| 第9回EBRD総会 日本国総務演説 2000年5月22日(月) -
ご挨拶 議長、総裁、各国総務ならびにご列席の皆様、 欧州復興開発銀行(EBRD)の第9回年次総会の開催にあたり、日本政府を代表して所信を申し述べる機会を与えられたことを光栄に思います。まず、この総会の主催国であるラトビア政府およびリガの皆様の暖かい歓迎に対して、心から感謝申し上げます。 また、ロシア危機の直後の困難な時期にEBRDの運営を担ってこられたケーラー総裁に対し敬意を表するとともに、IMF専務理事としての活躍を期待します。ニイニスト(Niinistö)総務会議長が、この一年間EBRDの運営に寄与され、特に次期総裁の選出に貢献されたことに謝意を表したいと思います。 -
EBRDの改革 議長、 EBRDは来年創立10周年を迎えますが、創立以来の歴史は決して平坦なものではありませんでした。 1998年にEBRDは国際開発金融機関としては極めて異例な多額の赤字という事態に遭遇しました。1999年には、財務部門の貢献により黒字を維持したものの、銀行部門は依然として赤字が続いています。このような財務結果(financial result)には、市場経済への移行と民主化というEBRDの目標が、難しい課題であり、一朝一夕に成就するものではないこと、そしてこの困難な任務を遂行するため、EBRDが大きなリスクを抱えていること、が反映されています。 議長、 支援対象国の多様性も、EBRDの任務を遂行する上で難しい問題です。EBRDの支援により、ポーランドやハンガリーのように、急速に自由化・民営化を実行しつつ、マクロ経済の安定性を維持し続けることによって体制移行に著しい成果を挙げている国々がある一方で、中央アジアや南東欧では、自由化・民営化に進捗がみられず、体制移行は順調とは言えません。前者では、自由化・民営化の中で、企業や国民が改革を進める原動力となり、市場経済への移行と民主化がより急速に進展しておりますが、後者では、改革を求める原動力を欠き、市場経済と民主化を支えるための制度基盤が欠如したままになっています。昨年に公表されたTransition Reportは、このような二極分化は、多くを体制移行の初期条件(すなわち、体制移行が始まる以前に既に産業化を経験したことがあるか等)に依存すると分析しています。またEUへの統合という目標を有する国では、改革のために痛みを伴う政策であっても、政治的な対立を生みにくく、改革が進展するという分析もなされています。 それでは、このような条件を有さない中央アジアや南東欧の諸国を支援対象国に含むEBRDの運営は、どのように行われるべきなのでしょうか。 議長、 我が国としては以下の三点を指摘したいと思います。 第一に、EBRDはより多くのリソースを体制移行の遅れている国に集中すべきです。これまでEBRDは、支援対象国全体の3分の2を占めるearly/intermediate countriesに対し、累積でおよそ51億ユーロもの投融資を行ってきていますが、これはEBRDの投融資総額の約37%に過ぎません。今後はEBRDの業務の重点を体制移行が進展していない国々に大きくシフトしていく方針を確立する必要があります。このためには、体制移行が順調に進展し民間資金に対してアクセスのある国々に対しては、96年に定められた卒業政策を徹底し、そのリソースを体制移行の遅れている国々に集中的に投入すべきです。 第二に、民間資金との競合を避け、EBRDの有するリソースを民間資金では対応することが困難なfrontier分野に集中し、プロジェクトの体制移行効果を高めるべきだと考えます。このためには、プロジェクト選定の際のselectivityを強化するだけでなく、人材戦略においても開発・体制移行の専門家を重視する方向で改革を行う必要があります。 第三に、二国間及び多国間ドナーとのパートナーシップを強化し、支援対象国の市場経済化と民主化を促進するためのリソースの動員を強化すべきであると考えます。とりわけ、世銀の民間投融資部門となっているIFCや他の地域開発金融機関の民間投融資部門との協調については、全体のリソースの効率的活用を図る観点から戦略を統合的に構築することが必要です。こうしたパートナーシップの強化は、プロジェクトのパフォーマンスの向上につながることも考えられます。 10年前には、中欧諸国が目覚しい体制移行を遂げ、わずか10年の間にEUへの加盟が議論されるようになるという確信を持っていた人が何人いたことでしょう。しかし、改革を求める人々の意思が、EBRDを創設し、今私達が目の当たりにしている変化を可能にしたのです。これから10年後に、EBRDの全ての支援対象国において、市場経済への移行と民主化が深化し広がっていくためには、今強い意志をもって改革に向かっていくことが必要です。 -
結び 議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、 最後に本日行われる総裁選挙及びモンゴルの新規加盟について一言触れたいと思います。 まず、本日行われる総裁選挙では、EC及びフランス共和国からルミエール経済財政産業省国庫局長が推薦されることになっております。ルミエール氏は国際金融分野における経験が豊富であり、我が国は新総裁への就任を支持します。我が国としては、EBRDが、ルミエール氏の指導の下で、次の10年に向けた改革に取り組んでいくことを期待しております。 また、先般総務投票によりモンゴルが新たにEBRDに加盟しました。我が国としては、モンゴルの新規加盟を心より歓迎するとともに、EBRDがモンゴルの体制移行に向けた支援に乗り出すことをも支持する用意があることをここに表明します。 ご静聴ありがとうございました。 |