを要請いたします。

    (EBRDの支援対象の拡大)

     本年に入り、中東・北アフリカ(MENA)地域での政情の不安化を受けて、特に政変を経て新政権が生まれた国々に対し国際金融機関を含めた国際社会が積極的に支援を行うべきとの議論が活発化しております。我が国は、国際社会の多くの意見と同様に、これらの地域への支援を強化する上で国際金融機関が積極的に役割を果たすべきと考えます。

     他方で、EBRDがこれらの地域で実際に業務を開始するためには、相当な時間を要することに留意が必要です。加盟国は、中東欧及び旧ソ連下の中央アジア諸国の民主主義や市場経済の諸原則に根ざした経済への移行を支援するために、EBRDを設立したものであり、この設立趣旨はEBRDのあり方(アイデンティティ)を規定するものとして、EBRD協定第1条に明記されております。EBRDがMENA地域に業務を拡大することは、このアイデンティティの変更であり、協定第1条の改正に対する全加盟国の同意と受諾が必要です。業務拡大の前提として、同地域における複数政党制民主主義が速やかに定着していくことも確認していく必要があります。

     EBRDが業務地域を拡大する場合、その支援が本格的なものとなるのは2016年からの第5次資本レビュー(CRR5)期間以降となります。それまでの間に、MENA地域への支援の前提として、我が国は次の三点を要請します。一点目は、昨年の一般増資の直後であり、更なる増資を必要としないこと。二点目は、これらの地域への支援が、中央アジア諸国をはじめとする初期段階移行国(ETC)への支援をクラウド・アウトしないこと。三点目は、EBRDが同地域に一定の関与をするために必要なリソースを捻出するためにも、EU7の早期卒業を確実に進めていくことです。

  4. 結語

     議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、

     我が国はこれまでのEBRDの支援とその成果を高く評価しております。その上で、EBRDが業務地域を拡大し、その地域において意味のある役割を果たすために、我が国が期待する前提条件等について申し上げました。これらの点を十分考慮し、EBRDが新たな状況に応じた重要な役割を適切に果たすことを期待します。

     ご静聴ありがとうございました。

    (以上)