第8回EBRD年次総会 日本国総務演説(平成11年4月20日 於:英国・ロンドン)
第8回欧州復興開発銀行(EBRD)年次総会
- 日本国総務演説
- (現地時間4月20日午前10:00)
| 会期:4月19日〜20日 場所:ロンドン 演説:中島政務次官 |
| お問い合わせ先 大蔵省・国際局 開発機関課5・6係 電話3581-4111(代) 内線5416,5417 |
1.ご挨拶
議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、
欧州復興開発銀行(EBRD)の第8回年次総会の開催に当たり、日本政府を代表して所信を申し述べる機会を与えられたことを光栄に思います。
まず、昨年9月に就任したケーラー新総裁を心から歓迎したいと思います。着任以来、EBRDを取り巻く厳しい状況の下で、困難な課題に取り組んでこられたことを評価するとともに、新総裁の卓越した指導力によりEBRDが一層発展されることを期待しております。また、パパントニウ総務会議長が、この1年間EBRDの運営に寄与されたことに謝意を表したいと思います。
2.EBRDを取り巻く環境
議長、
EBRDの歴史を振り返る際に、1998年は我々にとって忘れられない年として記憶されることでしょう。1997年にロシアは初めてのプラス成長を記録し、昨年のキエフ総会では多くの参加者から市場経済移行の進展を評価する声が聞かれました。しかし、1998年8月に発生したロシア経済危機は、ロシア経済を大幅なマイナス成長に転落させ、ロシアとその周辺国の経済パフォーマンス及び市場経済移行改革に深刻な影響をもたらしています。
3.ロシア危機の教訓とEBRDの中長期的課題
議長、
このような中東欧・バルト・独立国家共同体諸国の状況を受けて、1998年度のEBRDの決算は、大幅な損失引当金の積み増しを余儀なくされ、多額の赤字を計上しました。これは、国際開発金融機関としてはその使命にかかわる極めて異例の事態であり、我々はこれを深刻に受け止め、原因を分析し、反省を加え、教訓を引き出し、今後の業務運営を改善していかねばなりません。この観点からまず、従来にも増して厳重なリスク管理を実施していく必要があります。
また、出融資業務のあり方について、基本に立ち帰って見直す必要があると考えます。この基本とは、EBRDの場合、全ての支援対象国において体制移行効果の高いプロジェクトを実施するということでありましょう。私は、この観点から、より具体的に3点指摘をしたいと思います。
第1に、実質的な体制移行効果の確保を重視した案件選定を行うことです。
自由化や民営化という名の下で、当面の採算性を重視したプロジェクトを手がけるのではなく、それぞれの国の実体経済のニーズに則し、かつ体制移行に資するような案件を選定していく必要があります。また、これまで以上に、政策対話等を通じて、法制・会計制度等の体制整備や企業統治の強化といった健全な投資環境の構築を行っていくことも重要となるでしょう。
第2に、EBRDの活動が、体制移行の進んだプロジェクトの組成が容易な地域に偏ってはならないと考えます。
体制移行が進んだ国ほどEBRDにとってプロジェクトの組成は容易な面がありましょう。しかし、組成が困難であっても、特に、体制移行支援をより強く必要としている中央アジア・コーカサス等の国々でのプロジェクトにも積極的に取り組むことが全体として体制移行効果を高めることにつながると思います。
第3に、プロジェクトの体制移行効果の評価を充実し、これをEBRDの業務にフィードバックしていくことが必要です。
個々のプロジェクトが当初期待された体制移行効果を挙げるか否かは、出融資後も適切にフォローアップされるかどうかに負うところが大きいと考えます。単に出融資契約を締結したことで満足することなく、プロジェクトへのより一層継続的な関与が求められます。また、こうした体制移行効果を十分追求していくためには、評価体制の強化やEBRDの組織文化を変革していくことも重要です。後者については、例えば職員の評価や待遇について、処理した案件の件数や短期的な収益への貢献度が重視されるようなシステムであってはならないと思います。
4.結び
議長、総裁、各国総務並びにご列席の皆様、
何事も成功しているときは、本当の問題点が明らかになりにくいものです。逆説的ではありますが、失敗を経験したときこそ、改革のチャンスであると思います。
私が本日指摘した点は、今回改定された中期戦略の考え方と基本的に整合的なものと信じております。ケーラー総裁によって、中期戦略が必要に応じて見直され、かつ、具体的な業務運営に反映され、EBRDがロシア危機から得られた教訓を生かしていくことを強く希望するものであります。我が国は、EBRDに設けてある技術協力のための日本・欧州協力基金の活用も含め、こうした教訓を生かすEBRDの取り組みに協力していきたいと考えております。
ご静聴ありがとうございました。
